第6話 クラブノアの衝撃
ああ、なんて天気の良い朝なんだ。
「さ、ランニングしてシャワー浴びよ」
AirPodsをつけて、近所を15分くらいかけて走る。
走ってる時は、しんどいけど、走り終わって自宅でストレッチしてシャワーを浴びて、朝食にりんごをかじって、アイスティーを飲むそのひとときが至福の極みだ。
そんなことしていると、恋の悩みなんてどこかにいってしまう。
「あと30分したらジョセフさんくるから、忘れ物ない様にね」
「はーい」
「父さんは、今朝もギリギリまで仕事の電話してるね」
「そうね、今日から2日仕事から距離をおくから、最後の調整かしらね」
「クラブノアでも電話してそうだけど笑」
「そうね笑」
時間丁度にジョセフさんが家の前に迎えに来た。
クラブノアは、自宅から車で移動した後、途中で船に乗り換え、その先にある島にあるそうだ。
車から船に乗り換える際に数分道を歩いたが、すごくいい。
このカオスな騒音満ちた通り。賑やかさが人々の活気を感じさせる。
ゴミがいっぱい落ちてて汚いけども笑
船で島へと向かう最中、まるでアマゾンの小川を進んでるみたいで少し怖かった。今にもでっかいワニが飛び出してきそうだ。
「着きましたよ〜」
船の案内係がそう言うと、船に橋がかかり、乗客が降りていく。
「さて、行きましょうかね」
父さんがそう言うと母さん、僕の順番に船を降りた。
降りて早々、出迎えたお姉さんたちが、白い花の首飾りをかけてくれた。
みんな、綺麗ですな笑
「島の中心であるここは、ディナーと朝食にご利用いただけます。ここをまっすぐ行くと宿泊場所です」
しばらく道なりに行くとそこには、海の上の宿泊場所があった。
「うっそ、ここ!」
「あらま、海の上ね」
「いいじゃないか」
家族みんな満足げだ。
「それでは、ごゆっくりくとご寛ぎください」
お部屋で一息ついた頃、
「それじゃあ私、アボカドエステ受けてくるわね」
そう言うと部屋を足早に出て行った。
「俺は、しばらく部屋でゴロゴロしてるよ」
父さんは、エスプレッソをチョビチョビ飲みながら、波の音をBGMに本を読み始めた。ああ、この家族、本当に個が確立してやがる笑。いいんだけどね笑。
「僕はちょっくら散歩して回るよ」
「おう、行ってらっしゃい」
しばらく歩いていると、砂浜の真ん中に飼育小屋の様なものがあった。
近づいてみると30匹ほどのウサギが飼育されていた。
あまりの可愛さに思わず顔がゆがむ。
近くに生えてる葉っぱを適当に持ってきて顔に近づけると、どんどん食べる。
面白いのと可愛いのとで、夢中で餌をあげ続けた。
心地よい太陽光の下、ウサギと戯れながら美しい海の色を眺め、
穏やかな微風を浴びて、波の音に耳を傾ける。
あまりの穏やかさにこのまま空気と同化してしまうのではないかと思った程。
「さて、部屋に戻るとするか」
「お、戻ってきたか。ちょうどいい。船の予約をしに受付まで行こう」
「ん、船?」
「夕飯は、沖合の客船の上で食べることにした。母さんには、もうLINEしてある」
「そ、そうなんだ。沖合。。」
「クラブノアの一押しらしいぞ」
「楽しみや笑」
父さんと二人で受付で予約を済ませた後、海際で二人でコーヒータイムをとることにした。
「最近調子はどうだ?」
「勉強はまずまずかな」
「そうか。」
「父さんは仕事大変そうだね」
「まあ仕事なんぞいつもそんなものだ」
「父さんは、若い頃どんな恋愛をしてきたの?」
「恋愛か、あんま覚えとらんな笑」
これは、、話を変えて欲しいのか、、笑
「恋愛で大切なことってあったりする?」
「そうだな、さっさと結婚してしまえ」
「わーーっつ」
「まあ流石に高校生の幸来(さき)にこんな話は、早すぎだな笑」
「でもな、結婚は、20代の内にしてしまった方がいい」
いや自分、30歳で結婚しとるがな笑
「なんでまた?」
「あんまり相手を待たせると、私と結婚する気ないのかしらって思われて、終わってしまうのが落ちだ」
ん、それはあなたの実体験か笑
「そ、そうかもね笑」
「ああ、女は待たせるものじゃあない」
いや、人によっては、まだ結婚したくないって女性もいる気がするけど汗
「これから色々経験してくと思うが、落ち込むな。世界にはたくさんの女性がいる。」
「あら、こんなところにいたの」
「うお、母さん」
「今夜は、船上ディナーみたいね、いいじゃない」
「うわーー、想像以上」
客船は思ってた以上に豪華で大きいものだった。
食事を済ませた後、家族でデッキで夕焼けを眺めながら思い思いのドリンクを飲む。
父さんと母さんが楽しそうに仕事の話をしているので、空気を読んで一人海を黄昏た。
LINEでは、沙耶さんと日本でどんな学生生活をおくっていたかとか、そういう話で盛り上がってる。でもそれは、友達としてのただのコミュニケーションなのかもしれない。でも、彼氏がいてこんなにやりとりを頻繁に重ねるものなのか。。
はい、もうわかりませーん笑
「ねえねえ、もしかして日本人?」
「あっ、はい、そうですけど。君も?」
「うん、そうそう。こんなところで会うのもなんかの縁、取り敢えず、よろしくね」
「あはは、よろしく」
「それにしてもここは、最高のリゾート地だよね、ここへは、もう4回目だよ」
「4回目!僕は初めてなんです」
「そっかそっか。あっ、俺、佐藤勝久っていいます。」
「自己紹介まだでしたね!僕は、黒瀬幸来と申します」
「ん?黒瀬?」
「え、そうですけど、以前どこかで?」
みるみる爽やかな勝久の顔色が曇っていく。
「学校は、、マカティの日本人学校?」
「は、はい」
僕は、本能で、直感で今の自分の状況を悟った。
これはまずい、知られていた。自分が、黒瀬幸来が柏村沙耶と仲良くしていて、デートにまで誘ったということを。
そう、この佐藤勝久こそ、柏村沙耶の彼氏だったのだ。
デッキを照らしていた夕日は沈み、
今は寒気すら覚える海風が、僕たち二人をいたずらになで続けた。
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