第10話 盗賊と戦うことにしました
……次の日、俺は寝坊をしてしまった。今までの生活だったら有り得ない。
テントの中が快適すぎた。
朝から仕事で起きる必要もなく、敵から襲われる心配もなく、雑音は一切聞こえず静かだったから。
このままテントに引きこもっていたいとこだが、用は足さねばならない。
あと、どうしても腹は減る。生きているから仕方ない。
手早く準備して遅い朝飯を食べる。作っておいた食事を、バッグから直ぐに出せるのは便利だ。しかも腐らんときてる。
俺は食った後、テントをバックにしまい歩き出す。
「おっ! ベリーがあるな取っておこう」
道中、薬草や食い物を取りながら進む。帝国からかっぱらった物はまだあるが、いくらあってもいい。
バッグの中に保存食はあるものの、新鮮な食品はないそうだ。
缶詰めってなんだ? あとで食ってみよう。
「それは毒草です、マロン様」
「おっと! サンキュークレイ」
俺は野草にはそれなりに詳しい方だが完全ではない。形がそっくりな毒草も多いのだ。
クレイが教えてくれるので助かっている。
夢中になって採取してると、
「ここから北西に大勢の人間がいます。馬車の音もとらえました」
「……こんな何もないような森にか? だとすると……」
「はい、盗賊のたぐいかと。どうしますか? マロン様」
「出くわさないように、ここから離れるか……いや様子を見てみよう。もし馬で追いかけられたら逃げられん。確か遠くを見れる道具があるんだよな?」
「はい、ございます」
俺がバックに手をいれると、目的のアイテムが出た。
たくさんの物が入っていても、クレイが取りやすいようにしてくれている。
バッグの中から自分で探すのは無理だろう。
でてきたのは、1ペデス(㍍)ほどの丸い物体。
「これは?」
「偵察用ドローンといい、攻撃も出来ます。それとゴーグルもおとり下さい」
「ああ」
次にバッグから取り出したのは、大きめの眼鏡。
俺は目が悪いわけではないのだが、かけて見ることにする。
特に変わったことはない。と思っていたら、
「それではドローンを飛ばします」
「うおっ!」
視界がいきなり変わる。まるで自分が空を飛んでるかのようで、鳥になった気分。
ドローンが見てる物が、かけてる眼鏡に映っているのだ。
これは凄い! しばらくアチコチを見回して俺は楽しんだ。
「羽もなしに空を飛べるなんて、どうなってるんだ? 飛翔魔法なんてのは伝説の賢者しか使えんし、あとは竜騎士くらいだろう。どっちも見たことはないが」
「反重力によるもので、そもそも重力はどこにでもあって、それを制御し……」
「ごめん……もういい、聞いた俺が悪かった。やっぱり、さっぱり、ちんぷんかんぷん」
「……残念です。ではドローンの操縦に集中します」
「頼む」
ドローンを動かしてるのはクレイだ。
手動でも動かせるそうだが、口で指示した方が早いのでまかせる。面倒くさそうだし。
空中を移動して近づいていくと、人だかりがいてキャンプ中。
拡大して見ると、出で立ちからして盗賊である。数は二十人ほど。
ゴーグルにあるヘッドフォンとやらから、奴らの声が聞こえてくる。
「今回は上手くいったな。しかも上物のおまけつき」
「売ればウハウハや! やめられまへんなー!」
「傷物にはするなよ。非処女は売値が下がるからな」
どうやら奴らは人さらいをしてきたらしい。表向きは奴隷売買はできないのだが、闇市で売られている。
そして近くにあった荷馬車の中が映し出される。
「年端もいかない子が一杯いるな、あとで奴隷商人に売るのだろう。どっかの村からさらってきたな。さて、どうしたもんかな……」
「マロン様は助けたいのでは?」
「ああ、助けたあとのことを考えていた。子供らを置き去りにはできんから、町か村に連れていくしかない。ただ、そうすると俺の足取りが追っ手にバレる。かと言って見捨てたくはないしな……やるしかないか」
「はい、マロン様の思うがままに」
「しかし盗賊の数は多い。どうしたものかな?」
「ドローンの銃で撃ち殺しますか?」
「いや、全員を一気には倒せないだろ? 音を立てたら木々に隠れるか伏せるはず。あとは仲間を捨てて一目散に逃げだすかもしれない。盗賊だって自分の命が一番大事。戦いに命をかける兵士とは違い、盗むのが仕事」
「そうですね。お金にならないことはしませんね」
「透明マントでこっそり近づいて、一人ずつ倒すのはどうだ? ただ騒ぎ出す前に、一撃で仕留めたいとこだが、そんな武器はあるか?」
「はい、それではこの武器をお使いください。あ・と、透明マントではなく、光学迷彩スーツです」
俺が正確に言わないと、クレイはたしなめてくる。どうでもいいと思うんだけどなー……。
とにかく戦う準備をしよう。敵はたくさんいるので俺は気を引き締める。
早速バッグから武器を取り出して見る……。
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