第7話

「は?グレインがノクタール侯爵家に婚約を打診…ですか?」


「ええ。側妃が送り付けたそうです……。もちろん、断られたそうですがね」


 王妃にお茶に誘われ、そう聞かされたカイエンは少し呆れていた。

 件の親子は、学園卒業と同時に、第一王子グレインが王籍を外され、王宮から出ていかなければならないというのに、何を考えて侯爵令嬢アディエルに婚約を申し込んだのだのだろうか?

 まさか、知らないとか言わないだろうな?と、一瞬頭の中を掠めたが、そんな訳はないだろうと、考えるのを止めた。


 学園に入学する前に、カイエンは婚約の申し込みを受けてもらうために、アディエルへの申し込みの条件を認めさせなければならなかった。

 今日はその条件を確認してもらうために、侯爵家を訪ねていたのだ。


「……それで、カイエン。貴方の首尾は?」


「はい、母上。無事に納得して貰えることが出来ました!」


「そう!それは良かったわね、カイエン」


 息子の心からの笑顔に、王妃もまた心から笑顔を浮かべた。


 側妃を嫌がるアディエルのために、カイエンは色々考えた。

 お偉方からも話を聞いたし、過去の王族の情報も調べた。

 何なら二妃にも頼んで、子供の出来る確率の高い方法なども調べた。


 側妃が必要なのは、二つの理由からだからだ。


 一つは王妃の不足を補うため。

 コレは影を幼い頃から従えているアディエルには、問題ないだろうとカイエンは思っている。

 実際、王妃や二妃達からも問題ないと言われているからだ。何よりアディエルの不足など思いつかないし、彼女を補える者などいるとも思えない。


 そして、残り一つは跡取り問題である。

 最低でも男子が二人はいる。

 王妃との間に子供がなかなか出来なかったと言われている王に、子が授かるまでの期間を調べた。

 その期間内に最初の子が出来なかった場合。その後の決められた期間内に王子二人が産めなかった場合のみ、側妃を認めるという提案をした。


 これに際しては、東国の方に詳しい者がいると、二妃が情報を集めてくれていた。

 この情報を元に、婚姻してすぐにを選べるようにもなった。


 これら全てをアディエルに提案し、彼女も妥当だと認めてくれたのだ。


「では、貴方達が卒業するまでの六年間の間に、議会を説得できるように動くのですよ?」


「はい、母上。お任せ下さい!」


 それからは事ある毎に贈り物をするし、二人でお茶を楽しむしと、忙しくも楽しい学園生活が始まったーーーー。




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