第3話
宿屋から出て数分歩いたところで銅像のある広場に着いた。歴代の王を模しているらしいが誰がどの人物なのかさっぱりだ。
「よお、アレックス。時間通りだな。感心感心。」
「なんだか落ち着かなくてな」
「子供みたいだなオイ、まあいいさ、ほれ、軍の詰所があるところまで案内するぞ」
ジェームズに続いて進んでいくと、物々しい雰囲気の建造物があった。
「ここが軍の詰所だ。とりあえずの手続きはここでできる。後は受付の姉ちゃんによく聞きな」
「助かった、恩にきる」
「また飯でも食おうぜ、じゃあな!」
手を振り別れる。受付に手紙を見せて手続きを行う。文字を書くのは久方ぶりでなかなか時間がかかってしまった。
「これで必要な書類の記入は終わりですね、奥の方に軍用の宿舎がありますので、荷物などの整理をしてください。また支給品は後ほど部屋へ運びますのでしっかりと確認してください」
「わかった、部屋の番号はこれでいいんだな」
「はい、夕食にはお呼びしますので、それまでは自由時間となります。」
「了解、時間までには戻るぜ」
宿舎の方へ歩いて行き、荷物を下ろす。同室者はまだいないようで、きっちりと片付けられていた。荷解きをして、剣の手入れを行う。ふと外に目をやると、訓練場のようなものが見えた。
「少し体でも動かすか」
剣を腰に帯び、そちらの方へ向かう。同じ時期に徴兵されたと思しき人を何人か見かける。やはり戦い慣れていないのだろう、動きにぎこちなさを感じる。
「先輩方に胸を借りるかねっと…おっ、そこのあんた!今いいかい?」
「なんだ?新入りか?訓練場に来るとはなかなか勤勉だな」
「夕食までの腹ごなしに少し運動がしたくてね、動きの良さそうな先輩にご教授いただきたい」
「ほほーう、なかなかの跳ねっ返りだな。戦場ではそんな自信満々の奴が漏らしてヒイヒイ言ってるのをよく見るぜ!」
「戦場に行って戻って来られるというなら運も持ってそうだな」
「嫌味が通じないようだな!お望み通り叩きのめしてやる!」
先輩兵が剣を構える。こちらも合わせて抜刀する。
「(こ…こいつ、なかなかに隙がない!だが…)先手は貰うぞ後輩クン!」
上段の構えから袈裟斬りに斬りかかる。その瞬間、剣が弾き飛ばされた。
「何ぃ!?」
「おいおい、随分軽い一撃だな、本当に魔物と殺し合いしてるのか?」
左手に持った剣はそのままに、右手を握り締め拳を腹へ突き出す。
「おぶぅひぃふ!」
先輩兵は宙を舞い、ゴロゴロと転げ回る。モロに内臓に入ったようだ。ゲーゲーと食事の残骸を吐いている。
「見立てが悪かったか?おい!他の先輩方も来てくれよ!全然物足りねえ!」
「ふ、ふざけやがって!」
「よせ、挑発だ!さっきの動き見ただろ!ただもんじゃねぇ!」
「おいおいおい、そっちから来ないならこっちからいくぜ?」
剣を構えて脚に力を込める。
「クソーッ!新兵に負けたとなったら隊長にどやされちまう!」
「3人でかかれ!田舎に送り返してやる!」
見事なコンビネーションだったが俺の方が強かった。軽く捻ってやると気絶してしまったようだ。
「こんなもんか…もう少し骨があるかと思ったんだが」
剣をしまい、訓練場を後にする。暇つぶしにはなったか。部屋に戻って剣の手入れをして少し寝ると、夕食の時間になったようだ。食堂に行き飯を大盛りで頼む。何か目線を感じるが、気にせず食べる。5回ほどおかわりをして部屋に戻った。部屋に戻ると支給品が来ていた。
「なかなかいいデザインだな。サイズも…うん、ちょうどいいな」
一通り試着して、寝る準備をする。明日は新兵の配属が決まるらしい。朝は早く起きないとな。夜寝ていると昼間の先輩方が闇討ちをしてきたのでまた捻ってやった。懐かしいな、親父にも夜いきなり叩き起こされて修行をつけられたっけ。先輩方の愛の鞭に感謝しながら眠りにつく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます