第5話
本日はカイエン様の十一歳の誕生パーティーです。
今日のわたくしはいつも以上に気合いが入ってます。
カイエン様からのお話の後、エイデン様に関する情報を集めに集めまくりました!
何故か途中、母親でいらっしゃる三妃様からも二妃様との連名で、お手紙をいただきましたけど……。
とにかく今日のパーティーで、エイデン様と二人きりでお話をする機会を見つけなければなりません!
案の定、カイエン様の妃候補だった皆様に囲まれたエイデン様は、疲れきったお顔を誤魔化しながら、そっと会場を抜け出されました。
その後をこっそりと追いかけようとしたわたくしは、にっこりと笑いながらも小さく手を振るカイエン様を見てしまいました。
……絶対、勝ち取りますわっ!!
そうして、回廊の柱の陰に隠れるように佇んでいたエイデン様を見つけたのです。
「エイデン殿下!お願いがございますっ!!」
見つかるとは思っていなかったのか、驚きながらもエイデン様はわたくしを不安そうに見られました。
「お願い?」
ですが、不安なのはわたくしも同じです。
ここでエイデン様に断られたら、アディエル様をお支えするには遠くなります。
わたくしは祈りを込めるように、両手を握りしめ、エイデン様の目の前で跪きました。
「は?え?ええ??」
驚かせて申し訳ないと思いつつ、わたくしも後には引けません。
「わたくしを殿下の婚約者にお選びくださいませっ!!」
ギュッと固く目を閉じ、エイデン様のお言葉を待ちました。ですが、動く気配もなく、恐る恐る目を開けて見上げれば、真っ赤になって固まったエイデン様がいました。
「……」
「…あの…エイデン殿下?」
「はっ!いや、…あ、貴女はリネット・カラディル伯爵令嬢だったと記憶している…」
声をかけたわたくしに、ハッとした顔で確認するエイデン様。
「その…貴女は兄上の最下位の側妃として決定していたと思うのだが…」
その言葉に、カイエン様がアディエル様しか選ばないことをまだ知らされてなかったのだと理解しました。
「…先日。カイエン殿下より、側妃は一人も選ばないとのお言葉を皆様と伺っております…」
「……は?何それ、僕は聞いてない…。あぁっ!それであんなに周囲を囲まれたのか…」
いつもと違うご令嬢方に周りを囲まれて、首を傾げていらっしゃいましたものね。
「…ふうん。それで?貴女も兄上がダメだったから、僕狙いにしたの?」
「はあっ!?」
その言葉に思わず令嬢として、そぐわない声が出てしまいました。
「っ!?」
わたくしをあんな方々と同じに思われるなんて屈辱です。
「わたくし、エイデン殿下じゃなくとも相手は構わないのですよ!ただ、あの方に…アディエル様のお近くでお支えするには、最も近い場所が貴方だからお声かけしただけですものっ!!…あ…」
やってしまいました。不敬どころじゃありませんよね?
エイデン様がダメなら、弟君のダニエル様と交渉しなければなりません…。
「…ぁぁぁ………」
有り得ない失態に、わたくしは頭を抱えて座り込んでしまいました。
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