第5話 君の気持ちが知りたい

こんなにもモヤモヤした朝が、

こんなにもモヤモヤした気持ちが、

果たしてあって良いのだろうか、いやない。

なんだかんだ熟睡できてしまうところが救いだが、

やはりいつもの気持ちの良い目覚めではない。

ワークアウトしても、シャワーを浴びても落とせない心のモヤモヤ。


「おはようございます。幸来さん。」

「おはよう、アルテアさん。」

昨夜結局、日曜日にランチのデートをすることはなくなった。

おかげで、家族で日帰りで近場の海辺まで行くことができるから、それはよかった。いや、やはり良くない。少しも良くない。

ついでに彼氏が、同じ学校の同級生だと。彼氏さんは、自分の顔を知らないだろうけど、知られたら最後、破滅だ。沙耶さんを巻き込んでの泥沼。

既に向こうは自分より先に学校で過ごしてるから、友人もいるし、共同体にも属してるだろうから、スクールヒエラルヒーの形勢が不利すぎる。今は、大学受験勉強の妨げにつながるあれこれは、勘弁願いたいし、元々誰かと争うことがとても嫌いだ。

アルテアさんが用意してくれるフルーツが、憎らしいほど甘くて美味しい。

「アルテアさん、もしも恋心を持つ相手に彼氏がいたら、どうすればいいと思います?」

「彼氏がいても、今二人が必ずしもいい関係でいるとは、限りません。ですから、初めから希望を捨てる必要は、ありません。でも、二人の関係が良好な場合は、自分が好きだからといって間に割り込むことは、正しいこととは言えません。結局のところ、自分が好きなその子の幸せ、未来を考えてあげて、その上で行動選択する、これが一番だと、私は思いますよ。」

「アルテアさん、ありがとう。すごく、、助かったよ」

「いえいえ。お役に立てて光栄です。人生とは、本当に複雑で難しいですよね」


「ああ、素敵だな。偽物の家族でも。エンディングなんてまさに理想の核家族像だ。将来こんな家庭を沙耶さんと築けたらな」

Wi-Fiが使えるようになり、最近ハマってるスポンジファミリーを見ながら、ついこんなことを呟いてしまう。

昨晩のLINEのやりとりで、月曜日の授業終わりに二人で校内を散策する話は、予定通り付き合ってくれることとなった。彼氏さんは、その日家族とどこかへ出かけるみたいで、学校に来ないから安心してとのこと。

嬉しいけど、なんか浮気相手みたいで内心複雑だ。

なにより彼女の気持ちが全くわからない。

彼氏とどんなふうに今回のことを話したんだろう。

アルテアさんが言ったことは、本当に正しいことだと思う。だからこそ、君の本心が知りたい。君は今、彼のことをどれだけ思ってるのか。こんな状態になってもどうして君は、僕にこんなに親切にしてくれるの。友人として失いたくない存在だから、話は続けてくれる、それだけのことなのかな。それとも、あんまり本気じゃないけど取り敢えず交際しただけの彼氏で、僕に気がある、のかな。

「なんか笑けてくるな」

自分に気があるかもしれないなんて、そんな都合の良いこと、この厳しい現実でそうそうありっこない。そんなことを考えると笑けてしまう。


「明日の予定なんだが」

「そうそう、どこに行きましょうか?と言っても、お父さんのことだから、もう予定バッチリでしょ笑」

「そんな気がするー笑」

こんな時、父さんはいつもほんのりドヤ顔を決めてくる笑

「クラブノアという海辺のリゾート地へ行ってみようと思う。1泊だ。」

ん、今1泊と言わなかったか。。。

「あら、1泊、いいわね!」

「あれ、学校は。。?」

「幸来は、しっかり勉強してる。最後に日本で受けた模試も悪くない出来だった。ここは、日本じゃない。やることやって成果も伴ってるなら、これくらい問題いない。グローバルスタンダードは、学生にも適用する笑」

「え〜〜」

たまに父さんは、子供みたいな笑顔をする。

「てな訳で、明日は8時には家を出発する。そのつもりで準備しておくように。」

「はいはい。幸来、準備でわからないことあったら聞くのよ。あとは自由にしていいわ。」

「はーい」

日本じゃありえないことが、ついに我が家にまで起きている笑

沙耶さんに伝えなきゃ。月曜日学校行けなくなったこと。

21時にこのことを沙耶さんに伝えた。

海外じゃあんまり驚くことではないって言ってたけど、内心どう思ってるんだろうか。引いてなければいいんだけど笑

そうだ、何かお土産、買って帰ろう。


明日は早いから、早めにベッドに入った。

今晩は、風が強い。雨も幾ばくか混じってる。

窓を叩く雨が、恋で悩む僕の心に酷く響く。

今沙耶さんは、どこで何をしてるのだろうか。

僕のことをどう思ってるのだろうか。

僕からの積極的なアプローチは、この先迷惑にならないだろうか。

君の気持ちがわかなない。知りたくて仕方ないよ。

でも言葉にしてこれを聞くのは、なんか違う気がする。

本能がそれを止めてくる。苦しいな。

明日、天気も心も両方とも晴れてくれるといいな。

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