ツチノコの心配事と親心

募集告知配信および何故か決まってしまった自分自身のVtuberのデビュー突発告知から3日ほど経った。

その間は至って通常通り本来の仕事や応募者のWEB書類の選考をやりつつ過ごしていた。

「なんのトラブルも無く過せる事に感謝だなぁ。」

と、しみじみ思いつつ自分のデスクで昼食を取っていた所に一通のメールが届いた。

「ん?俺宛にメール?誰からだろうか・・・。ちと嫌な予感がするんだが。」

そう思いつつメールを開こうとした所に社長室の扉が開いた。

「律くぅん、とうとう届いたねぇぇぇぇ・・・!」

と、後ろから肩を叩いた悪魔な声が聞こえた。

その声の主はアルヴィオンの社長であり上司、年は離れては居るが自分と対等な友人関係である女性 長 社(おさ やしろ)だった。

「ヒェ・・・。やっぱり例の件のメールだよなぁ・・・。」

「諦めて素直にVtuberデビューしてしまいなさいな。もう律くんは十分いや十二分に皆を育て上げたわ。スタッフは勿論の事1期や2期生の子・・・そしてこの会社をね。」


そう実はこの会社の創立はたった3人から始まったのだ。


「いやいやまだでしょうよ。1期2期はまだしも3期に関してはマネ達ももう少し勉強させたい所だ。だから・・・。」

「律くん自分が育て上げた子達を信じなさいな。マネージャー達はお互い話し合いながら勉強に教育にとやってるわ。それに3期生の子達も余り貴方の所に来なくなったでしょ?自分から先輩に聞きに行ったりしているのよ?だから自信を持って貴方の元から卒業させて上げなさいな。」

社さんはそう言うが幾ら成長してようとも手塩に掛けて育てた子が心配なのは親心と言う物だろう。

「それでももし律くんに相談が来たら乗る。それで良いじゃない。」


〈おはようございまーす〉


そう抑揚の余り無い声が聞こえ出入り口の扉が開いた。

そこに立って居たのは学校の制服を着た身長150cmも無い小さな女の子だった。

「あら、音子ちゃんおはよう。」

「おう、おはようさん。」

「おばあちゃんとおっちゃんだ。おはよう〜。」

2人と挨拶を交わした音子と言う女の子。

長 音子(おさ ねこ)正真正銘 長 社の孫であり創立メンバー最後の1人である。

1期生は音子と他に2人居るが創立メンバーと言う訳では無い。

「2人は何してたの?けんか?」

怪訝な顔で自分と社さんの間に立ち入って来た。

「違う違う。」

「えぇ、喧嘩じゃ無いわよ?」

「ならいいや〜。」

2人からの言葉で安心したのかいつものフニャっとした顔に戻った。

「ところでおばあちゃんアレ・・・。」

そう言いかけた所で社さんが音子の口を塞いだ。

「?何かあるのか?」

「何でも無いわよ気にしないで。」

余計に気になるんだが・・・。言われた以上は気にしないでおこう。

「ところで2人は何の話をしてたの?気になる。」

「律くんの今後の事よぉ。スタッフ達やVtuberの子を律くんから卒業させようって話をねぇ。」

「俺としてはもうちょいって話をしてたんだ。音子はどう思うよ?1期生として。」

「ボク長 音子はおっちゃんから卒業します!そしてコラボ配信させて欲しい〜!」

欲望に忠実だった。

「さぁ音子ちゃんも納得したことだしおとなしく諦めなさいな。それじゃあスタジオの方に行きましょうか。貴方も来るのよぉ。」

社さんはそういうと音子の手を引いて行ってしまう。

「はぁ・・・。何があるって言うんだか・・・。」

俺はしぶしぶ付いて行くしかなかった。

《だって今日は皆はおっちゃんの為に皆来てるからねぇ。》

音子が何かをボソリと言った気がするが俺の耳は届かなかった。

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