お茶くみ人形3
ガーデンパーティーから帰った俺は、さっそく前世のフィギュアを思い出していくつか描いてみた。
「えーっと、前世で覚えているのは、某ツインテールの美少女フィギュアとかかな」
《キャラクターフィギュア
人気キャラクターのフィギュア。素材はプラスチック》
うーん、説明がシンプルだな。もうちょっと一般人が再現可能な情報が出せそうなもの……そういえば、ユー〇ューブで手作りフィギュアの作業工程を動画にしているのを見たことがあった。
《手作りフィギュア
材料は百円ショップの粘土とアクリル絵の具。手作りフィギュアには〝石粉粘土〟と呼ばれる粘土がよく使われる。石粉粘土は、石を粉状にしたものに接着剤の役割を果たす薬品を混ぜたもの》
「薬品……」
なんか、ややこしそうだな。平面の絵じゃないと〈弘法筆を選ばず〉も使えないから、強引な再現も難しい。これは、俺には手に負えない問題かもしれないなぁ。
俺は早々に、フィギュア制作を断念しようとしていた。だが――。
「いや、待てよ。じゃあ、あのお茶くみ人形は何でできていたんだ?」
俺はたしかに、プラスチックっぽい質感の人形を、この目で見ていた。
ローデリック様のお茶くみ人形は、造形的にはうまくいってなかったけど、素材の質感は前世のフィギュアとよく似ていたのだ。
彼はどんな素材を使ってあの人形を作っていたんだろう?
この世界、地球と同じような物も多いけど、ファンタジー要素もたくさんある。魔物もいるし、ミスリルみたいな金属もある。
「ローデリック様のお茶くみ人形は、俺の知らない素材で作られた可能性が高いな。彼に直接聞けば、教えてくれるかな。いや、待てよ……」
ローデリック様に問い合わせると、俺がフィギュア制作に本格的に取り掛かると宣言したようにとらえられるかもしれない。
――俺、そんな自信ないぞ。
なにせ、画家チート能力の取り除かれた俺はただの不器用男なのだ。下手に期待されると後で困るかもしれない。
……フィギュア制作は、気軽に途中で投げ出してもよい状態で進めよう。
「んー、他に誰か、こういう素材に詳しい人、いないかなぁ……あっ!」
粘土に詳しい知り合い、いたなぁ。
俺は磁器の開発で協力したヤーマダさんのことを思い出した。磁器を作るために各地の粘土を調べていた彼なら、何か知っているかもしれない
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