第41話 地下迷宮

 王宮の中に入ったオレたちは縛ったヒモを引きながらフェルスの後についていく。


「簡単に入れたね」  


「もう勝ったと思ったんだろ。

 だから気が緩んだんだ」

  

 オレがリビィにそういう。


「ああ、あのおっさんの勝ち誇った顔からそうだろうな」


 ザインが腹立たしげにいった。


「しっ! この下が地下迷宮の扉だ」   


 王宮の奥にあった階段を下に降りると、大きな扉があった。

 オレはみんなに渡してあった投影ミラージュのの紋様サインの魔法石を発動させた。


「おっ! 姿が見える」


 ザインとリビィが驚いている。


「ああ、迷宮なら姿が見えないと危険だからな。

 姿を映す魔法だよ。

 で、これが地下迷宮の扉か......

 誰もいないな」 

 

「魔法で封印されているからな」 


 フェルスがいう。


「どうすんだ! 

 開けられないぞ!」

 

「落ち着けザイン、オレが開けられる」


 そういってフェルスは扉の前に立つ。

 そして中央にある青い宝石に何やら呪文を唱えた。

 すると、いつの間にか扉の内側にいた。

 目の前は闇が広がる。

 オレは杖に明かりの魔法を込めると、少しさきが見える。

 

「ここは魔法で中に入れるようになっている。

 知るものは少ないがな」


「何でそれをフェルスが知ってるの?」


「それは......」


「隠さなくていい、ルイーブさんから聞いた」


 オレがいうと、フェルスは一瞬驚いた顔をした。


「そうか......

 そうオレは前の近衛騎士団長の息子、フェアル。

 ここのことは父から聞いててな」 

 

「別に隠すことじゃないだろ」


 ザインがのほほんと聞いた。


「......オレの父は罪人だったからな」


「それで隠して、まあ親とフェルスは違うじゃない」


 リビィがそうきいた。


「王殺し......だからか」 


 オレがそういうと、フェルスはうなづいた。


「だけどそれは嘘なんだろ。

 ルイーブさんはそういってたぞ」


「ああ、ルイーブから聞いたんだな。

 ......だが王は死んだのは事実だ」


「お父さんのために、ここまで女王やルイエに協力したんだね」


 リビィがいうと、フェルスはうなづいた。


「近衛騎士団団長としての責務を果たせなかった父の無念を果たそうと思ってな......」  


「おい! 何かこっちに来る!!」


 ザインがそう叫んだ。

 オレたちは構える。

 明かりの奥に光るものが見える。

 オレが杖を掲げると見えたのは人と同じくらいの巨大なアリだった。


「アーマーアントだ!!

 硬い身体をもつ気を付けろ!」


 フェルスが叫んだ。


「まかせろ!」


 ザインが槍で胴体を両断した。

 アーマーアントは斬られてもピクピクと足を動かしている。


「すごいなザイン! 

 あの鉄のように硬い身体を切り裂くなんて!」


「ああ、ユーヤにもらった魔法石のおかげだ」  


 なあ、とザインがオレにいった。


「まあ、ザインの腕力がないとそのでかい槍の振動に耐えられないだろ。

 まだ来るぞ!」


「任せて!」


 リビィが射ると矢に黒い雲がまといアーマーアントを包んだ。

 そして雷鳴と光が起こるとアーマーアントは倒れた。


「その弓! そんな使い方もできるのか!

 アーマーアントはベテラン冒険者でも苦戦するというのに......

 三人とも冒険者としても優秀だな」


 フェルスはそう驚いていった。

 それからオレたちはモンスターを倒しながら迷宮奥へと向かう。


「なんでラハラールはこんなところに女王を幽閉したんだ」


「元々この迷宮は古代のエルフたちの魔法実験場だったんだ。

 かつて世界の種族たちが戦争していたときのな。

 ここのモンスターたちはそれの成れの果てさ。

 ここなら女王の味方も探れないし、モンスターに始末させられると考えたのかもしれん」 


「なるほど......」


 その時。


「なにか来る!?」


 ザインの声に反応してフェルスが剣を暗闇に振るう。


 キィン!


 通路に高い金属音が響いた。

 

「フェルスまて!!」


 オレはフェルスを止め杖を掲げる。

 光に照らされた先に剣を持つエルフがいた。


「キルフィナさん!」


 そこにいたのは近衛騎士のキルフィナさんだった。


「なぜ私の名を知っている!?

 それに人間ヒューマン、ホビット、リザードマンいったいお前たちは...... 

 牢兵のフェルス、貴様ラハラールの手の者ではないのか」 


「お待ちなさい。 

 キルフィナ」



 そういって前に出てきたのは女王、ミレイユだった。


 

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