第3話 アイスの甘さと恋の甘さと
やっと着いたぞ、ハーゲンダッツさん
「何味にしますか?」
「んーー、クッキー&バニラで」
「コーンですか?カップですか?」
「んー、コーンで」
「お待ちください」
いつも色とりどりのアイスクリームに目を奪われるが、結局いつも頼むのは、クッキー&バニラである笑
「お待たせしました」
そして、いつもコーンのデメリット、急がないとどんどん溶けてくる問題を気にしながら、結局コーンを頼んでしまうのだ。やはりあのサクサク食感の誘惑には、かなわない。
冷房とアイスですっかり体の内も外も冷やされ、外の暑さが恋しくなり、お店を出ることに。
お店の前は、モールの中心部でセントラルパーク的な自然あふれるエリアとなっている。
「まじか、噴水だけじゃなくて滝もあるよ」
心地よい暑さとマイナスイオン、最高すぎる。
「ここ来るの初めてなの?」
「ん?」
気づくと隣に日本人の女性がいて、話しかけてきた。シンプルに、綺麗だ。
「ここいいよね、滝と噴水と木々のお陰で暑さが心地よくなる」
「間違いないです」
「敬語じゃなくていいよ、多分同い年くらいじゃない?」
「今年17歳になります、なるよ笑」
「ドンピシャ、私も今年17歳」
「おー」
「どこの学校に通ってるの?」
「マカティの日本人学校に通う予定、来週から」
「うっそ」
「えっ、なに?」
「私もマカティの日本人学校に通ってるの、今年の4月から」
「すごい偶然ですね、だね笑」
「そーだね、でも結構アラバン地区に住んでる日本人は、そこに通ってること多いよ」
「友達できたら、会うの簡単そうだ」
「それは、間違いないね。学校へは、バス?それとも自分の車?」
「自分の車で通う予定」
「おっ、一緒だね」
彼女と歩く公園の時間は、とてもスローに感じられる。暑さで漂う彼女の香りが僕をその魅力の虜にする。髪は黒く艶やかで長く、すらっとした体つき。
164、5センチかな。スポーツでもしているのだろうか。勉強はできるのだろうか。顔は、可愛いと言うよりも綺麗だ。熊顔ではなく、狐顔。キリッとしたその顔に僕は、一瞬で惚れ落ち、数分の会話と散歩で、そのたたずまいに虜となった。
「スターバックスにとうちゃーく」
「最高」
「ハーゲンダッツから公園を斜めに突っ切るとスターバックスがあるんだよ」
「テイクアウトする?」
「えっ、入店しようよ笑」
「そうだね」
「バニラフラペチーノください」
「キャラメルフラペチーノください」
「フラペチーノ好き?」
「大好きで、いつもこれ笑」
「私も、いつもバニラフラペチーノにしちゃうの」
「ここの席、外の噴水が見えるよ」
「いい席ね、ここにしましょう」
「お父さんの仕事でフィリピンに来たの?」
「そうよ、父の仕事でここへ。あっ、名前言ってなかったね。
私は、柏村沙耶(かしわむらさや)。よろしくね」
「僕は、黒瀬幸来(くろせさき)。よろしくね」
「幸来は、お父さんの仕事でこっちに?」
「うん、僕も同じ理由。急な話でさ。大学受験とかどうなっちゃうのかなって。MARCHのどこか、受験してみたいとは、思ってるんだけど。」
「それは間違いないわね、フィリピンの大学に進学するつもりは、全然ない」
「となると、一人帰国して受験して、一人暮らしスタート、なのかな」
「んー、まあ2年後どうなってるかなんて正直わからないわよね。今年1年は、しっかり受験対策しながら、学校行事も楽しむ。それでいいんじゃない」
「間違いないね。沙耶はしっかりしてるね」
「そんなことないってば」
「学校には、どれくらいの生徒がいるの?」
「各学年100人くらいかな。でもね、学校の大きさが、これまた馬鹿でかいのよ。日本の高校で生徒数300〜400だとして、そうした一般的な日本の学校の大きさの10倍は、少なくともあるかな。」
「10倍」笑笑
「こっちってなんでもスケールが大きいよね」
「うん、自宅からここまで、ずっと驚かされっぱなし笑」
「私もずっと驚かされてたけど、一月して慣れちゃった笑」
「友達や家族とは、休みの日とか学校終わりには、何してるの?」
「休みの日は、家族と買い物したり、ご飯食べに行ったりする。あと友達の家にお泊まりしにいったり、とか」
ああ、やっぱり綺麗で素敵だ。話してる時の手振り、テンション上がった時にやや右上に必ず目線がいく瞬間、て言うか歯並び良くて白くて、もうどないしてくれん、この気持ち、この感情。
「もしもーし、聞いてますか〜?」
「あっ、ごめんごめん、なんだっけ笑」
「投稿初日、授業終わりでよかったら、校内案内してあげようか?」
「是非ともお願いします!」
「LINEかフェイスブックしてる?」
「LINEしてる!」
この後の母との昼食の記憶は、あまり覚えていない。
彼女と話していた時間が、スローモーションでまぶたの裏に映る、鮮明に。
窓から差し込むマニラの夜月が優しく僕の身体を包む。
初めて、恋をした。それも一目惚れ。
今はただ、彼女の魅力の海に沈みゆく。
そして、眠りの世界へと沈みゆく。
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