第2話 雨
「例の実験対象が脱走しました!!」
貞夫はそれを聞きすぐに仮眠室を出てその幹部と共にある場所に向かう、
「なぜ、マイクロチップは起動しなかったんだ!?」
「分かりません。急に奴が体内放射を起こしたせいか第一と第二のシステムが一斉にダウンしたんですよ!」
しばらく廊下を歩くと目の前に重層な扉がある、幹部は「ここです。」と言い。その扉を開けると中は多くの人たちであふれ変わっていた部屋だった。
そこには、たて一列になった会議用の椅子や長い机がある、その目の前には巨大なモニターがあった。
そのモニターに写してあったのは、研究所内の監視カメラの映像だった。ここは、もともと会議用の部屋だったが今になっては、〔研究内危機管理対策センター〕になり、研究所内のテロや事故などを想定して対策をする部屋でもある。
その中には迷彩柄の服を着た第二日本軍の幹部やここの研究員やいろんな人が集まっていた。
「状況は?」
「十分前に奴が突如、体内放射を起こし」
「それはさっき聞いた、ほかは?」
するとほかの幹部が「第二研究所のシステムの約七割が機能してません」
それを聞いた貞夫は表情を渋らせる。
「奴はまだ研究室内にいるのか?」
「わかりません、奴の周囲の監視カメラは全てエラーをおこしてい、あ!」
突然、幹部が声を上げた。
「ただ今監視カメラに奴が写りました。」
「何?!」
「これを見てください。」
その幹部は巨大モニターに端末を動かし無数にある監視カメラ内の一つの映像をモニターの画面に映した。そこに写っていたのは、ゆっくりと一歩一歩歩く竜介の姿だった。
その竜介の体は左腕が怪獣の腕で背中には鋭く尖った背びれがあり腰に掛けて尻尾が生えてい「クソ、」貞夫は、怒りをあわらにするかのように怒鳴る。それを聞いた幹部たちは、びっくりしたかのように隆二に目を向ける、貞夫は「すまない」と幹部たちに謝る。
(だが厄介だな。七割のシステムが起動しなかったら奴が外に出るのも時間の問題か)
貞夫はまた渋る。貞夫は、宮木に目を向けた。宮木信夫、アメリカによって組織された「第二自衛隊」の大佐である。そのためか自衛隊がよく着ている緑色の制服を着用しその制服には階級を示す金色のバッチが何本と付けられている。
「もうとっくに軍に出動命令をだした、だがここに到着するのは、あと三十分は掛かるって話だ。」
「三十分もかかるのか。・・・それまでに奴が外に出ないことを祈るしかないか。」
貞夫にとって三十分はとても長いことだった、システムの七割が起動していない研究所はただの無力同然に過ぎないからだ。そして貞夫はある判断を下すことになる。
「第二研究所の生き残ってる全てのゲートを閉めろ」
それを聞いた幹部は一瞬同様が走った。
「貞夫博士、まさか!」
「あぁそのまさかだ」
「待ってください!まだ逃げ遅れた人がいるのですよ!?」
「あぁ!そんなことはわかってる!だが、奴を外に出したらより犠牲者がでるかもしれないんだぞ!」
貞夫は声が荒げるかのようにそう発言する。すると貞夫は横にあるゲートを閉めさせるためにあるスイッチに目をつける、そのスイッチは赤くて四角く周りはガラスのようなものがありその下に鍵穴がある。
その鍵を持っていた貞夫は鍵を内ポケットから取り出し右手に持ったまま鍵穴に手を伸ばした。その時、横にいた隆二が貞夫の手を掴む。
「何をする?」
「待ってください・・まだ第一には少数ですが人がいます」
隆二がもっていたノートパソコンの画面を貞夫に見せた。
そこに写っていたのは、数人の研究員の姿だった、道に迷っているのか、必死に出口を探している。
「わかりましたか・・・生存者がいます・・・」
隆二は貞夫の腕を強く掴む。
「隆二、お前は小さい頃から変わらないな・・。この正義感は、いいと思うが・・・奴が外に出れば新たな人類の脅威となりかねない・・・・放せ隆二・・・・この少数の研究員より外に出して多くの死者を出すよりはマシだろう。私は・・・・あいつの息子を人類の脅威にはしたくない。」
隆二が掴んでいた手の力が抜ける、貞夫の言ってることはある程度正しかった。
「わかってくれたようだな。」
貞夫は、パソコンに写る少数の研究員を見て
「すまない」
と小さく謝る貞夫は鍵穴に鍵を入れると左に回すそして鍵を取り外すと、ガチャ、と言う音が聞こえた。これはガラスのロックが解除されたからである。貞夫はガラスを上に開くと人差し指でスイッチを押した。すると、生き残った研究内のシステムが
起動し、第一研究所のゲートが全て閉まる。
「とりあえずこれで時間は稼げる・・・・宮木大佐・・」
「あと20分で特生が到着するとのことだ。」
「あれは、なんとしてでも生け捕りにしてほしい、頼めますか?」
すると宮木は渋々そうに
「それは、分からない・・状況によるな。」
一方竜介は何かに引き付けられてるかのように進む。竜介が目指していたのは、
第二研究所だ。
しばらく歩いていると突然、竜介の前と後ろのゲートが閉まりはじめた。
そして竜介は閉じ込められるかのように囲まれる。
「クソッ、閉じ込められたか・・・」
いかにも重層なシャッターで両側を閉じ込められた竜介だったが、竜介はあることに気づく。
さっきの力さえ使えば――竜介は独房のドアを破壊した事を思い出す。
突然、左の手の平が青白く発光して扉に触れた、いや、実質的に触れる直前から扉はオレンジ色に融解していた。その勢いで扉は破壊できた。
(もしこの力を使えば、容易にシャッターを破壊できるのではないか?でも、あの力は突然みなぎってきた、やるには原理が分からない)
だがそれ以外に打開策など無かった竜介は、床に膝を付くと、先ほどの感覚を思い出す。すると段々と背中が熱くなって行く。
(あの感覚だ!あの時も体内が突然熱くなって・・・)
竜介の思い通りその熱は背中から広がるように全身に広がる。すると、背中に伸びた背鰭が青白く発光し始めた。
竜介はそのエネルギーを背鰭から連なるように伸びた尾の先端までに神経を集中させた。
ドゥン・・・ドゥン・・・・ドゥン・・・・・・ドゥン・・・ドゥン・・ドゥンドゥン・・・
と、まるで心臓の鼓動かのような音を立てながら尻尾にも連なった小さな背びれも青白くなり竜介はその尻尾を高く上げた。
すると尻尾の全体が青白く発光し始めたのだ。
(これなら!!!)
竜介はその眩いほど青白く発光した尾をまさに鞭のように目の前に閉じている重層なシャッターに向かってその尾を勢いよく打ち当てた。
いや、性格には打ち当てたのではない、尾がシャッターに触れる直前、シャッターはドアを破壊した時と同じようにオレンジ色にドロドロと融解していき。直後、激しく爆散。まさに刹那、激しい轟音と火花が舞い、一瞬にしてあたり一面が煙に覆われた。煙がだんだんと消えていくと竜介の前にあったシャッターは溶けるかのように巨大な穴が開いている。
竜介はフゥ、と安心したかのように息を付き第二研究所に進んでいった。
「ここか?」
竜介はゆっくりと第二研究所の中に入っていった、その第二研究所の中は、逃げ跡を残したままの人気の無い無人な場所だった。
竜介は迷うことなく第二研究所の中を歩いていった。
しばらくして、竜介がたどり着いたのは、重層な扉の前だった。竜介は、その扉を開けようとする。
なんと、その扉は重層にもかかわらず簡単に開けることが出来た。
どうやらセキュリティがエラーを起こしたらしい。
その扉を開けると、縦一列に伸びる薄暗い廊下があった。
竜介はその廊下を迷うことなく進んだ、竜介には、恐怖感と孤独感という感情をなくしていた。
