腹黒王子は今日もこっそりと観察する

プロローグ

 私は生まれつき恵まれている。


 第二王子として生まれたが、第一王子は母親が位のない側妃であるため、王位継承権は最下位。故に王妃の子である私が第一位だ。


 王妃である母を支えている二妃様と三妃様のご指導のお陰で、知識にも武力にも秀でることが出来ている。

 御二方からは、元々の素質だと言っていただけたが、それでも原石は磨かなければただの石のままだ。


 ひとえに良き研磨士導き手だった御二方のおかげだと、私は感謝している。


 そんな私は、幼い頃から王となることが決まっているからか、有象無象の輩が擦り寄ってきていた。

 そこから、人の善し悪しを見る目の養い方を教えてくれたのも、二妃様だ。


 人心掌握と人心操作。


 似ているようで異なるそれらは、王となるなら身につけろと、物心付いた時から教えられてきたことだ。


 だから、六歳の時に開かれたお茶会では、自分の周りに集まる欲に塗れた令嬢達の視線ほど、怖くて鬱陶しいモノは無かった。


 彼女達の視線は、獲物を狙う肉食獣のそれだ。


 自分の伴侶をこの中から選ぶのなど、正直お断りしたい。

 どうしたものかと思い悩む私の前に、現れたのがアディエルだった。


 第二王子権力に興味はないと言うように、姉弟揃って淡々とした挨拶を交わしただけで、寄り付きもしなかった。


 そんな彼女が、第一王子グレインによって池に突き飛ばされたため、慌てて駆けつけた。

 彼女は二妃様達のお気に入りで、説教に巻き込まれたくないという打算もあった。


 だが私は恋に落ちた。


 その時初めて正面から彼女と向き合い、その容姿に目を奪われたのが最初だった。

 その後に、彼女がそうとはバレないように、第一王子にやり返した所に、二度惚れした。

 そして、確信したのだ。

 彼女が欲しいとーーーー。

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