第35話 サンダークラウドイーグル

「いってらっしゃい! がんばってねおにいちゃんたち!」


 次の日、リビィの姉弟とお母さんに見送られコモンの実を手にいれに町にいく。

 

「あっ! リビィ!」  


 古いが大きなお店の前で、一人の年老いたホビットがリビィに話しかけてきた。


「ポムさん!

 お店休業してるんだって聞いたよ」


(このおじいさんの店なのかポムポム亭って......)


 オレが思っていると、おじいさんは深いシワをさらに深くしていった。


「そうなんじゃ。

 小麦も果実も砂糖もとれなくての......」


「サンダークラウドイーグルなら、ボクたちが追い払うよ。

 大丈夫待ってて、それよりコモンの実がほしいんだけど」


「コモンの実で追い払うつもりか......

 わかった! それならたくさんあるでの、持ってていってくれ!」


 そういってポムじいさんから、荷車いっぱいの実をもらった。

 オレたちはそれを半分にむく。


「くせえ! なんだこれ!?」


「確かにひどい匂いだな」


「うん、これは煮詰めると匂いがなくなって甘くなる実なんだ」


 そういったリビィはいつのまにか鼻に栓をしていた。

 半分に切ったコモンの実を荷台に乗せ、オレたちは畑のあるクエム山にむかう。

 

「その山、高い木とかあるのかリビィ」


「あまりないんだ。

 開拓して畑にしてるから」

 

「なんだユーヤそれがなんかあんのか」


「雷は高いところに落ちるだろ。

 高い木があれば避雷針として使えるからな」


「まあ、隠れて実をぶつけるだけだ。

 大丈夫だろ」


「なにもないところだと、一番背の高いザインに落ちるんだよ」

 

「ふえ?」


 リビィに言われザインは驚いているようだ。


「おい! あれ!」


 晴れていた空に小さな雷雲が見える。

 近づくと黒い雲の中に稲光を放つ大きな鳥が見える。

 山の畑の上を大きく旋回していた。 


「いた! あれがサンダークラウドイーグルだよ!」


「よしゆっくり近付こう」

 

 オレたちはゆっくり慎重に荷車を押して近づく。


「この匂いで攻撃されないのか?」


「大丈夫だと思う。

 匂いが強くてどこかわからないから」


 そうリビィのいうようにいやがってはいるように見えるが、サンダークラウドイーグルは旋回し続けている。


「よし、もう少し近づいて......」


 ピリッ


(なんだ? いまピリッとした......)


 その時旋回していたサンダークラウドイーグルが突然放電しながら、こっちに向かってくる。


「くる! 離れろ!」


 オレたちは走って離れる。

 

「なんだ!? 姿は見えないはずなのに!!」


 そうザインの声がする。 

 どうもそちらにサンダークラウドイーグルが向かっている。


「そうか! 

 オレたちの発してる電気を感知してるのかもしれない! 

 あのピリッとしたのはそれか! 

 まずいリビィ! いるか!」


「多分そばにいるよ!」


「ここの岩の上に作るオレの魔法を鳥に当てないように射ってくれ!」


「わかった!」


 オレは魔法を作るとリビィに合図した。


「よし! いいぞ!」


 リビィの魔法の矢がサンダークラウドイーグルの後ろに飛んだ。

 その瞬間、激しい光が起こりサンダークラウドイーグルの後ろに落雷が落ちた。


 バチバチバチ!!


 オレが避雷針として魔法で作った金属が地上に落ちる。 


「やべー! 俺に落ちるところだった! 

 助かったぜユーヤ!」 


 ザインがそういいながら近づいてきた。

 サンダークラウドイーグルから黒い雲が渦を巻いて周囲にでき、そして雨が降りだした。


「まずい! 地面が雨に濡れる!」


「これで落雷落とされたら感電しちまう!」 


「どうするの!? ユーヤ!」


(雷を防ぐには......

 絶縁体、ガラスやゴムは作れないし、多分防げない......

 真空にすれば......

 いや、こんな広範囲にできないか...... 

 雨を止めるほうが...... 雨)  


「よし! みんな荷台にのれ!」


「マジか狙い撃ちだぞ!」


「それでリビィは弓でサンダークラウドイーグルの鼻先にコモンの実を射てくれ!

 落雷はオレが防ぐ!」


「わかった!」


 オレは荷台にのると周りに魔法を周囲にいくつも設置した。


「おいおい来たぞ! こっちに向かってくる!」


 サンダークラウドイーグルは放電しながらこっちに向かってくると、オレたちの真上で放電し始めた。


 バチバチバチ!!


 オレが魔法を発動させるとすごい量の水が上から降ってきた。

 次の瞬間ものすごい光で目の前が見えなくなる。


「ぶはっ! リビィ今だ!」


「うん!」


 リビィがコモンの実を魔法の矢で射るとサンダークラウドイーグルのくちばしに当たり実は砕け散った。

 サンダークラウドイーグルは激しく羽ばたくと、くるくるとゆっくり回転しながらドスンと地上に落ちた。


 リビィが近寄る。


「うん、大丈夫...... 

 死んでない匂いで気絶しただけだ」


「おいユーヤなんだったんだ今の......

 ザパーってすごい雨が降ってきたぞ。

 どうなってんだ?」


「雷を防ぐのに水の魔法を周囲に設置したんだよ。

 魔法の水は魔力マナから作られる不純物のない水、純水だからな。

 純水は電気を通さないと聞いたことがあったからな」


「......

 う、うん、よくわからんが助かったぜ!」  

 


 ザインはかっかっかっと豪快に笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る