第26話 イス取りゲーム

「玉藻先生。先ほど、ちゃんと見て回って何も無かったって言ってませんでしたっけ?」

「記憶にございません」

「鳥頭って言うんですよ、そういうの。知ってましたか?」

「トサカに来ましたよ! 今の発言! 撤回と謝罪を要求します!」

「学校で飼ってる鶏よりよっぽど鳥頭です」

「うっわ、暗っ! 先生、ライト貸してー」

「どうぞ」

 姫ちゃんと先生が言い合いしている下で、もそもそと千真ちゃんが穴に潜っていった。姫ちゃんも入れるみたいだけど、服が汚れるからイヤだってー。

 先生はみんな止めたのに頭だけ突っ込んで、突っ込んだところで、やっぱり無理だとわかったっぽくて、その場で仰向けになったりしてた。どうしても中を見たかったみたい。

「あの上にくっついてるの階段だよね? 空穂の言った通り、この穴だとハシゴ入らないし。例え小さな脚立が入ったとしたって、どの道あの高さじゃ下ろすのは無理だろね。壁とか照らしてみたけどスイッチも何も無いね。たぶん、どっかにあの階段を下ろすスイッチなり仕掛けなりがあるはずだから、まずはそれを探すってことでいいかな?」

 ペンライトを先生に返しながら千真ちゃんにっこにこ。わたしもにっこにこ。

「……」

「……?」

 千真ちゃんを見つめ続けるわたし。そんなわたしにだんだん眉を寄せる千真ちゃん。眉が左右くっつきそうなくらいになったところで、やっと気付いてくれたのか、ぽんっと手を打ち鳴らした。そうそう。忘れちゃ困っちゃうよ、上官殿。

「よくやったぞ! 空穂特派員! ご褒美にアイスをおごってあげよう」

「イエッサー、千真大佐!」

「ずるーい。そうだ。玉藻先生、お宝見つけられたらみんなにアイス奢ってよ」

「……いいでしょう。ハーゲンダッツは禁止としますよ。あ、ソフトクリーム系も高いので無しにしましょう。コンビニももちろんダメです。近くにスーパーはありますか? アイスを買うならスーパーが断然安くておすすめですねそうしましょう。ちなみに先生はガリガリ君にしますよ? ところで、あなた方は何にするんですか?」

「けちー」

「……お嬢様じゃなかったんですか?」

「残念ながら留年してからは、お小遣い制になりましてね。今の私の手持ちは三千百円です」

「「「留年?」」」

「一年浪人して一年留年してます。あ。それより今はほら。早く下に行きましょう。今度は、下方向に注意しながらです。行きますよ」

「ますよ~♪」

 ぽかーんとしているみんなを置いて一階へー。ゴーゴー!

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