第2話 先鋒戦①
白線で区切られた試合場に選手が足を踏み入れた瞬間、空気はピンと張り詰める。
第三北中学校の先鋒は
対する辻堂中学校の先鋒は
背丈は吉田よりも頭二つほど大きい。
両選手が開始線に並び、
「始めィ!」
主審の掛け声により、両選手は立ち上がり間合いを詰める。
一足一刀の間合いだ。
「イヤァァァッッ!」
「テヤァァ!」
切っ先が触れ合う。
吉田は間合いを図り、防具の向こうに光る栗林の目線から試合運びを推測する。
(まずいな・・・)
吉田は感じていた。
体格の差が大きいということは、腕や足の長さ、歩幅、何もかもが違うということだ。それはそのまま、自分の打突は届かず、相手の打突は自分に届いてしまうことを意味する。
栗林も同じことを考えているのだろう。
体格の有利不利は覆せないとでも言わんばかりに悠々と間合いを測り、攻めのタイミングを伺っていた。
勝つには攻めるしかない。
しかし、その一点において体格差というハンデはあまりに大きい。
(そんなことは知ってんだ・・・!)
吉田は部内でも小柄な方だったため、日頃の稽古で小柄なりの戦い方を模索していた。
―栗林が動く。
栗林にとって、最も狙い易いのは頭部…面である。
「面ンンン!!!」
竹刀の振りかぶりを最小限にして最速で繰り出されるその打突は、吉田の面を寸分違わず狙い撃つ。
すんでのところでそれを受け止める吉田。
大きく飛び退き、辛うじて間合いから離れる。
しかし栗林も間合いの有利は理解していた。
一度間合いを取られたからと言ってやすやすと逃がすほど温くは無い。
(退路がないなら必ず攻めてくる…。そこを狙い撃つ!)
そう考えた栗林は小手に狙いを定める。
栗林の視線がほんの一瞬、自らの小手に移ったのを吉田は見逃さなかった。
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