第48話 親父の手紙

「う、ここは......

 そうだ!」


 目が覚めるとローブの男の姿はなく、みんながまだ倒れている。

 オレは魔法を設置して、みんなを起こし今さっき起きたことを話す。


「くそ! そんなことがあったのか!」


「これかな。

 この黒い模様少しずつ拡がってる......」


「ええ、明日私たちは死ぬ。

 これは呪魔法カースマジック......

 古代の魔法よ......

 エルフの国に伝わってるわ」

 

 腕にある黒い紋様をみてルイエはいう。


「そうだ......

 ソースソウルをレクリアスの塔に持って行かなければみんな死ぬ」


 石化から解けたマンティコアをみた。


「すまないが、そのソースソウルを預からなければならない。

 もう魔法を設置した。

 戦うか」


 マンティコアは目を一度閉じると、ゆっくりと目を開けた。


「......もって行くがいい」


「本当か!? お前それを守ってるんだろ!

 いいのか!」


 ザインが驚いていう。


「......我にもわからない。

 ただ、お前たちに渡す方がよいと何故か思うのだ......」


 そうマンティコアが静かにいった。


「そうか助かる。

 ......あとはあのローブの男と戦えるかだな......」


「あんな強力な魔法は初めてだっだよ......」


 リビィが自信なさげにいう。


「あれは、いにしえの闇魔法......

 いまは使い手もほぼいないわ」


「ユーヤの魔障術オブスタクルで魔法を防げばどうだ?」


 ザインがそう提案する。


「だめだろうな。

 封印魔石シールストーンで無効化される。

 ルイエ、封印魔石シールストーンに何か弱点はないのか」


「一度封印を使えばすぐには使えないはず。

 あと効果範囲があるの、視界にうつる範囲」


「すぐ使えない......

 視界にうつる範囲か......」


「だから明日にしたのかもね......

 魔法を封じられたら、またあの意識を失う闇魔法を使われるね」


 レビィが思い出したようにそういった。


「......なんとかそれは考えよう......

 まず帰って魔力マナをかい......ふく......」


 そう言おうとしてオレは意識を失った。

 

    

 目が覚めると寮に戻っていた。


「ここは......」


「お、起きたか。

 魔力マナ不足で気絶したんだ。

 ソースソウルに魔力マナを吸い取られたようだな。

 まだ寝てろ。

 魔力マナ回復にはもう少しかかる」  


 ザインがそういって安心した顔をした。


「そうか......

 ソースソウルに魔力マナが奪われたとかあのローブの

奴もいってたからな......

 リビィとルイエは......」


「ビオリムさんとフェルスに話を伝えにいった。

 学園やギルドにはどうする」

 

「いや、大勢はやめた方がいいだろう......

 多分何らかの罠を仕掛けているんだろうしな」


「まあ、そうだろうな......

 俺達だけでやるしかないか」


「ああ、そうだ......」


 オレはそういうとまた眠った。


 その夜目が覚めるとオレは親父にメールをした。

 今までの事情をなるだけ簡潔に伝える。

 それはもう会えないと思ったからだ。 

 メールを送るとオレはある場所に向かった。


 

「呼び出すなんて私に何か用ですか」


 佐藤はそう整った顔に笑みを浮かべていった。

 オレは今の状況を話した。


「......それは本当ですか」


「ええ」


 オレは佐藤に拡がっていく黒い紋様を見せた。


「......確かに何か厄介なことになっているようだ。

 お父さんには......」


「メールを送りました。

 一応届いてない可能性も考えて佐藤さんにも伝えておこうと」


「そうですか......

 まさか行かないでしょう?」 


「......いえ、行きます」


「止めてください!

 私の立場からも行くことには反対です。

 君がそこまでする必要はない!」


 佐藤は語気強くそういう。

 

「いいえ、この世界には大切なものができました......

 敵が何を考えているかわからないが、この世界に害をなすはず。

 オレも彼らを助けたい」


 そういうと佐藤は眉を潜め懐から手紙を一枚出して、テーブルの上においた。


「これはあなたのお父さんからの手紙です。

 あなたがもし危険なことをする時、止めるようにとこれを私に託した。

 これをみて考えてください」


 そういうと席を立ち佐藤は去った。

 その手紙にはこう書いてあった。


「俺はお前を信じているから、お前も俺を信じろ」と。


 オレは手紙を持ち寮に帰った。



 少しだけ揺らいでいた覚悟が決まった。

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