第13話 〝何か〟
以前ベッドの横に立っていた〝何か〟
いなくなって寂しさを感じた〝何か〟
眠りに落ちていく中、ぼんやりとその輪郭が浮かんでくる。
学生服。ぼうず頭、純粋な瞳で私を見つめる〝少年〟
私だ。
14才の時の私。
友人と映画に行った。主人公がギターを弾きまくるシーンに鳥肌が立った。ギターをやりたい!祖父にお願いしてギターを買ってもらった。両親と一緒にダンボールの箱を開ける。黒いギターはズシリと重かった。
少年はギターに、音楽にのめり込んだ。長髪でギターを弾く外国人。あんな風にギターが弾けるようになりたい。すぐに友人達とバンドを組んだ。母親は「趣味でやりなさい。」と言ったが、趣味でギターをやり始める人がいることが理解できなかった。
「俺はギタリストになる!」
そう。その時の私だ。
去って行ったのはその時の私。
ずっと一緒にやっていたメンバーが抜け、バンドは解散。情熱を失い路頭に迷った。目指していた灯台の光りが消え、暗い海の上でどこに向かって船を漕げばいいか分からなくなった。
バンドのリーダーとしての自分。ギタリストとしての自分。それら全てが情熱と共に消えてしまった時、自分が誰だか分からなくなった。〝なぜ俺は東京にいるんだ〟
鬱になった原因。私が必死で探した〝何か〟
それは、14才から本気で夢を追い続けた自分だった。
14才からの俺は死んだ。
そのどうしようもない寂しさだった。
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