第38話 再潜入
オレたちがホビットの国、ミーグからやっと帰ってきて二日。
寮にいると、寮生が呼ぶ。
「ユーヤ、なんかエルフが訪ねてきてるぜ」
「ああ、わかった」
「フェルスかな。
パンをあげないと」
「そうだな。
せっかく凍らして持って帰ってきたからな」
そういうリビィにザインが答える。
オレたちが寮を出ると、フェルスがいた。
その表情からただならないことが起こってるのを察した。
「なにか起こったのか......」
「ああ、もう一度力を借りたい......」
オレたちは顔を見合わせうなづくと、人のいないカフェに入った。
「で、どうしたんだ?」
「中の繋ぎの者がいうには、女王の動向が全く伝わってこないらしい......」
「どういうことだ?
まさか薬が効かなかった!?」
「いや、多分薬は効いてる。
オレの妹もかなり改善している。
他にいる病気の者のために、ユーヤからもらって送った薬も効いてるようだ」
「じゃあ女王もってことだね」
「となると、回復してきた女王は......」
オレとリビィとザインは顔を見合わせる。
「そういうことだ。
ラハラールにとって困ったことが起きた。
その証拠に各国境にまた宮廷魔法士が配置されている。
兵士たちもだ」
「オレたちの進入を警戒してか......」
「多分......
オレは潜入して、どうしても女王を助けたい。
だが、今回はリスクが高い......
捕まれば確実に処刑だろう。
手伝ってくれるか?」
「ああ、もちろんだ。
ルイエも助けなければ」
「当然! ルイエとフェルスは友達だしね」
「あたりまえだ!
お前には助けられたろ」
「ありがとう......」
そういったフェルスの声は震えていた。
「......しかし女王のいる場所はわからない。
知ってるとすれば王族のルイエの力も必要だろう。
いる場所はわかるのか」
オレがフェルスにきく。
「......ああ、女王はわからんが、ルイエさまはジルエストさまの屋敷に共に軟禁状態らしい」
「ルイエを解放するのがさきだな」
「うん! 帰って用意をしよう」
ザインとリビィはそういった。
「二日後、ここを出発する。
よく考えて参加してくれ」
フェルスはそういって店を出た。
「ボクはビオリムさんに預けてる弓をとってこなくちゃ!」
「俺は新しい槍を手に入れたから手入れするか」
「ザインこれを持っていけ」
オレはザインにナイフを渡した。
「ユーヤ、これは......」
「そのナイフの
オレはソートスタッフを使う」
「よしわかった! これで振動の槍にしてくる!」
そういって、リビィとザインは出ていった。
「オレは親父にいつもより多く薬の補充を頼まないとな......」
次の日親父からメールが届く。
『薬の補充は明日までに届ける。
だが、エルフの国にはいるのは認めない。
まだ外交交渉中だからな。
なにか問題が起こればオレの地位と退職金もパーになる』
もう行くことは決まってんだよ。
退職金など知ったことか。
『だから、おれの同僚、佐藤をお前の監視につけた。
その佐藤から薬をもらえ、明日その町のホテルに会いに行ってこい』
監視......
徹底しているな。
まあザインの魔法でまけるけどな。
そして次の日、オレはホテルにいった。
受付でいうと、一人の若い男がホテルの階段を降りてきた。
「悠哉君だね。
ボクは外務省の
君のお父さんの同僚さ」
その背の高いスマートな男はそう挨拶をした。
(官僚というよりはできるビジネスマンといった感じだな......)
「君の武勇伝は聞いているよ。
バジリスク、ラージスパイダー、ストーンゴーレム、それにサンダークラウドイーグル、ずいぶんな活躍じゃないか。
君この世界の方がむいてるんじゃないかい?」
「......ずいぶん詳しいですね......」
「外交官だからね。
調べるのも仕事なんだよ」
「......望んでるというよりは巻き込まれただけですよ」
「巻き込まれにいってるんじゃないかい」
そういって整った顔で笑った。
(まあ、確かにな......)
「これが薬だ。
だが、お父さんから言われたようにエルフの国には入っては行けないよ。
今我が国は交渉中だからね。
最悪破談になることさえある。
そうなっては君のことを法にかけないといけないかもしれない」
(おどしか......)
「未成年でもですか?」
少し黙ると、佐藤さんこちらをみた。
「未成年だからといって国絡みのことから逃げられるわけじゃないのは、君もわかってるだろ」
そういってとても冷たい目をむけている。
少し間があいた。
「まあ、それは冗談として......
無茶はやめるべきだ。
お父さんも君のことを信じているんだから。
ああ、そうそうわたしのスマホの番号を伝えておくよ」
そういって佐藤さんは席を立つと去っていった
三日後、オレたちは集まり《見えざるもの》でエルフの国境まできていた。
確かに前より警備が厳重になっているようだった。
「入るのは簡単だけど......
入ったことを知られてしまうな」
「それは大丈夫!
ボクに任せて、ユーヤは
オレが
すると、空が黒い雲におおわれて落雷が落ちた。
兵士たちが騒いでいる。
「今だよ!」
「わかった! みんな走れ!」
オレは
少しはなれた森に隠れ、みんなと合流した。
「ふう、やったな。
リビィか今の落雷」
「うん
これは、
「これで入ったことは気づかれてないだろうな。
フェルスこの後どこに行く」
「この国にいるオレの繋ぎとあう。
この先に馬車を用意してくれてるはずだ」
しばらく歩くと、二頭立てのホロつきの馬車が止まっていた。
その横に精悍な顔つきの中年のエルフが立っている。
「ルイーブ!」
フェルスが声をかけるとその男はこちらをみずに話した。
「馬車にお乗りください」
オレたちが馬車に乗り込むと男の操る馬車は走り出した。
「ふう、なんとか無事にこれたか」
「だな。
これからジルエストさんの屋敷か」
オレにザインがいう。
「いえ、屋敷は今警備が厳しいから近づけないのです。
一度私の家にきてください」
馬車を操っていたルイーブさんはそういった。
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