その細長い廊下をしばらく歩き、竜介は、そこで止まる。
竜介は左側を向いた。
「俺を呼んでいるのは、こいつ・・・なのか?」
それは、分厚い防弾ガラスの奥にあった一つの剣だった。竜介は、その防弾ガラスを左手で殴り壊す、その防弾ガラスは、木端微塵に割れガラスの破片は屋内へと散らばる。竜介は、その剣 が入っている部屋に入っていった。竜介はその剣の前に立つと手を伸ばし剣に手を触れた瞬間、ものすごい目眩が襲う、だが、その目眩は一瞬でなくなった。すると、竜介の真後ろで鉄のような音がする。竜介は恐る恐る振り向くと、迷彩柄の服を着てマスクのようなものを被り、両手に89式小銃をこちらに向けた、4~5人の人たちがいた。竜介が振り向いてその数秒後、
「射てぇぇぇぇ!」
瞬間、はげしい発砲音が至どころに鳴り響く、竜介は、両腕で顔を隠すように
クロスさせる、無数の銃弾が竜介の体一面に当たる、竜介は歯をきしみながらも、必死に耐える。
「撃ち方やめ!」
迷彩服の一人が左手をグーにして腕を上げる。
目の前は、激しく銃を撃ったせいで煙が立ちこみ何も見えない状況だった。
「隊長、殺りましたか?」
「目の前が煙でわからない・・・だが、あれほどの銃弾を食らわせたんださすがに無傷ではないはず、」
すると、鉄の何かが床に落ちる音がした。
「なんだ?」
「おいおいまさか、」
鉄の何かを床に引きずらせるような音がどんどん迫る煙はだんだんと薄れていく
すると出てきたのは、両手に剣を持ちその刃の剣先を床に付け引きずり火花を散らしながら歩いてる竜介の姿だった。すると隊員たちが銃を向けたその時、ものすごい速度で隊員たちのふところに入り込み両手に持っていた剣を隊員たちに目掛け横に振りるった。隊員たちは斬られた衝撃で後ろの壁まで吹き飛ばされる、
4人がその衝撃で即死するも「ぐは!」隊員の一人が吐血する。まだ微かに息をしていた、だが竜介は容赦なくその横たわっている隊員の胸を突き刺しとどめを刺した。
竜介はこの第二研究所から出ようとさっき入ったところを折り返した。あの重層な扉を開け外に出ると、多数の隊員が小銃をもっている隊員が竜介に狙いをすませ待ち伏せていた。
竜介は左手に持った剣を隊員たちの前で構える。
「撃てええええええぇぇぇぇ」
そういうと待ち伏せていた多数の隊員たちが竜介を狙い一斉に撃ち始めた。
無数の弾が一直線に竜介に命中する。だが、傷跡どころか掠り傷一つも付かない。
弾は竜介の皮膚に当たった瞬間に弾いてたのだ。
すると竜介は、一気に隊員たちのところへ突っ走る何発のも銃弾が竜介の脇腹、膝、左腕、など各所に当たるが竜介には、その痛みすらも感じていなかった。
隊員たちの目の前に差し掛かると竜介は跳躍し真下いる部隊のど真ん中いる隊員たち目掛け勢いよく顔を踏みつけた。その瞬間、あまりの威力に竜介の周囲の床に亀裂が入った。隊員の顔はぐちゃぐちゃになり血肉が散らばる。隊員たちが竜介に向け89式を発砲しようとした時、竜介は長い尻尾を全方位のいた隊員達目掛け円を描くように振り回し隊員達をなぎ払った。
すると、真横にいた、複数の隊員が竜介に向け小銃を発砲するが竜介に傷は付かず、
その撃ってきた隊員を両手で持っていた剣で薙ぎ払うかのように斬りつけ、その後竜介の後ろに回りこんだ隊員が小銃で再び発砲し竜介の背中から連なるように生えた背鰭とその付け根にも命中、だが背鰭にも皹は入らない。
竜介は再び持っていた剣で後ろに回りこんだ隊員を薙ぎ払った。
生き残った隊員たちは竜介の目の前で射撃の陣形を作り一斉に射撃、あまりの射撃で動きが牽制される、だが竜介は左腕で一人の隊員を鷲掴みしそのまま前で陣形をとっていた隊員達目掛け投げ飛ばしたのだ。
投げ飛ばされた屍は数人の隊員にあたり陣形が大きく崩れた。
それを見逃さなかった竜介は再び攻撃を仕掛けた。
その瞬間、隊員の一人がなんと肩に担いでいた無反動砲を竜介に向け発射、
プシュー、という音を立てながら竜介に近づいてくる、すると竜介は、左手を前にかざしその無反動砲の弾を左手で掴むとそのまま握り潰し弾は爆発、オレンジ色の火花と黒煙が竜介を覆う、黒煙に包まれた竜介を隊員からは姿が見えない。隊員たちはその黒煙の中を覗いていると、その黒煙が一瞬青白く発光する。ドゥン、という音を立てながら、間を空けて続けて発光する。それはまるで心臓の鼓動かのようにドゥンッドゥンッドゥン、と早くなる、そして、黒煙はだんだんと薄れていった、その黒煙の中から現れたのは、無傷の竜介の姿だった。竜介は背中に生えた背びれを発光させ隊員たちの方を向くと突如として竜介の体一面が眩く発光して「体内放射」を炸裂した。一瞬であたり一面は一気に火の海となった。隊員達の断末魔が響く、その轟音と断末魔は、だんだんと静まってゆき気づいたら何も聞こえなくなった。竜介の周りは真っ黒く焼き焦げそこに焼き焦げた隊員達の亡骸が残っている。
すると、左から照りつけるような光が竜介を包んだ、竜介は左側を向くと、そこには、体内放射で焼き焦げるかのように円状に剥がれ落ちた第二研究所の重層の壁があった、そこから太陽の光が輝いていた。竜介はその剥がれ落ちた壁の切れ端に立つとそこには、あたり一面に森林があり黒い雲の間を太陽が差し込んでいる、すると冷気が竜介の体に触れる。
し高さは100メートル以上もある、普通の人間だったら飛び降りた衝撃で即死だろう。今の竜介はもう人間でもない怪獣だった。それに掛けるしかなかった、そしてほかにこの研究所を脱する方法がこれしかなかったから。早くしなければまた敵が来るに違いない。竜介は、意を決しその円状に剥がれ落ちた壁を後ずさりし勢いを付け右手に剣をもったままその円状に剥がれ落ちた壁に突っ走る、ふと、竜介は思った。
(これで死んだらどうしよう、俺の体が落ちた衝撃に耐え切れずグチャグチャになってしまって、死んでしまったら・・・、っだが、マシなのかもしれない・・・こんな地獄にいるよりは、あの世の地獄にいたほうがマシなのかもしれない・・・)
竜介は、そっと笑みを浮かべると足がフワッと浮いた感覚があった下を見ると、まるで中に浮いてるかのようにゆっくりと下に落ちている、気圧が竜介に覆いかぶさる、竜介は、ふと目を瞑り、もう一度その目を開けた。
その目の前の光景は、森林が真下にあり黒い雲の隙間から少しづつ青空と太陽が照りつけている。ものすごいスピードで落ちていく竜介、このままのスピードでは・・・竜介は、なんとか減速しようと左の真横にあった研究所の壁に左腕の爪を壁に突っ込んだ、すると、ギいー、という鉄と爪が擦れる嫌な音とともに火花が散る、するとだんだんと落ちるスピードがわずかにゆっくりになる、そしてそのまま、地面まで残り五メートルのところで壁から爪を抜き、そのまま森林の地面に着地した。と同時に竜介を覆うかのように砂埃が舞う。竜介の落ちた衝撃で出来たのだろう。すると竜介は自分の体を見始める、落ちた衝撃で怪我はしてないか確かめていた、しかし、竜介の右手の擦り傷以外の怪我は付いていなかった。竜介はそっとため息を付いた。
あの高さから落ちて死ななかったことに少し安心していた。砂埃が薄れると竜介を囲むかのようにあたり一面に木が立ち並んでいた、木の葉の上には小さな水玉が出来ている。竜介は裸足だったので地面の感触が湿っていることに気づいた、どうやら雨が止んだあとのようだと竜介は悟った。
竜介はそのまま森林の中に突っ走っていった。
続く
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