第40話 奪還作戦

 オレは覚えたての魔法を設置した。

 すごい勢いで茂みをなぎ倒してラージスパイダーが近づいてくる。


反発リパルション発動!!」  


 その瞬間ラージスパイダーほ吹き飛び仰向けになる。

 戻ろうと動くと所にオレはソートスタッフに魔力を集中した。


(よし魔力マナに意識が移った!)


 魔力マナのまま、ラージスパイダーに近づくと魔力マナと同化した。


(くっ! なんだこれは!? 感情が読めない!

 そうか! サンダークラウドイーグルほどの知能がないんだ! 

 意識が飛びそうだ!

 抑えろ! 気持ちを落ち着けるんだ!)


 暴走しそうな意識を何とかコントロールした。

 そしてゆっくりと目を開ける。

 ぼんやりと周囲が見えてくる。

 そこに倒れたオレがいた。


(どうやら成功したみたいだな......)


 オレはラージスパイダーの意識を操ると、自分の体を背にのせ森を出た。

 そこでは剣を抜いたルイーブさんが構えて待っていた。

 オレは刺激しないよう背にのせたオレをゆっくり下ろす。


「本当にユーヤどの......

 なのですか......」


 オレはゆっくり前肢を上下させる。


「すごい......

 まさか、本当に操ってしまえるとは......

 いや! では参りましょう!」


 ルイーブさんは剣をしまい、オレの体を馬車にのせる。

 クモの体になったオレはゆっくりとホロのなかに体を折り畳んで乗った。

 それから走らせた馬車がジルエストさんの屋敷が見える裏道につくと、ルイーブさんは馬車をおりた。


「では私はフェルスさまにこの事を伝えて参りますから、合図があれば手はず通りにお願いします」


 そういってオレの体を背負い去る。

 しばらくして空に光の矢が見えた。


(合図だ!)


 オレはホロから出ると屋敷の方目指して走る。

 屋敷につくと空をみて慌てていたエルフたちが、こちらをみてさらに驚いている。


「なんだ!? 

 何でこんなところにラージスパイダーがいる!?

 全員武器を構えろ!」


「うわあああ!」


 オレは突っ込んでエルフたちをなぎ倒した。


(何とか殺さないようにしないと)


 だが、近衛騎士団だけあってすぐ体制をたて直して反撃してくる。


(とにかく時間を稼がないと!

 ジルエストさんごめん!)


 オレは屋敷の周りを回りを壊しながらエルフたちを引き寄せる。


(まだか......

 かなりダメージを受けた、このままじゃ......)


 その時屋敷から魔法の矢が放たれる。


(よし! きた!)


 オレは意識をクモから離す、すると意識が薄れていった。

 


 目が覚めると、ベッドの横にルイエがいて手を握っていた。


「よかったユーヤ......」


「久しぶり元気だったか......」


「ふう、無茶するな。

 ラージスパイダーに乗り移るなんて」


「そうだよユーヤ、二日も意識がなかったんだよ」


 ザインとリビィが怒っていった。


「ああ、すまん。

 二日もか、もうルイエがいないことは伝わってるよな」


「ああ、町中捜索隊が出てルイーブの家も危ないから、教会にかくまってもらっている」


 フェルスが腕を組みながらそういった。


「そうか、で女王はどこにいるかわかったのか」


「ええ、おそらくは王宮の地下迷宮に監禁されたと思います。

 外に出せば逃げられましょうからな」


 そうジルエストさんが答える。


「私も入ったことがないけれど、あそこには強いモンスターもいて封印されてたから、多分そうだわ」 


「じゃあまた、王宮に潜入しないといけないな」


 オレがいうと、フェルスがうなづく。


「だが、門は固く閉ざされている。

 中にはいる方法がない......」


 沈黙がつづく。


「私が出頭するわ」


 覚悟を決めたようにルイエがそういった。


「いけませんルイエさま!

 あなたは捕らえられたらすぐ処刑もあり得ますよ!」


 ルイーブさんはそういって止めた。


「ですが、それしか姉を救う方法はありません。

 ですがラハラールとはいえすぐは殺せないでしょう。

 少なくとも姉が死ぬのを確認するまでは......」


「あなたの覚悟は尊重しましょう。

 しかし、もし女王が亡くなっていて、あなたさまが死ねばこの国はやつの、ラハラールのものとなる...... 

 一度あなただけでも国外に出た方がいい。

 ここはご自重なさってください」


 フェルスはいつになくきつくいい放つ。


「あなたフェルスといいましたか......

 この国はもうあきらめてて私だけでもと思っていってくださってるのですね。

 でも私が姿を消したことで、もう国境全てに国のほとんどの兵士が集結しているはずです。

 とても国外には逃げられないでしょう」

 

「それは......」


 フェルスは口ごもる。


「私も一緒に参ります」


 そうジルエストさんがそういうとルイエはうなづいた。


「......仕方ない......

 今は女王を助けるのがさきだ。

 ルイエに門を開けてもらい、オレたちは王宮の地下迷宮から女王を救う。

 そうすればラハラールを追い詰めらるはずだ」


「だな」


「でも、その場所はわかるの?」


 リビィがきいた。


「フェルスわかるか......」


「ああ、知っている......」 


 オレの問いにフェルスは静かに答えた。

 

 その日オレたちは夜のうちに王宮に向かう。

 

 王宮の門の前に馬車を止める。

 ルイエとジルエストさんは馬車から降りた。

 オレたちも《見えざるもの》を使い馬車からおりる。

 王宮の門兵は驚き中に何事か話すと、門が開いて中から兵士たちとラハラールが現れた。


「これは......

 まさかあなたから姿を現すとは、意外ですな。

 観念したということですかな」


 ラハラールは一瞬眉を潜めた。


「なにをいっているのです。

 私はラージスパイダーから逃げただけのこと......

 あれもあなたの放った刺客ですか」   


「まさか......

 まあいいでしょう。

 無駄に兵を国境に置く必要もなかったようですね。

 さあさこちらへ。

 あなたたちはこの王宮で監視下におかせていただきます。

 重罪人としてですが」


「姉は......

 女王はどこなのです!

 会わせなさい!」


 ルイエが語気を強めてとうと、ラハラールは嫌な笑みを浮かべている。

 

「会えますよ。

 いずれね......」


 そういって兵士たちにルイエたちを連行させた。

 


 オレたちはその隙をついて門の中に入る。

 

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