第29話 オークの国
「ここが、オークの国か......」
「なんにもないね」
オレたちはザインの《見えざるもの》で隠れてオークの国にはいった。
山岳地帯のそこは石と木と土でできた掘っ建て小屋のような粗末な建物が建っているが、国と呼ぶにはおこがましい村のような場所だった。
多くのオークたちが鉱物を木でできた荷車にのせ運んでいる。
皆疲れて不安そうな顔をしていた。
「ここは土地も痩せてて、作物もあまりとれないし......
でも山が一杯あって鉱物と魔法石なんかもとれるんだ。
でも国の中での物々交換だから貧しいんだ。
だから王様は他の種族と仲良くして取引したいって言ってたんだ」
オークたちを見ながら、ザグさんがそういうとフェルスがうなづく。
「鉱物や、魔法石なんかがとれるなら取引はできるな」
「うん、でも今まで交渉してた幾つかの国には断られたって......」
「まあ、まだ一応モンスター扱いだからな。
俺たちも百年前までそうだから、その辺は理解できるな」
ザインは複雑そうな顔でそういう。
「でも、どこかと取引ができることになったって話があったんだ!
なのに王様が......」
「騙し取られたのがわかったとか......」
リビィがザグさんに聞いた。
「ううん、そんな話しはなかったよ......
でも、確かに大量の鉱物を掘ってる。
武器にするっていって......
おらも、もともと山から石を切ってたんだけど......」
「それを聞いてリザードマンの所へか......
やはり操られた線が濃厚か......
とりあえずザグ、君の家に隠れて王宮にはいるとしよう」
フェルスがそういい、オレたちはザグさんの家に隠れることにした。
町外れにあったザグさんの家につく。
中は意外と、といっては失礼だが綺麗にしていた。
「あんまり食べ物はないんだけど......
これどうぞ」
そういって吊るしていた干した果実をだしてくれた。
「これは見たことがないな。
うん甘いな。
干しがきみたいな味だ」
「うん! 甘いしおいしい!
この果物見たことない!
これ売ったらいいんじゃない」
「だな!」
「ふむ、確かに」
「よかった」
ザグさんはそうホッとしたような顔をしていった。
それからオレたちは王宮にはいる作戦をたてる。
「でザグさん。
王宮に入れそうなのか」
「前は誰でも入れたけど、今は門に警備の兵がたってるから入れないんだ」
「魔法の障壁や阻害するものは?」
「ううん。
おらが知る限りはないよ。
でも門がなかなか開かないんだ。
おらもいれてもらえないか聞いたんだけど門兵は無言で」
「それは答えるなと命じられているのだろうか」
フェルスが聞くとザグさんは首をふる。
「なんか反応がない感じなんだ......
戦争を止めようとして王宮にいった者たちみたいに」
「そいつらも操られてるか......
なら厄介だ。
中に入れん。
もし操られてるならユーヤの魔法で解くか」
ザインがいう。
「でも、それに相手が気づいたらまずくない」
「リビィがいうとおり、このままの方がいいだろう。
まず王様をなんとかしないといけないからな。
今なら相手もオレたちが来てることは知らないはず」
「だったら人を分けたほうがいいな。
門兵を釣りだす者が必要だ」
「ザイン、ならオレが門の外に爆発を起こしたら」
「いやユーヤだめだ。
お前の
操る力が強ければそれ以上の
フェルスがそういう。
「じゃあ、まずオレと王宮にはいったことがあるザグさん。
そしてオレの魔法をまとった矢を射れるリビィだな。
ザインとフェルスは門兵を釣りだすのと、最悪オレたちが捕まったときに姿を隠して潜入してほしい」
「任せろ」
「ああ、わかった」
オレたちはザグさんの家で一泊した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます