第6話
「…………」
目の前で頭を抱えてしゃがみ込んだリネット・カラディル伯爵令嬢。
彼女の言葉に僕は茫然としていた。
第二王子の僕の身分とかではなく、兄上の婚約者となるアディエル・ノクタール侯爵令嬢の側にいるための手段として選んだと言われたのだ。
それなりに外見も整っているし、身分も王位継承権第三位。王太子となるカイエン兄上には劣るが、次点として狙われてるのも理解していた。
だからこそ、自分の婚約者がなかなか選べなくて困っていたというのに、目の前のご令嬢ときたら、アディエル嬢の側にいたいから選んで欲しいと言ってきた。
……あれ?これ、僕がアディエル嬢に負けてない?
確かにアディエル嬢は兄上の隣に並ぶに相応しい令嬢だと認める。いや、あの兄上の隣に平気で並べれるのは彼女だけだと断言できる!
そんな彼女の側にいたいと、正直に言ってきた彼女には感心する。
僕の目の前で、本気で落ち込んでいる
「ん~、そうだな。君がどんなにアディエル嬢の事を思って、僕に婚約を申し込んだのかを聞かせてもらおうかな?」
「っ!?」
そう言って手を差し伸べた僕の顔を、彼女は信じられないという顔で見上げてきた。
「…僕を説得するチャンスを上げるよ♪」
そんなことを言ったけど、婚約者は彼女にしようと決めてしまった。
ちなみにこの後、パーティーの終わる時間が来るまで、ずーーーーーーーーーっと、アディエル嬢の事に始まり、彼女のためにとしてきた事を聞かされて、アディエル嬢に勝てる日は来ないだろうということだけは確信できた。
パーティーの後、兄上達にリネットを婚約者に選んだと報告すると、何故か母上に思いっきり抱きしめられて死にかけた……。
「うんうん。さすがはリネット嬢。仕事が早いな♪」
「…兄上。先に教えてくれてても良かったんじゃない?」
ニコニコ笑う兄上に、思わず言ってしまった僕は悪くないと思う。
「それじゃあ、エイデンはリネット嬢の事を知らないまま受け入れるだろ?」
「う……」
確かに僕は兄上に言われれば、その相手に何も思わずに婚約していた可能性が高い。
「私は自分がアディを選んだように、お前にもリネット嬢を選んで欲しかったんだ♪」
「…それは…まあ…」
「それに彼女。素直で頑張り屋だからな。まんま、お前の好みだろ?」
「母上っ!!」
兄上との会話に、楽しげに母上が加わり、僕の好みがバラされた。
「大丈夫よぉ。みぃんな、知ってることだからぁ♪」
「…え?」
二妃様の言葉に周りを見回せば、父上も王妃様も揃って、全員がウンウンと頷いていた。
「あ~~~~っ!!」
真っ赤になった顔を両手で押さえて座り込んだ僕に、
「さて。カラディル伯爵家に婚約者決定を告げねばな♪」
と、楽しげに言う父上の言葉だけが耳に届いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます