第22話 宝探し

「じゃ、一周して分かったことね」

 今、私たちは館を一周して正面玄関にいます。空気の入れ替えや明かり取り込みのため、窓は開け放してあります。この前と違い、けっこう明るいです。一安心です。

「一、原作小説の館の間取りと、この館の間取りは完全に一致している。

 二、家具や調度品の類は原作と一致していない。というより、むしろほとんど置いていないと言っていい。

 三、その代わり、原作には無かった物が存在している」

 千真さんが指を立てて説明し始めました。

 得意気になってるところ悪いのですが――。

「べつにわざわざまとめてないで、原作通りのギミック? 仕掛けを探して駆使していけば、検討することなく、お宝に辿り着けるんじゃないんですか?」

「ちっちっち。ヤカタイタンは館事態に特殊な仕掛けがあるわけじゃないのだよ、姫特派員」

「誰が特派員ですか」

「そうなの?」

 恵美寿さんが返しました。

 私も疑問に思います。

 特殊なギミックが盛り込まれたから後期作品は賛否が分かれたのではなかったでしたか。なければ、なんてことないただの廃家屋です。

 その質問には玉藻先生が答えました。

「ヤカタイタンに出てくる館は、巨人の住む館ですから。べつにギミックなど盛り込む必要がないんですよ。サイズが大きい。それだけで小さな人間にとってはかなり特殊な状況であり、ギミックともなります。例えば、そこにある階段」

 玉藻先生は後ろにある正面階段を示しました。

「巨人にとっては小さな段差ですが、人間にとっては段差一つ一つが壁とも成り得るのです」

 ただの階段がとてつもなく巨大な壁に――見えませんね。普通にただの階段です。

 しかし、それでは取っ掛かりがないような……。

「ねえねえ。そのお話ってさ、起きた事件を探偵が解決するお話なんだよね?」

 私が考えを巡らせてる間に、恵美寿さんが、千真さんと玉藻先生に向けて質問しました。

「そだよ」

「じゃ別に宝探しするお話じゃないんでしょ?」

「うん。全く」

「ふうん……どこ探せばいいの? 一旦全部探してみる?」

「そうする他ないでしょうね。私と恵美寿さんは二階を探しますから、千真さんと姫さんと空穂さんは一階をお願いします。終わりましたら各自、外と中庭をお願いします。では参りましょう」

 恵美寿さんはいまいち自分の中で納得いってないようですね。また上手く言葉に出来ないのかもしれません。途中、自身を無理やり納得させるために提案したようにも見て取れました。

 私も気になりましたが、続く玉藻先生の言葉に無理やり割り振りを決められてしまったために、一旦邸内を散策することに。案外、あっさり出てくるかもしれませんし。

 と、その前に。

「待って下さい。中津堅一さんはいつも執筆するとき、小説は原稿用紙に書いていたんですか?」

「パソコンです」

「となると……、私たちは何を探せばいいんですか?」

「何を?」

 手書き原稿じゃないとなると、パソコンを探せば良いのでしょうか? 記録媒体? SDカードのように、あんまり小さな物だと探すのも一苦労しそうです。しかし、仮にもミステリ作家と言っていましたし、ただ見つけにくいだけとも限りませんよね。それだと、ゲームとしててつまらなさ過ぎます。

 千真さんが腕組しながら答えます。

「ん~、どうとも考えられるから、今のところ、それっぽい物を見つけたら報告って認識で良くない? 紙、USB、SD、PC……、あとなんだろね? ハードディスクにスマホとか? ま。見つけたら全部報告ってことで」

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