第21話 オレの願い

 次の日オレが学園に向かうと、生徒たちから好奇の視線を向けられる。


(これは、まさか......)


 オレは急いで教室に入る。


「その時ユーヤの魔法が火を吹く!」


「すごいそこに氷の魔法が置かれたんだ!」


 ザインとリビィが身振り手振り誇張してはなしていた。


「お前ら!」


 オレが二人を止めると、生徒たちが群がってくる。


「なあ! ラージスパイダーを倒したんだろ!」


「危険なモンスターなのにすごいわ!」


「俺たちに戦いかた教えてくれよ!」


「いや......」


 先生が入ってくるまで質問は止まなかった。


 授業終わりにギルドに向かう。


「全く! お前らのせいで質問責めだったぞ!」


「まあまあ、実際ラージスパイダーを倒したんだから、間違ってはないだろ」


「そうそう、嘘はついてないもんね」


 ザインとリビィは悪びれもせずそういった。


「オレだけが目立ってるんだよ!

 目立ちたくないといってるだろう!

 それにあれはみんなで倒しただろうが!」

 

「お前の指示で倒したんだし、いいじゃないか」


「そうだよ。 みんな喜ぶしね」

 

「お前らには何をいっても無駄か......」


「おい、ユーヤ」


 そう呼ばれて振り向くと、イザールが取り巻きたちといた。


「あまり調子に乗るなよ。

 オレも冒険者に登録したからな。

 お前の武勇伝もこれで最後だ」


 そういって高笑いしながら去っていった。


「なんだあいつ......」


「お前ばかりに注目がいって悔しいんだろ。

 かわいいもんじゃないか」


「まあ、魔法の力はあるからね。

 そこそこやるんじゃない」


 ザインとリビィは鼻で笑っている。


「なあザイン、そんなことよりフェルスはやっぱりまだ宿屋に寝泊まりしてんのか」


「ああ、他に安い住居が見つかるまでいるらしい。

 まあ金は入ったから大丈夫だろ」   


 オレたちは授業後にギルドに出掛ける。


「あっ、フェルスがいた!

 おーい!」 


 ギルド前にいたフェルスにリビィが手を振ると、フェルスは近づいてきた。


「フェルス、お金は送れたのか」


 オレが聞いた。


「ああ、オレは国境までいけないから、ギルドに頼んで手紙と一緒に国境まで送ってもらった。

 代わりに手紙を受け取ってきてくれた」


「で中はどうなっている」


「ルイエさまとジルエスト様はやはりジルエスト様の屋敷で軟禁状態らしい。

 女王の容態はまだわからない。

 だが妹は容態が改善しているということだ」


 そう嬉しそうにフェルスは答えた。


「よかったな」  


「うんうん」


「ああ、お前たちのおかげだ......」


「やはりルイエは手を出されてはいないようだな」


「ラハラール様といえどさすがにそれはできんだろうな」


「じゃあさっさとギルドにいこうぜ!」


 ザインについてオレたちはギルドにはいる。 

 ギルドでは人だかりができていた。


「なにこれ?」


 リビィはピョンピョン跳ねて見ようとする。


「そうだ! そこでユーヤは叫んだ!

 みんな行くぞ!

 その掛け声でみんなはちってラージスパイダーをあっという間に打ち倒したのさ!」

 

「この声、まさか!?」


 人をかきわけ前に行くと、身振り手振りビオリムさんがオレたちのことを武勇伝にしていた。


「ちょ、ちよっとまって! ビオリムさん!!」


「おお、ユーヤのダンナ!

 まってましたよ!」


「困りますって! そんなことを大声で」


「あれがラージスパイダーをやったユーヤたちか!」 

 

「ええ!? あのバジリスクを倒したっていうあの!!」


「ああ、騙されたビオリムを助けたらしい!」


「ビオリムってベテランじゃねーか!」


「確か異世界人だろ。

 そんなに強いのか」 


 周りがざわざわとこちらをみて噂している。

 ビオリムさんをつれて外にでた。


「止めてください! オレ目立ちたくないんですから!」


「そうなのか、よかれと思っていったんだが、すまなかったな」


「いいってビオリムのおっさん。

 こいつはすげーんだから」


「そうそうザインのいうとおり、ユーヤはすごいんだよ!」


「やめろ! お前たちまで!」


「だが、確かにすごい奴だとオレも思っているぞ」


 フェルスまで二人に同調した。


「オレはだらだらとした無為な学生生活を過ごしたいんだ。

 それがモンスター退治やらで、命の危機にさらされたりしてんだからな」


「まあまあ、いいじゃねーか。

 お前は友好親善大使なんだから、この世界のために力を使えれば」


「そうだよ友好、友好。

 ユーヤはこの世界とそっちの世界との架け橋なんだから」


 ザインとリビィがいうと、フェルスとビオリムさんがうなづいてる。


「他人事だと思って勝手なことを」



 オレはあきれていった。

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