第36話 ソートスタッフ

「ちょっとみんな!」


 リビィが慌てたように呼んだ。


「なんだリビィ?」


「これみて!」  


 畑の中になにかモゾモゾしている。


「あっ! ヒナか!」 


 そこには小さなサンダークラウドイーグルのヒナが巣の上でピイピイ鳴いている。


「どうやらヒナを守っていたようだな」  


「でもなんでこんな所に?」


「さあ、でもこいつを山に持ってきゃ親も帰るんじゃね......

 誰だ!?」


 ザインは後ろを振り返った。

 後ろには誰もいない。


「まさか誰かいるのか...... ザイン」


「ああ......

 オレと同じようような魔法か......

 しかも十人はいやがる......」  


「見えないんじゃどうしようもないよ......」


 リビィが不安そうな声をだす。


「静かに......

 こっちも見えないはず、ゆっくりと離れ......」


「その隠された姿を白日のものとせよ。

 破れたブレイクフォーム


 どこともなく聞こえたその声で、オレたちの姿は丸見えとなった。


「しまった! これは解呪の魔法!?

 リビィ! いま魔障術オブスタクルを......」 


「深き深き、御身を夢の中へと誘え。

 白昼夢デイドリーム


「これは......ねむ、りの......魔......法」


 オレは意識を失った。



 目が覚めると両手足を縛られている。

 周りを見るとザインとリビィが縛られ、剣や杖を持つ男たちが十名ほどサンダークラウドイーグルを縛ろうとしていた。


「ほう目覚めたか......

 かなり魔法に耐性があるな。

 他の二人はまだ眠っているのに」


 杖を持った人間ヒューマンの男がそういった。


「おまえたちは何者だ......」


「君たちと同じだよ」


「冒険者......

 なんでこんなことをする。

 そのサンダークラウドイーグルをどうするつもりだ......」


「仕事《クエスト)だよ。

 このサンダークラウドイーグルを確保するのが依頼だ」


「違うだろ。

 法で守られているんだ。

 密漁だろ......」


 そうオレがいうと男はニヤリと笑う。


「ホビットどもの法など知らんな。

 こいつの皮は雷を防ぐから高値で売れるのさ。

 それに一本だけある特殊な羽は高額で売れる。

 逃げられたのを捕まえてくれてありがとうよ」


「そうか、お前たちが山から追い立てたのか...... 

 で、オレたちはどうするつもりだ」


「我々は人種を売り買いする場所も知っていてね。

 ホビット、リザードマン、それに人間ヒューマンか、若いからまあまあの値で売れそうだ」


 そういうと笑いだした。


(まずい......手が縛られてて紋様サインも使えない。

 オレは呪文スペルは使えない。

 ナイフも取り上げられたしな......)


 男たちがオレのナイフを振っている。


(あとは、この杖ソートスタッフだけだが......)


 とっさにズボンの中に隠したから見つからず持っていた。


(確か意識を操る杖......

 前に男たちがやってたようにやるしかない......) 


 オレは見られないよう縛られている両手で杖を引き抜くと、目を閉じ魔力マナを集中し杖に込めた。

 すると肉体から意識だけ抜け出したような、いままで感じたことのない感覚があった。


(これは、魔力マナにオレ自身が入ったみたいな感じだ......

 あっちに何体かの魔力マナを感じる。

 これはザインとリビィか......

 それにこの複数のは密猟者か......

 この大きいのはサンダークラウドイーグル......)


 オレはサンダークラウドイーグルに意識を近づける。

 するとサンダークラウドイーグルの魔力マナにするりと入り込んだ。


(これは!?)


 目を開けるとそこにはロープを引っ張っている男たちの姿が見えた。


(これサンダークラウドイーグルの視点か!

 させるか!)


 オレが動くと男たちは驚いている。

 すると勝手に体から放電した。

 

(何か心配する気持ち、そして怒り......)


「な、なんだ勝手に動きだしただと!? 

 麻痺させていたのになぜだ!」


 オレに話していた男が驚いていった。

 男たちは立ち上がろうとしている。


(雷耐性のアイテムを持っているのか。

 よし! なら!)


 オレはそこに放電した。


「がはっ!!」


 男たちは皆その場に気絶した。

 オレが集中をとくと、自分の体に戻っていた。


「ふう、なんとかなったか......」


 遠くを見るとザインとリビィも痙攣していた。


(しまっ......)



 そう思ったオレも意識を失った。


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