第7話 自信喪失

バイト終わりのミーティング。突然だった。

「今日でアルバイトの人は辞めてもらう。」


実は彼女から、経営的な理由でバイトは全員解雇されるかもという話を聞いていた。

彼女は事前にこの話を聞かされて社員にならないかと誘われていた。仲良しなもう1人の女性も。そして2人とも社員になることを決めていた。


仕方がない。

翌日、早速新しいバイトを探した。ずっと着けていたピアスは外すことになったが、すぐにバイトは見つかった。

新しいバイト。初めて会う人達。毎日明るかった今までとはまるで違う職場の雰囲気。

「大学生?」「違います。バンドやってて。」そんなやりとりに違和感を感じるようになっていた。新しいバンドメンバーを募集し、連絡くれた人にも会ったが、全くピンと来ることはなかった。抜けたメンバー以上に魅力的な人には会えなかった。本当はもう本気で探すつもりもなかったのかもしれない。


結婚を考える社会人の男性にとって魅力的に違いない彼女。

夢に対する情熱も薄れた、ただのフリーター。社会経験もない小僧。


俺はなぜ東京でバイトしてるんだ。


なりたい自分を思い描き、それになれると信じて生きてきた。なりたい自分を演じてきた。その将来の自分は今はまるで幻想。辿り着きたい目的地が無くなった自分に魅力は無いと思った。


高校を卒業して就職したやつはもうすぐ社会人5年目を迎える。

大学に行ったやつはいい会社の内定が決まっている。

俺は。。



私の誕生日、彼女と少しお洒落なレストランで食事をした。以前デートしてる時「行ってみたいよね。」と話してた場所だった。会計の時お店から小さな観葉植物をもらった。カポックだった。彼女はこの日の為にシティホテルを予約してくれてた。


ホテルの部屋。彼女は私の首に腕を絡め「誕生日プレゼントに私をあげる。」と言った。

嬉しいと思う余裕が無かった。こんな俺にはムリだとしか思えなかった。

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