第2話 鬱病

「あんたそれ燃え尽き症候群じゃないのかい?」

受話器の向こうの母は言った。

孤独感が抜けない私は今の自分の状態を母に相談したのだ。


今でこそ鬱病は誰もが知る病名だし、その症状になった時に病院に行く抵抗も少ないだろう。しかし、当時はネットも無い時代。私は病気という自覚も出来ず、なぜこんなに孤独感に襲われるようになったのか、なぜこんなに気分が暗くなったのかを自分で考えるしかなかった。原因を突き止めたかった。


頭がおかしくなったのだろうか。何かの精神病になったのだろうか。

私は答えを求めて本屋に行った。


そこで鬱病という病名を知った。


この症状は今の私に近い。しかし原因は本に書かれていることとは違うとこにあると思った。


バンド解散、雰囲気が良かったバイト先が変わった。それ以外にも年上の彼女に甘える情けない自分になっていた。いろんな出来事が重なった。


出来事は整理できる。ただしそれらはたしかに残念な出来事ではあるが、そこまでのダメージを与えることでは無いと思った。それらがありもう一つの〝何か〟があったことで鬱が発症した。


そのもう一つの〝何か〟がわからない。


私はそれを見つけるために考えまくった。起きている間はずっと考え続けた。

考えることに疲れても考えた。考えを止めてはいけない。原因を見つけてこの孤独感から早く解放されたい。


いつからか思考は止まらなくなり、絶えず答えを求めて考え続けるようになった。


そして徐々に私は現実にリアリティを感じなくなっていった。

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