第25話 イス取りゲーム
「行ってみよっか~」
「そだね」
きょときょとって二階を気にしている恵美寿ちゃんにお声をかけて~♪ みんなを置いて一緒に階段をてくてくのぼって右に曲がってさあ大変♪ みゃんみゃんみゃみゃあん、みゃんみゃんみゃみゃ~ん泣いてばかりいる子猫ちゃん♪
「ストップ」
通り過ぎようとしたところを両手を広げてストップ。歩いてたからずざーって感じでもなかったけど千真ちゃんの真似してストップ。
「どしたの?」
「んー……」
ちょうどテトリスのバーのSみたいな形をしている廊下のへん(あ。テトリスのぶろっくってテトリミノって言うんだってー)。Sって言っても、奥はこの家の普通サイズの廊下で、なんかここだけ細くなっててー。部屋はもっと先にある。ここに部屋はないよねえ。普通に廊下が続いてるだけ。下はキッチンのへんかな。たぶんそう。あのときの先生すごかったな~。またあれやってくれないかな~。
追い掛け回したらやってくれるかな~。
て、いけないいけない。
こんこん。
壁を叩いてみる。
「みゃあ」
ご機嫌斜めなお声が返ってきた。
「わ。どこにいるんだろーね」
「たぶん……」
ついでにちょっと先の壁を叩いてみる。角を曲がった先。こんこんじゃなくてごんごんってした。手がちょっといたい。
――空っぽ。
廊下の壁は白く塗られていて、下半分だけ木の板がいっぱい貼られている。
タイタン。巨人のお家。ドロボーみたいに入ってきたわたしたちはちっちゃな小人。
さっきの場所に戻ってその場に這いつくばってみる。
「なにしてるの? さっきから」
匍匐前進できょときょと辺りを見渡して何もない。角を曲がって、その先には何もなくて、右は普通に普通サイズの廊下で左には……。
「みゃあ」
「あはー。こんにちはー」
「わぁ! どっから出てきたの!」
木の板がぱかんて開いて中から茶トラの猫が飛び出してきた。野良猫っぽい。目ヤニがいっぱい付いてた。手を差し出したらわたしを飛び越えてあっちへ行っちゃう。残念。
猫が出てきた木の板に頭を突っ込んでみる。
パカーってけっこうあっさり開く。アルパカー。
狭い。めちゃくちゃ。お尻ギリギリ。
「はあ。すごいね。よくこんなところ見つけたね。なんか見える? お宝あった? 危なくない?」
「まっくろくろすけ」
中は真っ暗闇だった。でも、這いつくばりながらちょっと無理して上の方を見上げると、ほんの少しだけ明かりが差し込んでいるのが分かった。ほんとーにほんとーにほんのちょっとだけだけど。うすーくうすぅく。たぶん普通の人じゃ見えないような光。わたしくらいにしかわからないような光とも呼べない光。扉かな? あの向こうには何があるのかな。わくわ――そうだったお宝だった。忘れてた。まあいいや。どうでも。
んんんんー。でもたぶん届かないよね、あそこ。ハシゴとかあれば届くかもしんないね。でもこの隙間じゃあハシゴが入らないかな?
「んー?」
「なんかあった?」
天井のとこ。なんかある。なんだろあれ。落っこちてきそうな段々。
首を引っ込めた。むしあつ。
「どうどう? って、あ! あたしも入ってみればいいんだ。って、うわ。せっま! うー、あたしじゃギリ無理だあ!」
千真ちゃんと姫ちゃんはいけるかなあ。
左右にお尻を揺らして出てくる恵美寿ちゃんを見て思う。下を見ろってことかなあ……。
「じゃ、報告しにいこっか」
「見て回ってからにしよー?」
「それもそっか」
出てきた埃まみれの恵美寿ちゃんと一緒に、二階のなるべく下側を見て回ったけど、結局何も見当たらなかった。そうは簡単にいかないみたい。
それは、とってもいいことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます