第4話


「…嬢。リネット・カラディル伯爵令嬢っ!!」


 絶望に打ちのめされていたわたくしの体を揺さぶり、わたくしの名を呼ばれていた方を見上げると、そこにはカイエン様がいらっしゃいました。


「……カイエン殿下…」


 いつの間にやら、他の皆様はお帰りになっていたようで、部屋にいたのはわたくし達と侍従の方。そして、護衛騎士の方々でした。


「君は最初から側妃となることが決まっていたのだから、別に連絡しても良かったのだが…「あんまりですわ…」」


 お話しているカイエン様のお言葉を遮ってしまいましたが、不敬と言われても構いません!


「わたくし…。わたくし、アディエル様をお支えする為に…。あの方にお仕えする為だけに、この五年間頑張ってきましたのにぃ……」


 わたくしの努力を無にされた悔しさから、思わず口にしてしまいました。


「……え?側妃になれないことより、君が傷ついてるのは、アディエルそっち?」


 わたくしの言葉に、一瞬ですがカイエン様はポカンと口を開かれました。


「当然ですわっ!アディエル様以外、お仕えする気なんてありませんものっ!!」


 そこから、初めてお見かけしたあの茶会での出来事。そこから、わたくしの思いの丈を全て、目の前のカイエン様にぶつけました。


「……ふむ。これは、拾い物かな?」


「ふえ?」


 いつまでも座り込んでいたわたくしは、にっこり笑って膝をついたカイエン様と視線が合いました。


「リネット・カラディル嬢。君はアディエルを支えたいんだね?」


「はい!」


 座り込んだままとはいえ、わたくしは背筋を伸ばしてそう答えました。


「では、私の提案を聞いてみないか?互いに利のあることだよ♪」


 差し出された手に手を乗せると、カイエン様はわたくしを立たせて、隣室へと招き入れられました。


 そこには二妃様がいらっしゃいました。


「っ!「ああ、挨拶は結構よぉ。隣にお座りなさいな、リネット♪」」


 慌ててしようとした挨拶を断られたばかりか、隣へ座るように言われました。


「…失礼いたします…」


 恐る恐る二妃様の隣に座れば、向かい側にカイエン様が座られました。


「さて。私の妃候補の面々が、選ばれないとなると、彼女達の次の相手は、誰がと思う?」


 にっこり笑って聞かれた言葉に、何故それを聞かれたのか分からぬままに、わたくしは考えを述べることにしました。


「…恐れながら、王籍から外れることになるグレイン殿下は選ばれないと思われます。ですので、第三王子のエイデン様かと…」


「うん、そうなると思うよ。実際、まだエイデンは決めかねてるんだ…」


 ですよね。条件良さそうなご令嬢は、皆様、カイエン様の候補になってましたもの。

 ですが、それがわたくしと何の関係があるのでしょうか?


「エイデンには将来的に私の補佐となってもらう。となれば当然、その妻となる者には、アディエルのが望ましい…」


「っ!?」


 そのお言葉に、カイエン様の言いたいことが分かりました。


「…貴女にその気があるのなら、エイデン様に選ばれなさいねぇ…」


 にっこりと隣で二妃様が仰いました。


「…あ、ありがとうございます!わたくし、頑張りますわっ!!」


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