第37話 ポムポム亭
目が覚める。
「イテテ、オレまでしびれてるな......」
その時影がオレにかぶさる。
見ると目の前にサンダークラウドイーグルが立っている。
(ヤバッ......いや)
サンダークラウドイーグルは何もせずこちらをじっと見ている。
(そういえば......
ソートスタッフで意識にはいったとき、何かサンダークラウドイーグルの気持ちが流れてきたような気がした。
あれは心配する気持ち......
そして怒り......
ということは、こちらの気持ちも伝わったってことか)
オレは体をずらして落ちているナイフを拾うと縄をきりサンダークラウドイーグルに近づくと恐る恐る手を出す。
すると、サンダークラウドイーグルは目をつぶり、体をさわらせてくれた。
「やはり、気持ちが伝わったか」
「う、う」
ザインとリビィが目を覚ました。
「大丈夫か、二人とも」
「ああ、なんとかな」
「うん、でもなんだが体がしびれてるような......
あっ! 髪の毛がちりちりになってる!!」
「ぎゃははは! リビィなんだその髪! えっ......」
「笑わないでよ!
ってどうしたのザイン黙って......」
二人はサンダークラウドイーグルをみて声も出ない。
「大丈夫だ。
ほら」
オレが触ると、二人は驚いている。
「な、どういうことだ!?」
「意味がわかんないよ!」
オレは二人の縄を切りながら、あの時起こったことを話した。
「なるほどね。
その杖でそんなことが......」
「お前ってほんとワケわかんないやつだな。
だが助かった......
いや落雷くらったな遠かったから死ななかったけど」
リビィとザインがそういった。
「それは悪かった。
で、サンダークラウドイーグルのヒナを元の場所に戻したいんだ」
「そうだな」
「うん。
取りあえずこいつらは縛っておいて、先にヒナを山の奥まで連れていこう」
オレたちはヒナを巣ごと抱えると男たちの荷馬車で山に向かった。
サンダークラウドイーグルは信頼しているのか空を飛び、高い崖の上で旋回する。
「どうやらここが元の巣みたい」
「崖だな」
「オレがいこう」
オレはヒナと巣を落ちないよう背負うと、
「ここでいいか」
すると、旋回していたサンダークラウドイーグルが降りてきてヒナに顔を寄せている。
オレはそれを見ると降りて二人と馬車に乗る。
するとサンダークラウドイーグルが鳴いた。
「ユーヤほら!」
リビィにいわれて見ると空からヒラヒラと大きな羽が一本落ちてきた。
「感謝の印だな」
ザインがそういって取ったそれをオレに渡した。
「それはサンダークラウドイーグルの一本だけある羽、
それを使った弓は雲を操れるんだって、父さんから聞いたことがある!」
「じゃあこれでリビィは弓をつくれよ」
「えっ! いいの!」
「ああ、オレは使いようがないからな」
「ありがとー! よし帰ってビオリムさんにつくってもらおう!」
オレたちは捕らえた密猟者たちを町までつれて帰った。
密猟者たちとサンダークラウドイーグルが山に帰ったことを町のみんなに伝えると、オレたちはリビィの家に帰りその日過ごす。
次の日、ポムじいさんの店に行くと喜んでくれた。
「聞いたよリビィ!
お前さんたちが、サンダークラウドイーグルを山に返してくれたんだってな!
昨日、畑から材料が届いたからパンを焼いておいたぞ!
ありがとう! 本当にありがとうな!」
店には行列ができていて、店員が忙しく働いている。
「すごい行列だね」
「まあ、数日は店をしめとったからな。
てもパンはちゃんとお前さんたちの分も用意しておる。
ほら持っていって食べとくれ」
そういってたくさんの焼きたてのパンをもらった。
リビィとザインとオレはそれを抱えてリビィの家に帰る。
「すごーい!
早く食べよ!」
「わーい!」
「これボク食べていい!?」
「待ってみんな!
おにいちゃんたちが先!」
リビィの姉弟たちがワイワイいって集まる。
「こんなに食べきれないわ。
持って帰るように、かごを持ってくるわね」
そうリビィのお母さんはかごを用意してくれた。
「じゃあボクたちも食べよ!」
「そうだな」
「楽しみだぜ」
オレたちはみんなでテーブルを囲みパンを食べ出した。
「うまい! なんだこれ!
それに綿のように柔らかい、この甘いフルーツがうまい!」
「それはコモンの実だよザイン。
うんうまい!
ひさしぶりだあ」
「ああ! 確かにうまいな!
ここまでうまいのは初めてだ!」
「ね! ここのパンはおいしいでしょ!」
(確かにうまい。
というか、オレこの世界の食べ物は全部うまく感じるんだよな。
天然で添加物とかないからなのか......)
オレたちはたらふくパンを食べ満足した。
そのあとリビィの姉弟たちと遊んで泊まった。
(楽しかったな......
家族か......
取りあえず親父に連絡たけしとくか)
オレは親父に連絡するとリビィたちと川の字になり眠り、次の日がやってきた。
「いやだ! にいちゃんはここにいるんだ!」
「帰っちゃダメ!」
「みんな、むりいったらだめだよお!」
リビィの姉弟たちはリビィと離れるのかいやらしくごねていた。
「みんな......
おにいちゃんはみんなのためにも行かないといけないんだ。
ごめんね。
でもまたすぐ帰ってくるから」
リビィは寂しそうに、リビィの姉弟たちをなだめると、お母さんに挨拶をして荷馬車に乗り込んだ。
姉弟たちは泣きながら見送り、見えなくなるまで手を振っていた。
「いい家族だな」
オレがそういうとリビィは一度顔を伏せてぬぐう。
「そうだよ! 世界一の家族さ!」
そう顔を上げて笑顔になった。
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