第16話 宝探し
「せんっ――とぉ……」
千真さんが真っ先に玉藻先生に話しかけようとしましたが、その玉藻先生はいきなりクラスのみんなから取り囲まれてしまいました。子供とは、兎角、新しいもの・珍しいものが大好きなのですから仕方ありません。
とぼとぼと歩いてくる千真さんです。
私の机の周りには、空穂さんと恵美寿さんがいらっしゃいます。
……恵美寿さんは昨日わたしにとても優しく接してくれました。家まで一旦戻って、わたしが着替えるのを待ってくれて……その後絶対馬鹿にされる言い触らされるかと思いましたが、恵美寿さんは最後まで私に向かって微笑むだけでした。
私のことを心配したのか、もう一度、屋敷に入って行くような真似はせず、ただ帰ってくるだろう二人を待ち続けたのです。
今まで私は、この、自分をツッコミ役と自称しているけれど、根がド天然なせいで、頓珍漢な発言ばかりを繰り返す子に、苦手意識とは言わずとも、どうかと思う事が多々あったのですが、それを改めなければいけないときが来たようです。
その恵美寿さんが千真さんに向かって言いました。
「ケイドロって三人だとつまんなくない?」
「あいや、だからケイドロはやってないって」
「そうだっけ? やるときは呼んでよね」
……まあ。こういう子ですね。
「ねーねー。あれすごかったねー。もう一回やって欲しいよねえ」
机に手を付き、ぴょんぴょん左右に飛び跳ねながら(何の真似でしょう?)、空穂さんが言いました。
この子は……なんと言いますか……一番読めない子です。行動も思考も。
このグループの中では、一番年相応らしさを持っている子なんですが、時折ミステリアスというか……全て分かっててやってるんじゃないかとか……ある意味それが子供らしいと言えばらしいのでしょうか?
「どれのこと? あの側宙っぽいやつ? ヤバかったね、アレ。それより私は昨日の事情をさっさと問い質したんだけどね」
事情……。何があったのかは昨日聞きましたが、聞いても結局よくわからないことがわかったというだけでした。
玉藻先生があの幽霊屋敷にいた。おいかけっこになった。それだけです。
幽霊屋敷……私にとっては苦い思い出です。もう行きたくありません。いえ。結果として幽霊じゃなかったじゃないかとかそういうことじゃなしに、それっぽい雰囲気だけでもう嫌なのです。でも、行きたくないとも言えませんね。みんなの様子からして、また行きたがりそうな感じはしますし、どうしましょう。
ぽん、と頭に感触がありました。
見上げてみれば、千真さんが頭に手を乗っけていました。撫でるでもなく、ただ何となくそこに手を置きやすい頭があったから置いただけ、というような。
失礼ですね!
私は何か文句の一つでも言ってやろうかとしましたが、やっぱりやめます。
「……事情を問い質すのだったら長くなりそうですし、お昼休みにでも捕まえましょう。それで、本当に悪いことをしていたら、それからまた相談すればいいではないですか」
焦ってもいいことはないのですから。
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