第6話

朝を迎え、王都へ戻る準備を終えた補給部隊。そこへ見張り台からの報告が入る。

「魔物の動きあり!目測、50体程度!鳥型、飛翔型の軍勢です!」

「鳥型かぁ…厄介な奴らが来たね、遠隔攻撃部隊準備!完了次第撃ち落とせ!」

「了解!」

迅速に対応を進める前線基地。補給部隊は任務完了とし戻ることになったが、

「鳥型…鳥型ねぇ…」

1人呟くアレックス。

「アレックス!馬車の準備できたわよ!」

「コユキちゃん、あんなヤツ置いてって早く帰ろーよ」

「駄目よレナ。1人でも欠けてたらそれこそ連帯責任で即罰則よ」

「ちぇー」

「なぁ、俺たちだけでも残っていかないか?」

考え込んでいたアレックスが提案する。

「何故?補給任務は王都に戻るまでが任務よ?上官命令に逆らうつもり?」

「いや、なんとなくなんだが、嫌なにおいがする」

「お風呂に入ってないからじゃない?」

「そっちじゃない、鳥型の魔物の方だ。昨日の夜に基地の隊長と話しててな」

アレックスは話す。

「以前までは鳥型の魔物の襲撃は全くなかったそうだ。それがここ最近魔物の群れの中に混じるようになった。その上で今日は完全に鳥型だけ、嫌な予感しないか?」

「確かにそう言われるとそうだけど、新兵の私たちに何ができるの?できても盾代わりよ」

「後方支援って形ならどうだ?ジェームズに新兵の体験をさせたいって言えば許可もらえると思うぜ?」

「確かに矢筒の交換や魔法行使の際のアシストなら…」

「だろ?じゃ、善は急げだ」

ジェームズの元へ向かい、先に他の補給部隊を帰してもらい、先の案を話す。

「…お前ほどの奴が言うんだ。その提案、呑もうじゃないか。だが何もなかった場合、俺が庇うのにも限度があるぞ?」

「わかってる、俺だって何もなければいいと思ってる。だけど俺の嫌な予感って当たるんだよな…」

「例えばどう言う時よ」

「子供の頃初めて魔物肉食べされられる直前」

「確定みたいなもんじゃない!」

「あー…魔物肉ねぇ…そいつぁ…」

突如、爆音が轟き、基地が大きく揺れた。

「お前ら安全な場所で伏せろ!瓦礫に当たったら洒落にならんぞ!」

ジェームズが指示の通り、新兵たちは避難を行う。揺れが収まり、瓦礫が落ちてこないのを確認する。

「とりあえずお前たち、俺について来い。前線基地部隊がどうなってるか確認して、最悪の場合、王都まで徒歩だな!」

刹那、アレックスがジェームズに斬りかかる。

「うおぉっ!!」

「アレックス!?」

アレックスの剣は…

蝙蝠型の魔物を切り裂いていた。

「…アレックス、お前このよく見えない中でコイツを…?」

「瓦礫の影に潜んでたみたいだな、しばらく観察して、指揮官クラスを狙ったんだろうな」

「魔物にそこまでの知性が!?今までの研究では何故か弱ったものよりも体力のあるものを狙うって言われていたけど…」

「それよりも前線部隊が心配だ、基地の外側にいるここでさえこの衝撃だ、それに、まだいるみたいだぜ、コイツら」

瓦礫の間から血に濡れた蝙蝠の魔物が6体ほど現れた。

「敵は小さい!コユキ!スコット!魔法で狙え!」

「ええ!」

「了解!」

コユキは氷の魔法、スコットは炎の魔法を唱える。

「詠唱完了まで術師を守れ!レナ!アンドレ!」

「言われなくたって!コユキを守るのはアタシ!」

「やってやるさ、訓練通り!」

レナとアンドレはそれぞれ守勢に入る。

指示を終えたアレックスは、

「ロビン、俺が2、お前が1だ。行けるだろ?」

「俺が2でも…と言いたいところだけど、魔物狩りの達人様にお願いしますわ」

アレックスは剣を構えて、ロビンは集中して弓を引く。

「こいつぁ驚いた…1週間でこんな連携取れる新兵見たことねぇぞ…っとと、感心してる場合じゃねぇわ!」

ジェームズは魔法銃を構える。

魔法銃とは、魔法を鉱石に充填し、発火装置を取り付けた銃のことである。速攻性、連発性能は高いが、充填された魔法が切れた場合ただの鈍器になる。また魔法の質にも影響されやすい。

「前進!」

アレックスの掛け声と共に戦いが始まる。

蝙蝠型の魔物は散開し、コユキとスコットを狙う。

「させないっての!」

レナが剣で魔物の牙と鍔迫り合いをする。

アンドレは先の先を取るように、魔物の動きに合わせ剣先を動かす。

アレックスが駆け出し、魔物の直下に行く。強く地面を蹴飛ばし、剣先で首を刎ねる。そして、横にあった瓦礫をまた蹴飛ばして、逃げようとした魔物をなで斬りにする。アレックスの勢いに驚いたのか魔物は退却しようとするも、

「詠唱完了!発射!」

「逃げるだけの獲物なら撃つのは楽勝だね!」

「俺も負けてられねえわ!」

魔法、弓矢、魔法銃の一斉射により全て撃ち落とされた。彼らの勝利だ。

「魔物は50体って言ってたよな…まだまだ気は抜けねえ、行くぞ」

前線部隊の安否を確認するため、彼らは走る。脅威はまだ去っていない。

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