第6話
「あぁん!可愛い♡可愛いですわぁ♡」
「…………」
ノクタール侯爵家に祝いを届けに来たら、何故か二妃様がいて、赤子を抱いて興奮していた。
「………何故、二妃様が?」
「あらぁ?カイエン様、御機嫌よう。カイエン様もわたしの可愛い姪っ子に会いに来られましたのぉ?」
頷きながらも、これは当分近寄れないなと、カイエンは招かれるままにアディエル達と別室でお茶を飲むことにした。
「そう言えば、あまり気にしてなかったのだけど、二妃様は何故、アディエル嬢達を姪だ甥だと言ってるのかな?二妃様はリーズベルト公爵家の出身で、前公爵夫人がこちらの出だと聞いていたけど?」
ノクタール侯爵は従兄では?と、前々からの疑問を口にした。
「ああ。二妃様は【腹違いの落とし子】として、公爵家の養女に出されたので、血縁上は間違いなく私達の叔母になられるのですわ」
「………侯爵と二妃様は、双子だったのか…」
納得の理由であった。
【腹違いの落とし子】とは、リーゼンブルクに伝わる風習の一つである。
双子が生まれた場合、その近い親族に子を失った者が入れば、その子が再び別の腹を借りて生まれてきたと言われ、失った子と同じ性別の子供を養子に迎えると、両家に幸運が訪れると言われている。
子供向けの絵本にもあるくらい、王国では当たり前の内容であった。
「公爵夫人が死産なされて、お子様の喪が明けた日に父と二妃様が生まれたそうです」
「男女の双子が産まれたと聞いた途端、当家の娘に違いないと、ご夫婦揃っておいでになったそうで……。乳離れまでは、二妃様は
アディエルとダニエルの説明に、カイエンは納得した。
「確か、リネット様の弟のマシュー様もそうだったはずですわ」
「へぇ……。案外周りには多いのかな?でも、婚姻関係とかには響かないのかな?」
「それは大丈夫でしょう。【落とし子】は、何処の家で生まれたのかを聞かされて育つそうです。ですから、問題が発生するとしたら、婚姻関係ではなく、財産関係だと思われます…」
「ああ。本当なら自分が継ぐはずだったのに…ってやつかな?」
アディエルの説明にカイエンが納得していく。
「まあ、そんなに大きな問題が起こっていないからこそ、幸運が訪れると言われているのかもしれませんね」
にっこりと微笑むアディエルの言葉に、カイエンは戻ったら調べてみようと心に決めた。
恐らくアディエルは、既に全部調べて知っているのだろうから。
そうして、カイエンが侯爵家の新たな令嬢に出逢えたのは、夕暮れ時だったーーーー。
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