第27話 カイグ村

 オレたちが町をでて湿地帯にはいる。

 ぬかるみで馬車が使えないから歩いていた。

 だが足元がぬかるみにとられ歩みは遅い。


「歩きづらい、道もないね......」


「ああ、このぬかるみじゃ道もひけないだろうからな」


 リビィにオレがこたえる。


「村はそれほど遠くないが、スワンプサーペントというかなり凶悪なモンスターがいるらしい。

 周囲に気を配っていこう」


 フェルスが左右をみながら汗をぬぐってそういう。


「ザインがいれば探知してくれるのにね」


「あいつに頼りきりだったからオレたちは」


 そういいながら、オレはそれだけの信頼をザインにおいていたことを痛感した。


「おい!!」


 フェルスの声で周囲の水が波打ってるのに気づく。

 かなり大きなものが近づいてきた。

 湿地の中から首をもたげた人の倍ほどの平たい大きな蛇が現れる。

 

「こいつか!」


 リビィとフェルスは弓と氷の魔法で応戦する。

 蛇は紫の息を吐いてきた。


「吸うな! ポイズンブレスだ!

 肺をやられる!」


 ブレスをオレが設置した氷魔法の盾で回避しつつ攻撃を加える。

 すると、蛇は湿地にもぐった。


「追うユーヤ!?」


「リビィ、ダメだ!

 かなり深い場所もある!

 この位置で戦うしかない!」


「だが遠距離からブレスがくる!

 距離をとられたら厄介だぞ!」

 

 フェルスがそういって叫んだ。

 オレは魔力を下に設置した。

 スワンプサーペントが現れたとき、すぐに氷魔法を発動して、湿地の表面を凍らせスワンプサーペントの動きを止める。

  

「凍った部分にのって攻撃だ!」


 オレがそういって身動きが取れなくなったスワンプサーペントをみんなで攻撃した。

 スワンプサーペントはグラリと長い胴体を揺らすと湿地に倒れた。


「ふう、なんとかなったな」


「はあ、疲れたよ......」


「よくやったぞ! 

 二人とも、リビィも近距離で戦えるようになってるな」 


 フェルスはそういって笑った。

 その時後ろから黒い影がフェルスに襲いかかった。


「危ない!!


 ズシャ!!

 

「!?」


 オレが叫んだとき、その黒い影は断ちきられ湿地に落ちた。

 落ちたそれはもう一匹のスワンプサーペントの頭だった。


「おい大丈夫か......

 ってお前ら!?」


 こちらをみて、その聞き覚えのある声のリザードマンは驚いてる。

 

「ザイン!!」


 オレは胸ぐらをつかんで殴ろうとした。

 ザインは目をつぶっている。

 

「オレはそんなことするタイプじゃなかったな......」


 オレは手を離した。

 が、リビィはザインのすねを蹴った。


「いてえ!!」

 

「ボクはやるよ!」



 ザインに連れられカイグの村につくと、村長のいる家へ招かれる。


「そうですか、我が息子ザインのためにわざわざすみませんな」


 村長であるルガンさんはそういった。


(でかいな。

 ザインより一回りはでかい」


「いえ、でザインお前何で黙っていった。

 戦争起こりそうだからか」


「まあ......

 まだ確定じゃないしな。

 お前らを巻き込みたくなかったってのはそうだが......

 すまなかった......」


 いつもとは違い神妙な顔でそう謝った。


「友達だから謝るなっていったのはお前だろう」


「うっ!」


「ほんとに水くさいよ。

 どうせ戦争になったら、ボクたちがくるなんてわかってただろ」


「ま、まあ......

 だから余計にな」


「この不肖の息子ながら皆さんのことを考えてのこと、許してやって欲しい」


 ルガンさんはそういって謝った。


「まあ、オレたちは怒ってるわけではないんですよ。

 オレなんかはザインに助けられた口でね」


「ほう、こいつがそんなことを」


「やめてくれよ。

 フェルス」


 父親の前でザインが気まずそうにそういった。


「ルガンさん。

 一体いま何が起こってるんですか?」


 オレがガランさんに聞いた。

 

「ふむ、実はオークが戦争の準備をしているという話があってな。

 それでザインに伝えたのだが、戻らなくてよいといったのに、戻ってきてしまった」


「当たり前だろ! 

 ここはオークの国に近いんだからな!」


「それで本当に攻めてくるんですか」


「うむ......

 向こうにも事情がありそうなのだ......」


「それはどういうことなんですか?」


 オレの問いにルガンは少し考え。


「ザイン、あの者をここに」


「わかった......」



 そのあとザインが連れてきた者をみてオレたちは驚いた。

 体中に包帯を巻いた姿。

 それは豚のような顔をした亜人デミヒューマン、そうオークだったのだ。

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