東の国のラントペリー本家2
ロア王国を出て半月ほど旅をすると、俺は東のノルト王国の首都に到着した。
ラントペリー商会本家の本店は、王都の一等地にある巨大な店だった。
その店先で、俺は祖父と再会した。
「おお、アレン坊、久しぶりじゃな。儂のこと、覚えておるか?」
「はい、お爺ちゃん。お元気そうで良かったです」
祖父は顔を皺でくしゃくしゃにしてほほ笑んだ。
「アレン、マジででかくなったな。若いときのモーリス叔父さんそっくりじゃないか」
次に、従兄弟のエドガー兄さんが声をかけてきた。本家の跡取りである伯父さんの長男で、俺より五つ年上である。
「エドガー兄さんも、お久しぶりです」
「おう、久しぶり~。ロア王国で流行っているっていう高級ワインのボトルを見てびっくりしたよ。あれをデザインしたの、アレンなんだろ?」
「はい」
俺が答えると、周囲にいた本家の従業員たちからも「おお~」と声があがった。
何か恥ずかしいな。
今回の里帰りは俺一人で、フォローしてくれる両親はいない。四歳のときにロア王国に引っ越して以来の親戚との再会だ。だから、ここに来るまではけっこう緊張していた。でも、会ってみると皆、身内として俺の活躍を喜んでくれている。
それに、血が繋がっているためだろうか、自然と会話が合う気がした。
「ロア王国産の磁器も見たよ。あれの開発にも、アレンが関わっていたんだって?」
次に俺に声をかけてきたのは、伯父のグラースさんだった。爺ちゃんは高齢なので、本家の実質的な運営はこの伯父さん中心に行われていた。
「ふほほ。何せ、儂の孫は男爵様じゃからのぅ」
爺ちゃんは得意げに俺の背中をバシバシと叩いた。
「お爺ちゃん、そんな褒めないで。たまたま現地の有力者と良いご縁を結べただけですよ」
「うむ。モーリスの奴はロア王国で立派に店を拡大してくれたようじゃの。嬉しいことじゃ」
爺ちゃんは呵々と笑った。
それから――。
「アレン君、久しぶり(?)になるのかなぁ。私は小さすぎて記憶が全くないのだけど」
と、亜麻色のふわふわの髪をした若い女性が俺に声をかけてきた。
髪質がフランセットに似ている。妹が大きくなると、こんな感じになるのだろうか。
「えっと、ハンナかな?」
本家にいる若い女の子は、モーリス叔父さんの娘、従姉妹のハンナのはずだった。
俺より二歳年下の十八歳。
「うん。嬉しい、アレン君、覚えていてくれたんだ」
「もちろん。ハンナ、久しぶり。髪質がフランセットと一緒だからすぐに分かったよ。最後に会ったのは二歳のときだから、他は変わっちゃったけど。大人になったねぇ」
「え~、フランセットちゃんの髪の毛もこんな感じなの? 毎日ふくらむから大変なんだよ。あはは」
人好きのする感じで笑うハンナからは、商人の娘らしい社交的な感じが伝わってきた。
「せっかく遠くから来てくれたんじゃ。アレン、ゆっくりしていきなさい。ハンナ、お前はアレンと年も近いし、滞在中のアレンのことを気にかけてやっておくれ」
「はーい。アレン、明日にでも街を案内してあげるね」
「ありがとう、ハンナ」
「その前に、今日は歓迎会だろ。ノルト国料理、たっぷり食わせてやるよ」
「ありがとう、エドガー兄さん」
エドガー兄さんに案内されて、俺は十六年ぶりに父の実家に上がった。
四歳のときからずっと会っていなかった親戚たちだけど、父と雰囲気が似ている祖父や従兄弟たちは声質や話し方がそっくりで、俺は不思議なほど簡単に打ち解けることができたのだった。
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