第23話 宝探し

「ひっ!」

 私は左側から、玉藻先生は右側の廊下から探す、ということになりました。……本当は右側が良かったのですが、玉藻先生がそそくさと、右側の廊下へ向かったため、そういう風になってしまいました。ぐう。先生の馬鹿。

 足元には何故かおかっぱ頭の日本人形が転がっていました。

 何故こんなところにあるのでしょう? 心霊現象でしょうか? 私たちが来たときは無かったように思います。

「うう……」

 とりあえず人形は無視しましょう。

 正面側の廊下には何もありません。ただ正面玄関へと続く廊下があるのみです。そして、左側に差し掛かると、すぐにトイレがあります……トイレがあります……他意はありません。

 開けてみます。中は至って普通の一般的なトイレでした。特に何も見当たりません。

 お次はあの部屋です。

 全力で忌避したかったあの人形部屋です。

 ……しかし冷静に考えると、玉藻先生は人形を置いたとしたら祖父だと仰っていました。ということは、この人形事態に意味があるようにしか思えませんね。そう考えると俄然気合が入り――ませんね。早く帰りたいです。

 そういうわけにも参りませんので、仕方なしに扉を開けてみます。きい、と鳴っておっかなびっくりです。

 幾つかの人形の目が侵入してきた私へと向けられています。う……早く終わらせたい。

「……」

 改めて見ると、本当に色々な人形があります。そして、かなりバラバラに置かれています。何か法則性などないものかと目を凝らしてみますが、さっぱりです。逆にここまでバラバラに置けるのも凄いです。全体が全体、それぞれ違った方を向いています。左右ならまだしも、上下に首が動く人形もあるようで、それを成し得ているのだと分かります。

「きっと、これには意味がありそうです」

 要調査です。間違いありません。

 次、右廊下山側の部屋。ここは――何も置いていませんね。

 埃が堆積していて長年人が入っていないようです。ここは無しですね。

 次、山側の廊下にあるお部屋。何故か扉が開いていました。先日来たときに誰かが閉め忘れたのでしょうか。その証拠に埃に大量の足跡が――って。

「……たぬき?」

 怪しげな足跡があるにはありました。歩き回ったような跡が一つ……これは千真さんのスニーカーでしょうか? ただ、それとは別に、何かの動物と思われるような足跡が、室内を縦横無尽に駆け巡っています。

 たぬき? きつね? 犬? 野良犬はこのご時世さすがに無いですか。だとしたら……?

「あ……猫?」

 そういえば、以前ここに入ったときに、猫が先行して入って行きましたね。結局、あの後猫はどこに行ったんでしたっけ。記憶にございません。

「ま。これはいいでしょう」

 報告はするまでもありませんね。間違いありません。

 部屋を出ると、右側廊下の調査を終えたであろう玉藻先生と遭遇しました。二人でお互いが調査した部屋の報告をし、一階へと下りて行きます。

 一階の調査も終わったようで、正面玄関から外へと出ようとしている千真さんと空穂さんとバッタリ会いました。先に言葉を発したのは千真さんです。

「どうだった?」

「色々ありましたが後にしましょう。恵美寿さんは外ですよね? そっちを手伝ってからにしましょう」

「それもそだね」

 その後も、小一時間掛けて調べてみた結果――。


 宝探しは早くも暗礁に乗り上げたのでした。


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