レヴィントン公爵家の継承問題8
玉座の間。
一直線に伸びた赤絨毯の左右に、群臣が列をなしている。その絨毯の先にある黄金の椅子には、若い女王陛下が腰を下ろし、こちらを見ていた。
「私の領地で、最新の技術を駆使して制作した磁器です。絵付けはアレン・ラントペリーの直筆。一般の販売には複製の量産品を用いますが、こちらは特別に全て手描きで絵付けされたものです」
シルヴィアの従者として付いてきていた俺は、女王陛下の前にシルヴィアが十数点の磁器を並べるのを手伝った。
集まった貴族たちから「おぉ」というどよめきの声があがる。
「これは……見事だな」
「だが、似たような品を見たことがないぞ」
「領地で制作? 磁器を国産化できたのか!?」
周囲の貴族たちがざわめきだした。
「素晴らしい。輸入品よりも品質が良いんじゃないか?」
「あのカップが欲しいな。流行りのコーヒーを飲むのに使いたい」
「絵付けが素晴らしいな。アレン・ラントペリーと言えば、最近デュロン劇場で評判になっていた画家か」
ひそひそと聞こえてくる磁器の評判も上々だった。
「見事だ、シルヴィア・レヴィントン。そなたは他国に先駆けて磁器の生産を成功させた。これはこの先長く我が国に富をもたらすものになるだろう。また、先日の武術大会でも、武門のレヴィントン家の名に相応しい活躍を見せていた。その才を、古い伝統に縛られて腐らせるのは惜しい」
女王陛下がそこまで言うと、貴族たちはハッとしたように陛下に視線を集中した。
「レヴィントン公爵家の男系相続の縛りを解く。シルヴィアよ、レヴィントン女公爵となり余を支えてくれ」
周囲から拍手喝さいが起こる。
玉座の女王の言葉に、反対する貴族はいなかった。
「ありがとうございます、陛下。今後はレヴィントン公爵として、より一層の忠誠を誓います」
こうして、レヴィントン家の継承にまつわる一連の話は、女公爵シルヴィアの誕生によって幕を閉じたのだった。
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