第11話 初めて籠手をつけてみました

籠手こてか?」


「はい、その名もスタンガントレット。使い方は……で防御にも使えます」


「へー、よしつけてみよう!」


 俺は冒険者ではないので、金属鎧プレートアーマーを着る機会はなかったが、仲間達の装備の手入れはしていたのだ。やり方は鍛冶屋のおじさんに習った。

 磨くと輝く鎧は格好良く、着てみたいと思ったことは何度もある。


 こうして今つけてみると感動する。籠手だけでも嬉しくて仕方ない。思わず顔がゆるんでしまう。

 そして先代の遺産は何かしらの魔法……じゃなくて様々な機能がついてるから、使うたびにワクワクさせられる。


 さて武器はいいとして作戦を練られば。俺はクレイに相談する。


「姿を隠しても、誰かが倒されたら気づかれるな。うーん」

「それでは霧を発生させましょう。いい目くらましになると思います。近くに小川があるので、その水を使えば作れます」


「そんな道具もあるんだ?」


「ええ、では行きましょう。マロン様」


 俺達は動き出す。

 まずは人工霧発生装置とやらを取り出して、ホースを川水に突っ込んでボタンを押した。

 すると霧がわんさか湧き出してくる。不思議なものだ。


 あっと言う間に、森一帯が霧に包まれてしまう。この隙に俺は盗賊達に近づいていく。


「なんだ? いきなり濃霧になったな」

「山の天気は変わりやすいもんだ。移動は中止だな、足を踏み外すとやばい」

「しゃーねーな、しばらくジッとしていようぜ」


 そして俺は姿を消したまま、盗賊の一人に背後から近づき締め落とす。声は上げさせなかった。

 自慢の太い腕と腕力には自信があり、この技は俺に合ってる……スリーパーホールドだったな。


 俺が変な知識を知ってる理由わけは、クレイが『睡眠学習』とやらで寝ている間に、色々なことを耳元でささやいていたらしい。


 しかも鉱山にきてからずっと……俺は幻聴だと思っていた。


 幽霊かと悩んでいたのがアホらしい。勝手にすんなー!



 まずは盗賊の一人を倒し、引きずって草むらに隠す。殺してはいない。

 同じように数人を倒していった。流石に残った盗賊達は異常に気づく。


「おい、どうした返事をしろ!」

「みんな固まれ! 何かいるぞ!」


「キキキキキキキ!」


「魔物か!? みんな気をつけろ!」


 無論、俺達の他に誰もいない。クレイがドローンから、魔物の鳴き声を出したのである。

 音楽だけではなく、人の声も真似ることができるそうだ。音声合成ってなに?

 これは上手く使えば、敵の注意を引けるのでかなりいい。


 案の定、盗賊達はビビって身を寄せ合って武器を構えていた。


 視界が悪くては逃げだすこともできまい。これはチャンス。


「俺がやれるのはココまでだな。あとはモンスターエッグを使う」


「はい、マロン様。治療師ヒーラーの仲間でもいれば別ですが、危険な戦闘はなるべく避けるべきでしょう……今はまだ」


 バッグに治療薬ポーションはあるが、戦闘スキルをくらって致命傷を負ったら、使うどころではない。

 使ってすぐに怪我が治るわけではないのだ。他の獣にでも襲われたら終わりである。

 俺は慎重に行動するしかなかった。


 卵を取り出した俺は静かに盗賊達の近くに置く。あとは少し待つだけ。


 不気味な音楽が鳴り盗賊達は卵に気づく……やめろって。


「なんだあの卵は!?」

「割れてきたぞ、何かが出てくる」

「……リス? にしては尻尾がないな」


 盗賊達が知らないのも無理はない。バルバラ大陸には存在しない生き物で、名前はハム……なんだっけ?


 まあ、何であろうと中身は別物・・だ。普通の野生動物じゃない。


 可愛い見た目とは裏腹に、モンスターは盗賊達に襲いかかる!


 引っ掻き・噛みつき攻撃だ。鉱山の時とは打って変わり積極的に戦っている。


 俺やクレイが命令してるわけではなく、勝手に動き回っているのだ。


 仮に命令したとしても言うことを聞くかどうか怪しい。契約なので仕方ないが、この点はやっかい。


「いてっ! この野郎!」

「踏み潰してやる!」

「ちょこまかと! 魔法をくらえ!」


 ここで盗賊達は異常に気づくべきだった。しかしもう遅い。

 霧に囲まれ正体不明の敵にビビッていたところに、生意気な小動物が攻撃してきたら腹も立つ。


 ただしモンスターエッグから出てきた怪物は、盗賊達よりはるかに強い。


 魔力を持つ者の天敵である……。

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