第20話 ドーム内

 上をみると岩の間から少し空が見え光がはいってきている。

 オレたちは遺跡ないを歩いた。

 

「確かに遺跡だな」


「すごいね。

 かなり大きい」


 ザインとリビィはその大きさに圧倒されている。

 

「誰かにはいられていないならお宝はありそうだ」


 フェルスは遺跡の柱を見ながらそういった。


「こっちだ!」


 ビオリムさんは中央にあるドーム型の建物を指差した。


「あそこに輝光石フローライトジェムがあるらしい」


 オレたちは警戒してドームの中に入る。

 少し通路を進むと光が差す場所にでた。

 そこは大きな空間でサッカースタジアムのようになっていた。

 そして中央には輝く大きな鉱石が無数に転がっている。


「これは!」


「これ全部輝光石フローライトジェムなの!?」


「すげーな! 大金持ちだぞ!」


「これで教会に仕送りができる!」


 オレたちが浮かれていると、その鉱石に近づいたビオリムさんが眉をひそめている。


「どうしたんだ? ビオリムさん」


「......これは違う。

 輝光石フローライトジェムじゃない......」


 ドオン!!


 ビオリムさんがそういった後の通路に石の壁が降りた。


「なんかまずいことになってきた」


 オレが言うと、ザインたちも武器をかまえる。


「やべーな。

 はめられたか」


「うん......

 そうみたい」


「あそこだ!」 

 

 フェルスの声でオレたちが上の方をみると観客席のような場所で五人 の男たちがいた。


「ナシュザのダンナ!!  

 これは一体どういうことですか!」


「フォフォフォ、ビオリムくん、君はいままでよく働いてくれた。

 最後は私の夢のために尊い犠牲となってくれたまえ」


 五人の真ん中にいた貴族らしき背の低いチョビヒゲのドワーフの男はそういった。


「夢だとなんのつもりだ」


 オレが聞くとナシュザと呼ばれた男はチョビヒゲをさわりながら答える。


輝光石フローライトジェムの製作だよ。

 それはこの遺跡の調査で、生命を魔力で変換してつくるものだとわかったのだ。

 最古の種族、精霊エレメンタルの技術だ。

 たから、モンスターや動物で試したのだが、そこにある純度の低いできそこないしかできなかった」

  

 ナシュザは大げさに落胆する演技をしてみせた。


「だから他で試そうとおもってね。

 そうしたら君たちの話を聞いた。

 ヒューマン、リザードマン、ホビット、エルフついでにドワーフ。

 いろいろ試すにはちょうどいい」


 そういってナシュザはにやりと笑う。


「すまん......

 君らを巻き込んでしまった」


「謝るのはあとだビオリムさん......」


「なにかでてくるよ!」 


 反対側の通路の石の扉があくと大きな黒い前脚が見える。

 それは大きなクモ、ラージスパイダーだった。


「あれは!?」


「知っているか! そうさ! ラージスパイダーだ!!

 肉食の獰猛なモンスターで手に入れるのに苦労したぞ!!

 心配しなくても全て食べられるまえにあげよう!

 体だけだがな!!」 

 

「なんてことだ! オレの命をかけてこいつを抑える!

 君らはなんとか逃げてくれ!!」


 ビオリムさんは叫んだ。 


「うーん、あの大きさ多分子供だなザイン」


「そうだな。

 一匹だし、いけそうだな」


「うん、こないだの方法でね」


「オレの氷で牽制するぞ」 


「な、なにいってる! 

 あのモンスターは一匹でもやばいんだ!」


 ビオリムさんは焦りながらいった。


「まあビオリムさんみててください。

 みんないくぞ!」


 おう!

 オレの掛け声でみんな構えた。

 ザインとフェルスが氷のつぶてで牽制している間に、オレは氷の魔力を設置、リビィは魔法の矢を作る。


「よし、いいぞ!」


 ザインたちが左右に別れる。

 追ってきたクモにリビィが氷をまとった矢を浴びせた。

 脚が凍ったクモが崩れたすきにオレたちはクモに攻撃をして倒す。


「バ、バカな!?

 あのラージスパイダーがこんな簡単に!!」


 ナシュザが逃げようとする。


「リビィ!」


「わかってるよユーヤ!」


 リビィの魔法の矢がナシュザとその取り巻きに当たりその場に氷付けになった。


「さすがだな。

 リビィ」


「えっへん!」


「な、なんなんだ、あんたら......

 あの強力なモンスターをあっさりなんて......

 まだルーキーのはずなのに、バジリスクを倒したっていってたがすげえな!」


 ビオリムさんは驚いていった。

 


 オレたちはナシュザと取り巻きを縛り町に戻り事情を伝え衛兵に引き渡した。


「本当に今日はすまなかった......

 この償いはいずれする」


 ビオリムさんはそう何度も謝った。


「かまいませんよ。

 そう都合のいい話なんてあるわけないし、オレたちも不用意に飛び付いたんですから同罪です」


「だな」


「うん」


「欲をかくとろくなことはないってことだろう」


「それじゃ俺の気がすまん......

 あっ! それじゃ! これを受け取ってくれ!」


 そういうと輝光石フローライトジェムを取り出し、断るオレたちに押し付けると、また今度そういって去っていった。


「しょうがない......

 取りあえず売って四人で分けるか」


「そうだな!」


「やった! ポムポム亭のパンをいっぱい買える!」


「これで、当面の宿代と仕送りができるな!」


「これでやっと学園生活に戻れるな......」


 

 みんなが喜んでるのをみながら、オレはホッとして帰りの途についた。

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