第6話 故郷
12月も終わりに近づいた年の暮れ。1年ぶりの帰郷。
故郷の夜の街の暗さに驚いた。東京では自然にしているファッションもこの街には馴染んでなかった。まるで別の世界から来たような感覚だった。
高校卒業後、気持ちはいつでも故郷にあった。東京での生活を同級生に話す。そう、私の居場所は故郷だった。それが東京での生活も4年近く経ち、私だけでなく同級生達も気付かないうちに新しい環境が自分たちの居場所になっていった。それまでは、みんな心の中で高校を卒業できてなかった。
同級生の友達の部屋。彼は私の話に「楽しそうでいいな。」と言った。自分のテンションがもう同級生に合っていないことを実感した。
すぐにでも東京に戻りたかった。彼女に会いたかった。
故郷での大晦日。ディスコでのカウントダウン。1月に22才になる若者はエネルギーに溢れていた。年を取らないのであればバンドでデビュー出来なくても、ずっと今の生活をしてもいいと思っていた。街を走る高級車を見ても、中古のバイクに乗ってる私の方が人生を楽しんでる自信があった。〝俺にはバイト先でこんな素敵な仲間がいる。こんなかわいい彼女がいる!〟
カウントダウンの後、すぐに彼女に電話した。あけましておめでとう。「浮気されそうで心配。」と彼女は言った。そんな言葉も年上の女性の余裕を感じた。
昨年末12月1日。バンドは解散した。それでも大好きな彼女がいる。東京にいたい。俺の居場所は東京だから。
この時、自分があんな状態になることなんか全く想像もつかなかった。
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