大人のお菓子4
家の厨房で、ダニエルにカカオ豆を見せる。
「見たことのない食品ですね。お菓子の材料にされるのですか?」
「うん」
事前に前世のチョコレートを思い出せるだけ絵に描いて、情報は仕入れておいた。
《チョコレート
カカオ豆を焙煎し、皮をむいて中の豆を粉になるまですりつぶし、湯煎でじっくり温めて固めれば、一応は固形のチョコレートとなる。市販のチョコレートはこれにさらにカカオバターを加えるなど成分の調整がされている。ただし、水分を添加すると、カカオの油と水分が混ざらず分離してしまうため失敗する。牛乳を加える場合は粉ミルクにする》
チョコレートを作るのは思ったよりややこしそうだった。
色々と工夫する余地があるから、地球ではさまざまなチョコレートメーカーやショコラティエが活躍していたんだろうな。たしか、日本にはチョコレートマニアみたいな人もいたと思う。
まあ、こっちはこっちで、やれるだけやってみよう。
とりあえず、ダニエルに手伝ってもらって、焙煎したカカオ豆の皮をむくところまで済ませた。
すると、処理した豆をダニエルが少しかじって、
「……これは、すごいものですね」
と、何かピンときたみたいだった。
いつもお菓子作りに協力してくれているダニエルの舌は、ずば抜けて鋭敏だ。俺には分からない微調整をして、クオリティの高いお菓子を作ってくれる。
今回も、細かいところはダニエルに丸投げすることになりそうだ。
でも、材料を扱いやすいように加工するところまでは俺がやる。
「この豆をすごく小さな粉にするんだ。手作業だと大変すぎるから、魔法でいくね」
物質を細かい粉にする魔法は、絵を描くときの顔料の操作でしょっちゅう使っていたので得意だった。
俺はそれを使って、ココアパウダーとココアバターらしきものを作って、ダニエルに託した。
「これでお願い。材料が足りなくなったら、粉砕までは俺がやるから、要望があったら教えてね」
「いえ、家の坊ちゃんを調理器具みたいに使うのはちょっと……」
「気にしないで。もともと俺が依頼したものだし。それに、俺は平民にしては魔力量が多い方だ。一緒に良いものを作ってフランセットを大人にしよう」
「フランセットお嬢様を大人に?」
「ああ。頑張るぞ」
「よくわからないですが、承知しました」
ダニエルと俺の挑戦が始まった。
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