第13話 女王の部屋

「オレ......

 いえ私はルイエからあなたに手紙を渡すようにと言われてきたのです」


「ルイエから......」


 オレはその姿をみて驚いた。

 弱っていたからではなく、そのベッドに座る姿は痩せてはいるがルイエに瓜二つだったからである


(双子だったのか......)


 オレはゆっくり近づくと、その時部屋にキルフィナが入ってきた。


(まずい......

 いま不審な者がいるといわれたら終わる。

 とりあえず、手紙と薬だけは置いておかないと......)


「どうされました女王......」


「......いいえ、それより少しお腹がすきました。

 何かありませんか?」


「ほ、本当ですか!

 食べられるのですね!

 わかりました! すぐにお持ちします!」


 そういってすぐキルフィナは部屋からでていった。


「......あなたをまだ信じたわけではありません。

 ベッドの端に手紙を置いてください。

 おかしなことをすれば魔法を放ちます。

 わたくしはまだ死ぬわけにはいないのです......」


 額から汗を流して、女王はそういった。


「わかりました......」


(かなり辛いはずなのに......

 女王としての立場がそうさせるのか)

 

 オレはいわれた通り、背中に背負ったリュックから手紙を置いた。

 女王は突然現れた手紙に驚いたようだったが、ゆっくり手に取ると読みはじめた。

 そして一息つくと、こちらをみる。


「......確かにルイエの文字ですね......

 あなたがその異世界のお薬をお持ちなのですか......」


「はい、私の世界の薬です」


「そうですか......

 あなたが異世界の方だったのですね」


 そういうと女王は目を閉じる。


「わかりました。

 そのお薬使わせていただきます。

 このままでは死ぬのは確実でしょうから......」


 オレは薬箱の入った箱をベッドのわきに置く。


「この中に薬と使用法の手紙がはいってあります。

 効果があったら薬は手にはいりますのでお伝えください」


 オレが帰ろうとベッドから離れると。


「あのあなたのお名前を......」


「ユーヤ、そして協力してくれたのは、リザードマンのザインとホビットのリビィです」


「わかりましたユーヤ様......

 それでルイエは元気にしていますか......」


「はい、元気です。

 あなたの身を案じてはいますが」

 

「そうですか......

 ありがとう」


 オレは窓からもといた木に戻る。

 

「なんとか渡してきた」


「やったね!」


「早く帰ろうぜ。

 時間も少ない」


 オレたちは木から降りると、ざわついている王宮をすり抜け門のところでまった。

 少し待つと王宮の方からキルフィナがでてきて門が開けられると、そこにルイエがいた。

 オレたちはすぐ門を通り馬車に乗り込んだ。

 ルイエは軽く話すと手紙を渡し戻ってきた。


「大丈夫...... 薬は渡してきた」


 オレが小声で伝えるとルイエはうなずき、馬車を走らせ王宮をはなれる。


「とりあえず、なんとか成功か」


「そうだね。

 薬が効いてくれるといいけど」


「あとはこの国をでれば成功だな」


「ありがとう......

 みんな」


 ルイエが涙ぐみそういった。


「気にすんなよ友達だろ。

 なっ、ユーヤ」


「ああ、そうだなザイン」


「うん、そうだね」


 オレたちは屋敷まで馬車がつくと、隠れながら中に入った。

 


「皆様ご苦労様でした」


 そういってジルエストさんは向かえてくれた。

 オレたちは夕食を取りそれぞれ二階の寝室にむかい就寝した。

 

(これで、この国、いやこの世界とオレたちの世界のためになればいいが)


 次の日、騒がしさで目が覚めた。


「まずいぞ! ユーヤ!」


 ザインとリビィが慌ててオレの部屋に入ってきた。


「どうした!?」


「兵士たちがこの屋敷を取り囲んでやがる!」


「どういうことだ!?」


「わかんない! 

 でもいまこの屋敷に入ろうとしてるのをジルエストさんとルイエが止めてる!」


「とりあえず《見えざるもの》をかけるぞ!」


 ザインがオレとリビィに魔法をかけた。

 兵士たちが二階にも上がってくる。


「さがせ!」


 部屋を次々探っている。

 オレたちは何とか兵士たちの隙をついて一階に降りた。

 そこではラハラールがジルエストさんとルイエのまえにいた。


「なんの真似です!

 許可もなくこのようなことを!」


 ルイエは語気を強め言う。


「何をおっしゃる。

 昨日王宮で起こった事件知らないわけではないでしょう」


「事件? それは何か破裂音のような音がしたという話ですか。

 聞いてはおりますが、それと私どもとなんの関係がおありなのですか」


 ジルエストさんが冷静にラハラールにいう。


「あなた方がこの屋敷に不審な者をかくまっている。

 そういう話があるんですよ」


「知りません! 

 それに王宮で起こったことがなんだというのです。

 ただ音がしただけなのでしょう」


「女王を狙うための準備なのかもしれませんし、なにより王宮に侵入するだけで罪なのですよ。

 ですからなんとしても捕らえなければならない」


「女王の、命を狙っているのが私だといいたいのですか!」


「女王が亡くなられた場合、あなたが次の女王ですからね。

 十分動機はあるでしょう」


(殴ってやりたいが、見つかるとまずい......)


「ラハラール様! 

 誰もいませんがベッドを複数の者が使用した形跡がありました」

 

「ここにはあなたとジルエストどのと侍女しかいないはず......

 数があわないのですがね......」


「では誰がここにいたと......」


「それをいまから見つけるのですよ!」


 そういうとラハラールは懐からひとつの赤い石を取り出した。


「それは!? 封印魔石シールストーン!!」


 ルイエが驚く。


「それは国宝! 

 あなたが使っていいものではないのよ! 

 女王以外は使えぬはず!」

 

「その女王の命を狙う賊を捕らえるためならいたしかたなかったのですよ」


 ラハラールの持つ赤い石は一瞬光輝く。


「なっ!」


 オレたちの姿は透明ではなくなっていた。 


 ラハラールは薄ら笑いを浮かべていた。

 そして聞きなれない言葉を話す。

 すると兵士たちはオレたちを囲んだ。


「ムアラ、ソルイエルカ!」


 ザインがわからない言語でそういうが意味はわかった。

 オレは腕で制した。


「状況が悪化するやめた方がいい」

 


 オレたちは兵士によって捕らえらてしまった。

 

 

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