第10話 実家での出来事

眩しくて目が覚めた。部屋の扉の向こうの照明。

いったい今何時なのだろう。

私が寝てるベッドの横に誰かが立っている。照明の逆光でシルエットしか見えない。その人物?は何も言わず部屋から出て行った。「待って!」怖いと思わなかった。何故か行かないで欲しかった。


実家での朝。

あれは夢だったのだろうか。あまりにもリアルだった。ただ、それが出て行ったことが寂しくてしょうがなかった。何か物凄く大切なものを無くしてしまったような。

出て行ったのは何だったのか。宇宙人?ひょっとしたら私に内緒で昔の彼女が中絶した子供の霊?そんなことを本気で考えていた。とにかく大切なものを無くしたような気分が続いた。



実家に帰った私は仕事もなく、時間を持て余す日々を過ごしていた。鬱の状態は相変わらず。思考が止まらない状態も続き毎日が苦痛だった。この頃は訳もなく不安だった。友人と会う約束をし、時間になっても友人が来ないと不安でしょうがなくなる。



父親が、時間があるんだから大型の免許でも取らないかと言った。就職のためではなく、父親が持ってる山の木を運ぶ手伝いをさせたいらしい。私は少し気分転換になるかもしれないと思い、教習所に通うことにした。


教習所でのこと。教官が「あなたは彼女はいるのか。」と聞いてきた。一瞬意味が分からなかったが、教習所に通っている女の子が私のことを気になってるとのことだった。高校時代のバンドのファンらしい。


私は高校のとき地元でライブ活動し、少し有名な存在だった。あれから4年。帰郷後は、また地元での活躍を期待されてた。いろんな人が温かくしてくれる。笑顔で声をかけてくれる。


ちょっと待ってくれ。今の俺はあなた達が知っている俺じゃない。

いつも夢を見てるような感覚。自然に振舞うことができない。


昔の俺はどう人と接してたっけ。その時を思い出しながら自分をコントロールする。


人の目に映る私の裏側では、止まらない思考に苦しむ私がいた。

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