第28話 オークの事情

「彼はオークのザグ。

 我々にオーク侵攻の話を伝えてくれたものだ。

 ザグ説明を」


 そういってラガンさんはオークに促した。


「おら、ザグ。 

 いまオークたちみんなが戦いに集められてるんだ。

 別におらたち戦いたくないのに......」


 ザグさんは不安そうにそういった。


「なんで戦いたくないのに従ってるんだ?」


「うん、なんか他の種族と仲良くした方がいいっていってた王様が急に戦争するとか言い出して、大勢で止めにいったけど、止めにいった奴らもなんか変になって、みんな戦争するって」


「それって操られたってこと?」


 リビィがいうとザグさんは目を伏せる。


「わかんねえ......

 でも戦いたくない奴らのほうが多いんだ。

 おらどうしていいか分かんねえから、リザードマンに伝えにきたんだ」


「かなりのケガをしてここまで来たようなので嘘をついてるとは思えない。

 とりあえず、我が王宮には伝えてある」


 ガランさんはそういって困った表情を浮かべた。


「王が魔法かなにかで操られてるのか......」


「だが、そんな大勢にかけられる魔法などきいたこともないが......」

 

 オレとラザンさんが話してるとフェルスが呟いた。


「ソートスタッフ......」


「ソートスタッフ?」


「ああ、六英雄、魔導王ザハーストラが持ってたとされる杖で、自らの意識を魔力マナをとおして相手に同化して操る力があったらしい。

 魔王を倒した後消失したらしいが......」


「それなのかはわからないな......

 でザグさんそれ以外で今までと違うことや変わったことが最近なかった?」


「変わったこと......

 そういえば、王宮に他の種族が来て会ってたみたいだけど......

 それ以外はわかんない......

 おら戦争を止めたい......

 なんとかなんないかな」 


 ザグさんは哀しそうな目でそう訴えてきた。


「王の不自然な変節......

 やはりオークの国でなにか起こっているようだ......

 ただ、話を聞く限りオークたちも戦いを拒絶しているから、すぐに戦争になるわけではなかろう」


 ガランさんがそういうと、ザインが立ち上がる。


「やはり俺が潜入して、状況をみてくる!

 王が操られているなら、それを解けばいい!

 親父いいだろ!」


「まてザイン、まえもいったが操られたことがわかったとて、お前にはどうしようもあるまい。

 操っている魔法や魔法アイテムの除去が必要だ」


 ザインは俺の方を見て頭を下げる。


「頼むユーヤお前の力が必要だ!

 お前なら魔障術オブスタクルを使える!

 頼む一緒に来てくれ」


「頭を上げろよ......

 もとよりお前を探すためにきたんだ。

 一緒にいくさ」


「だね!

 ボクたちも」


「これで前の借りは返せるなザイン」


「お前ら......

 親父これならいいだろ!」


「ふむ......

 良き友を持ったなザイン。

 では、みなで探ってきてくれるか」


 ガランは感慨深げにいった。


「お、おらもいくユーヤさん!」


「そうだなザグさんがいればオークの国を案内してもらえる。

 頼むよ」


「うん!」

 

 オレたちはオークの国に潜入することになった。

 その日はザインの母親に夕食を出してもらい泊めてもらう。

  


 次の日、オレとザイン、リビィ、フェルス、ザグさんでオークの国に向かい歩く。


「オークの国までどの位なんだザグさん」


 オレが聞くと、ザグさんは指を数えている。


「えーと、歩いて二日ぐらい......  

 でもおっきな蛇がおそってくるから気をつけて!

 おら、それに噛まれたりして大変だったから」


「蛇、スワンプサーペントのことか」


「だったら大丈夫!

 ザインもいるしね」


「ああ、あれはオレたちのご馳走だからな。

 昨日だした肉がそうだ」


「おら、あれ好き!」


 ザインとザグさんがそういうと、リビィとフェルスはえっ?、という表情をした。

 

「あれかうなぎみたいだったな。

 蒲焼きにできそうだった」


「なんだ蒲焼きって?」


 ザインが興味深そうにきいてきた。


「ああ、甘いタレをつけて焼くんだ。

 オレの国じゃ高級品だぞ」


「美味しそう!」


 ザグさんがそういった。


「だな!

 今度つくってくれよ!」


「帰ったらな。

 親父に材料を送るよう伝えとくか」


 オレがスマホを打つと、ヤッホーとザインとザグさんは喜んでる。 

  

「そういえば、ユーヤは自炊するよね」


「そうなのか意外だな」


 リビィとフェルスがいう。


「ああ、オレは物心つくまえに母親が死んでから親父とふたりだからな。

 自然とつくれるようになったんだ」


「なるほどそれでか......

 お前もなんだかんだ大変だったんだな」


 ザインとリビィが、うんうんと頷いている。


「そうかな。

 最初からだから特にそう思わないな」



 オレたちはオークの国に三日後に着いた。


 

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