第47話 記憶

(この人は誰だ?

 聖女アリーシアか......)


 凛としたその女性はマンティコアに語りかける。


「いいですか。

 その額のソースソウルはあの者には渡してはなりません......

 必ず守りなさい」


(あの宝玉! ソースソウルだったのか!)


「御意」


 女性はそう答えるマンティコアに優しく触れる。


「ごめんなさい。

 こんなことのために産み出してしまって、ですがこれを奪われるわけにはいかないのです。

 許してね」


 その時、女性が後ろをふりかえる。


「姿を現しなさい!」


 何もなかった空間に人が姿を現した。


「......この隠蔽の魔法を見破るとは、さすが元精霊エレメンタル


 そう杖を持った白髪の老人はいった。


(このじいさんの持ってる杖!

 ソートスタッフ!!)


「やはりあなたはこのソースソウルを手に入れるつもりですか」


「ええ、それとこのソートスタッフ、封印魔石シールストーンがあれば私の望みが叶いますから」


 そう老人は冷たく笑う。


精霊エレメンタルもあなたも自らの願いで世界に争いもたらすなんて、愚かなこと」


「人の欲とは限りないもの......

 生きている限り続く、いえ生きるために必要なものなのですよ」


「マンティコア! 

 いきますよ!」


 女性の一声でその場はみたこともない強大な魔法の応酬が繰り返される。

 そこで記憶はなくなった。

 目が覚めると、前でザインたちがマンティコアをみている。


「おい、ユーヤ、マンティコアを操れたか......」


「動かないわ......」


「大丈夫かな」  


 マンティコアがゆっくり動く。

 ザインたちが武器を構える。


「......大丈夫......

 マンティコアなら心が伝わった」


 オレが後ろから話すとみんなふりかえる。

 

 

 オレたちはマンティコアに話を聞いた。


「それで、あの人は何者なんだ?」


「わからぬ......

 我はあの方に産み出していただいたことしか知らぬ。

 あの老人に重傷は負わせたが逃げられたのだ」


 マンティコアはそういった。


「その話しからだと女性はアリーシアでそのじいさんは杖の持ち主?

 その杖の持ち主は魔導王ザハーストラだろ?」


 ザインは首をかしげる。


「まあ、元精霊エレメンタルって言われてるみたいたけど。

 だとしたら、なんでザハーストラとアリーシアが戦ってるの?」

 

 リビィは腕ぐみしていった。


「わからないことばかりね......

 ただ、その話しからだと、この宝玉がソースソウルということは間違いないわね」

 

 マンティコアの額にある宝玉をみてルイエはいった。


「まあ、一応調べたし帰るとするか」


 オレたちが帰ろうとすると、マンティコアがおもむろに立ち上がる。


「待つのだ......

 そこに何者かがいる......

 この者知っている」


 そういってマンティコアがそこに尾から光の弾を撃ちだした。

 なにもない空間で弾かれる。

 すると、そこから黒いローブの人物が突然現れた。 

 

「リビィ! 射て!」


 オレがリビィにいうより早くローブの人物は懐から光る赤い宝石を出した。


「あれは!? まさか!!」


「だめだ魔法が使えない!

 普通の矢で!」


 リビィが弓を引くと、ローブの人物は呪文をとなえた。

 とっさにオレは杖に意識を集中し、ローブの人物の魔力マナに同化しようとした。


「無理だ......

 お前の魔力マナはソースソウルに大半吸われた......

 かつてのわたしのようにな」


 オレは、低い男の声を聞きながら意識を失いそうになるのを耐える。

 みんなが倒れていきマンティコアは石像に戻る。

 

「くっ......」


「やはり、魔法耐性があるな......

 この闇魔法ダークマジックに耐えるとはな......」

 

(なんだこいつオレを知ってる......

 ......いや、今はこの状況を何とかしないと)


「お前それは封印魔石シールストーンか......」

 

「それがどうかしたか......

 まあその体ではうまく動けまい」  


 ローブの男はオレから杖を奪うと、マンティコアに近づき額から宝玉をとろうと手を伸ばす。

 その瞬間、バチィ、と大きな音がして男の手首が焼け焦げる。


「......やはり弾かれる......

 封印魔石シールストーンでは封じられないか......

 仕方ない」


 男はそういうとみんなに向けて呪文を唱える。


「や、やめろ......」


 みんなを黒い影が包むと体になにかしら紋様が浮かび上がる。


「この者たちに呪魔法カースマジックをかけた。

 この呪われし影は徐々に進行し、この者たちは明日で死に至る......」


「なっ!」


「救いたくばこのソースソウルを持ち北にあるレクリアスの塔へとやってこい......

 あの娘を使いに寄越せ......

 大勢できてもよい......

 が骸の山ができるだけだがな」  


 

 その声を聴きながらオレは意識を失った。

 

 

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