第31話 オーク王

「すみません。

 いま姿を隠しているのですが、お話を聞いてください」


「おらだよザグだ!

 王様、ユーマたちの話を聞いておくれ!」


 オレのあとにザグさんが通訳してくれた。


「ザグ......

 わかった。

 何が起こっているユーマとやら。

 倒れているこの者たちは異界の者だな......」


「ええ、そうです。

 この者たちは王様たちを操って、鉱物を不当に得ようとしていました。 

 それどころか、リザードマンへの戦争をさせようとしています」


「な、なんだと!

 私は操られていたのか!

 他の者たちは大丈夫か!

 戦争にはなっておるのか!」


「お静かに、こいつらの仲間が連絡が来ないと怪しんで、すぐここにくるかもしれません。

 戦争にはなっていません。

 鉱山で働かされているようですが、大丈夫です」


「そうか......

 私が愚かにもこの者たちを信じたばかりに......」


「しょうがないよ。

 他の国とは取引できないんだもの......」


 ザグは王様を慰めた。


「そなたが私を操作から解き放ってくれたのだな」


「はい、ですが動かないでください。

 オレの魔法は王の足元しか発動していません。

 離れるとまた操られます」


「なるほど魔障術オブスタクルか......

 おおよそのことは理解した。

 しかし......この魔法もそう長くはもつまい。

 どうする?」


「ええ、王は操られたふりをしてください。 

 おそらく異変に気づいた者たちがここにきます。

 あとはオレたちがやります」


「わかった......

 だが、この王座に近づいたものは倒すがよいか」


「ええ、でも殺さないでください。

 何かと必要なので」


「あいわかった」


 オレたちは倒れた男たちを部屋の外におくと、部屋に魔法を設置して待った。

 さっき見た男たちは銃を構えながら部屋をのぞき慎重に近づいてくる。


「王はいるのにあいつらがいないぞ......

 あいつらはどこだ......」


「定時連絡がないって話しだったが、離れるなんておかしい。

 もしかしたらあの日本人のガキが関わってるかもしれん!

 周りを警戒しろ!」


(日本人のガキ!? オレのことか! 

 でもなんで知ってる!?

 ......いや、今は集中だ......)

 

 男たちは部屋の中を見回る。


「誰もいない......

 あいつらどこに」


 中央付近に男たちは集まる。


(魔法発動!)


 その瞬間目をつぶっていたまぶたに光が届く。

 

「ぐわあ!!」


 その声に目を開けると男たちが目を押さえている。

 オーク王がその体に似合わず素早く丸太ような腕をふる。

 

「ぐわああああ!」


 近くの男たちが吹き飛んだ。

 リビィは残ったものに魔法の矢を打ち込む。

 オレとザグさんも飛ばされなかった残った男たちを倒した。

 

「やったか......

 いや、こいつら杖もってない!!」


 部屋の外に向かうと、一人の男が杖を持って走っていた。

 オレが魔法をためる。


「リビィ!」


「はいよ!」


 リビィの魔法の矢がオレの氷魔法をまとい男を氷付けにした。



 その後、杖から魔力マナが供給されなくなったため、オークたちは正気に戻った。

 

「これは、我らを操ったものか。

 話に聞いていたソートスタッフだろう......

 魔導王ザハーストラとともに失われたもの、をなぜこの者たちが......」


 杖をみてオーク王はそういった。


「さあ、こいつらはどうしようか?」


 合流したザインが縄で縛った男たちを見てそういう。


「こいつらの処遇はオレの国に任せてもらえませんか」


 オレは王に願い出る。


「そなたの国に?」


「司法体系の違うここで処罰すると大ごとになります。

 最悪、異世界とオレの世界の関係もおかしくなりかねない。

 オレの国に送ることで、こちらの世界のイメージもよくなるはずです。

 それに、少し気になることもあるので」


(こいつらなんでオレのことを知ってるのか聞き出したいしな)


「......うむ、よかろう。

 そなたには救われたからな。

 この者たちを罰してもこちらにたいして益はない

 リザードマンの国にすぐ送ろう」


「ありがとうございます」


「しかし、もはやこの者たちの国とは信義は崩れた。

 取引はできない。

 困ったものだ......」


「そのことなら、俺に任せてくれませんか」


 ザインが申し出る。


「リザードマンに......」


「俺の国との貿易を考えてみてはいかがですか。

 この国には多くの鉱物がある。

 うちには薬草や食べ物がありますから、お互いに利益はあると思いますが」


「......それができれば、しかしこんなことがあって可能だろうか」


「オレが証人になりますよ。

 ことの顛末てんまつを知ればリザードマンたちも貿易を考えると思います」


「そうか、ならば頼めるか」


「はい。 任せてください」


 ザインが胸を張って受けた。


「それにしてもそなたたちには世話になった。

 この恩は必ず返そう」


 王はそういって頭を下げた。


「やめてください。

 オレの世界の者が迷惑かけたんですから、じゃあ、オレたちはこれで......」


「まつのだユーヤ」


 王にオレは呼び止められた。


「すまぬがこの杖そなたが持っておいてくれぬか」


「えっ?」


「また誰かの手に渡れば困る。

 かといって封印する方法も破壊するてだてもない。

 そなたがもってくれる方が安全なのだ」


 そういって王はオレに杖を渡した。


「わかりましたお預かりします」


 オレたちが帰ろうとするとザグさんが泣きながら手を握りしめた。


「ありがとう! みんな!」


 そういってオレたちが見えなくなるまで手を振っていた。

 

 そしてザインはザガンさんに全ての話を伝える。

 ザガンさんは王に伝えるといい、オレたちに感謝した。


 そんなリザードマンの国からの帰り。


「まあなんとか無事に帰れるな」


「うん」 


「あ、あのよ......」


 ザインがなにかいいたそうだった。


「ザイン。

 謝ったりするなよ。

 友達なんだろ」


「そうさ!」


「そうだ。

 オレにもそうお前がいっただろう」


 オレとフェルスに言われてザインは頭をかく。


「わかったもういわねえ」


 そういってザインは笑った。



 それから三日後、オレたちは学園に戻った。

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