第30話 解放

 次の日の朝、オレたちは姿を消して王宮の門の前にきていた。

 さすがに王宮の壁は石のレンガで高く積まれ越えるのはむりだった。

 門の前には二名のオークが槍を持って人形のように立っている。


「やはり門が閉じているな。

 何とかして門を開けさせないと......」  


「ユーヤ、オレとフェルスたちが左右から壁を叩いてみる。

 お前たちは門の前にいろ」  


 そうザインの声が聞こえ、オレたちはゆっくり門の前に移動した。


 ガンガン!


 右側の壁から音がした。

 門のオークがゆっくりと動き出す。

 その時左側の壁からも音がした。

 左右にオークが歩いていくと、門が開きオークたちが何名かゆっくりとでできた。


「今だ!」


 オレは小声でいうと、オークの脇をすり抜け門を抜け、王宮の前まで足早に移動した。


「やったな」


「うん、あとは王様のところまでいけばいいだけだ」


「おらに任せて。

 二人は尻尾に掴まって着いてきて」


 オレとリビィはザグさんの尻尾を掴んで王宮の中に入る。

 王宮は白い石でできており冷たい感じがする。

 部屋にドアなどはなく、ただ石を組み上げてつくった作りのようだ。

 中には侍従たちだろうか、槍やなた、手斧などを持ったオークたちがいるが、特になにもせず虚ろにまえを見ている。


「門の兵士もそうだったけど、どうも操られた者たちは心ここにあらずって感じだな」


「多分そんな複雑な命令ができないんだよ。

 大量の魔力マナもいるだろうしね」


「はやくもとに戻してあげたい」


 ザグさんはつらそうにそういった。


「そうだな......

 で王はどこに」


「二階の王の間なんだけど、真っ直ぐいくと何かあるといけないから、回り込んでいけってフェルスさんからいわれたんだ」


 そういってザグさんはゆっくりと王宮を外回りした。

 しばらく角を曲がりながら回ると、ある部屋から声がした。

 

「交代の時間だ......」


 部屋には屈強な男たちが十人以上いる。

 だがオークではなく人間ヒューマンだった。


「こいつら人間!?」


「ユーヤあれ耳のところ。

 変なのしてる」


 リビィに言われてみると男たちにはインカムらしきものをつけている。


「!?、こいつら、オレと同じ異世界人か!!

 じゃあ、オークが取引しようとしてたのは異世界か!」


「じゃあ、あの人たちユーマの国の人なの?」


 リビィがそういう。


「いや違うな」


(肌からは黄色人種か。

 魔法がかかっていて言葉の意味はわかるが唇の動きから察するに、日本語じゃないな。

 そういえば異世界のゲートは世界各地にできたはずだ)


 世界に突然ゲートができたのは二十年ぐらいまえだった。

 ただ、こっち側の拒否反応なんかでやっと最近交流がうまれていた。 

 

(他の国が前に交渉しててもおかしくはないか......)


「交代だ......」


「ああ、かなり疲れるな」


「仕方ない......

 魔力マナの供給が止まればオークどもの操作が解けてしまう。

 うまくすればここの鉱石だけでなく、リザードマンの領地の資源も手に入る......」


 男たちはそう話しながら、手に持った杖を回しているようだ。


「こいつら魔法を使ってオークを操ってるのか」


「あの杖で操ってるみたいだね。

 あれがソートスタッフなのかな

 奪い取る?」


 リビィがそういうとザグさんの尻尾がふるえている。


「腹が立つのはわかるが落ち着けザグさん。

 あいつらの、体格からみてあいつらかなり強いし、それが十人もいる。

 多分拳銃という強力な遠距離武器を持ってるし、あれ以外の魔法まで使えるかもしれない。

 まず王様たちの操作を解いてからにしよう」


「......そうだ。

 王様は強いから敵につくと困る」


 ザグさんはそういった。


 オレたちは王の間に向かった。

 外回りして中央の階段を登り王の間につくと、王座にひときわ大きいオークがぐったりして座っている。

 その側に二人の人間が玉座の左右に銃らしきものを持って立っている。


「でっか!」


 リビィは小さく呟く。


「二人か......

 倒せるだろうが、倒しているときに王様に攻撃されたらまずいな

 先に王様の操作をときたいが、リビィの矢を射ると音がする。

 見えなくてもすぐこちらに銃を撃つかもしれないな......」


「大丈夫! ボクに任せて!

 ユーヤは魔障術オブスタクル紋様サインを描いて、描いたらザグさんは右の男の後ろに、ユーヤは左の男の後ろにいてくれる。

 そして二十秒かぞえて、ボクが合図したら二人を攻撃して」


 そういわれてオレは魔障術オブスタクルのサインを王様の正面に描いた。

 そしてオレとザグさんは男たちの後ろにゆっくりと回る。


(いち、に、さん............じゅう............にじゅう)


「いまだ!」


 リビィのその声で男たちが前に銃口を向ける。

 オレは前にいる男の首をナイフの背で強く叩いた。

 男はぐらりと崩れた。

 そして目の前を男が地面を飛んで転がる。

 ザグさんに殴られたのだろう。

 立ち上がらないから確認すると気絶していた。


「今のはリビィ!? 矢がみえなかった音もでなかったぞ!」 


「へへーん!

 これは黙影のインビルシブルアローさ!

 音も形もない魔法の矢さ!

 エルフの国の時から試行錯誤して一日一本だけ射れるんだ!」


「すごいな。

 そんなものを射れるようなってたのか」


「成長してるのはザインやユーヤだけじゃないんだよ」


 姿が見えないが自慢するようにリビィがいった。


「アクライ、ビオルムア?」」



 その時、正気を戻したオークの王が見えない者に困惑しているように話した。


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