第12話 王宮潜入

 オレたちはその夜、馬車にのり王宮に向かった。


「まずは門が開いたらキルフィナに手紙を渡すから、彼女に一緒についていって女王の寝室まで行って誰もいなくなってから薬を渡して。

 そして帰りは私が戻り伝え忘れたことがあるからとキルフィナを呼ぶからその時に門を抜けて」

 

「ああ、一応図面をもらったからなんとなく王宮の構造はわかった。

 最悪魔法がきれても逃げられるようにオレが魔法を設置しておいて、リビィが薬を渡しにいくでいいな」  


 オレがそういうと、みんなうなづく。

 

「わかったけど、ボクがいくの?」


 自信なさげにリビィが呟く。

 

「ユーヤは細工があるし、俺だともし姿を現したとたん女王のお付きに殺されるかもしれんだろ。

 お前は小さいし警戒されずらい。 

 大丈夫お前ならできるさ!」


 ザインは不安そうなリビィにそういった。


「ああ、そうだ。

 タイムリミットは、昨日調べたらザインの魔法は、一時間半から二時間半内が確実か......

 ギリギリまでいってから使ってくれ」


「わかった」


 それからしばらく馬を走らせる。


「もうすぐ王宮の正門よ」


「頼むザイン」


「ああ、《見えざるもの》を使うぞ」


 オレたちは透明になり姿を隠した。

 馬車が門に差し掛かるとオレたちは馬車からおりた。

 巨大な門が開いた。

 奥から一人の鎧を着込んだ長い髪の女性があるいてくる。


「ルイエさま。

 おひさしぶりです」


「キルフィナ......

 お姉さまは......  

 女王は......」


「......ええ、大丈夫ですが......

 日に日に弱られていまして......」


 悲痛な表情でキルフィナはいい、それを聞いてルイエは黙った。


「......これ必ず女王に......」


「......わかりました。

 必ずお届けいたします」


 そういってキルフィナは手紙を受け取りルイエに一礼すると門の方に向かった。

 オレたちはキルフィナについて門を通り抜けると、少し離れながらキルフィナのあとについていく。


(よしこのまま、女王の部屋にリビィが行ければ......

 その間に各所に細工をしに行くか) 


 オレはリビィの肩を叩き、ザインと共に王宮の外側をぐるりと回り作業した。

 

「大丈夫かなリビィのやつ......」


「ユーヤ、心配ないぜ。

 あいつはあの姿で勘違いされやすいが、身体能力も優れてるし頭も切れる」


 オレたちは人がいないことを見計らって作業しながら話をしていた。


「そういやお前らって、なんで二人であんな危険なクエストまで受けてるんだ。

 ルームメイトだからか」


「まあ、それもあるが。

 俺たち亜人デミヒューマン人間ヒューマンに煙たがられるからな。

 それでつるむようになったんだ」


「なんか悪いな......」


「ははは、気にすんな。

 お前はいいやつだし、お前のお陰で関係も少しよくなってるしな」

  

「ん? どういうことだ」


「お前がバジリスクを倒したことで、お前とつるむ俺たちを他の生徒たちがみる目も変わったのさ」


「あれは四人で倒したろ」


「まあそうだが、正直お前がいなきゃ俺たちは死んでた。

 感謝してるよ」


「止めろ。

 友達同士でそんなこと照れ臭いだろうが」


「友達......

 そうか、そうだな」


 その時後ろで木を踏む音がした。

 オレは黙り振り返るだが誰もいない。


「二人ともいる......」


 小さな声でそう聞こえる。


「リビィか! どうしてここにいる!?」


「ごめん! 無理なんだ中は兵士たちででいっぱいだよ。

 見えないとはいえ歩くと音がするだろうし、とてもさけて通れやしない」


「なんでだ話が違うな」


 ザインがそう呟く。


「......あいつだ。

 多分ラハラールが警戒したんだ。

 屋敷前でオレたちをみたから......」


 オレがそういう。


「なるほど......

 どうする今日は止めるか。

 何日かすれば警戒はやむだろうし」


「いや、病気の進行が不安だ。

 もし女王がなくなれば薬を使えなくなる。

 そうなったら大勢死ぬことになる......」


「ここで成功すれば他の国の人たちも助けられるからね。

 もちろんボクたちの種族も......

 やるしかないよ」

 

「だな。

 じゃあ外からいくしかないぜ」


「ああ、昨日この王宮の構造は聞いた。

 あの部屋だ」


 王宮の西側に塔のようになった場所があり窓が見える。


「でも、どうやってあそこまで行く登るところもないぞ」


「リビィ、この木の上から塔の窓のまえのバルコニーのようなギザギザの石の壁まで魔法の矢を射れるか?」


「あの鋸壁きょへきのこと? できるよ」


「オレたちのこの着ているローブを細く紐状にして、あそこの高い木から矢で繋げばそのロープをオレが渡ってあの壁の中に入る。

 たしか魔力マナで強度をあげられたよな。

 お前たちふたりで頼む。

 オレはそんなに魔力マナをうまく使えないからな」


「確かにロープにした紐を俺とリビィのふたりで強度をあげれば行けるかもな。

 でもよ魔法の矢を壁に打ち込むと音がするぞ。

 それはどうする?」

 

「......オレの魔法を使うしかないな......」


「そうなると、王宮内は混乱するが......

 まあ仕方がないな」


「だね」


 さっそくオレたちは木に登り着ていたローブを紐状にして繋いだ。 

 そしてリビィは弓を構える。


「よし! いくよユーヤ!」


「ああ!」


 リビィが魔法の矢をつくると射った。

 その瞬間オレは魔法を使う。

 すると王宮の反対側でパンパンと音がなった。

 向こうの方で人の声がし、王宮が騒がしくなる。

 その時矢が刺さった。


「よし! 行ってくる」


「気を付けろよ!」


「頑張って!」


 ピンと張られたロープを手繰りなからオレはゆっくり塔の方に体を滑らせながら進む。

 何とか壁に届き手をかけて中にはいる。

 そこには大きな窓があり、カーテンがしまっている。


(よし、鍵はかかってない......

 空気を入れ替えるためか)


 オレは少しだけゆっくり窓を開けカーテンの隙間から中を伺う。 

 声がする。


「......なんでしょうか......」


「わかりませんが、特に心配はないでしょう。

 なぜかはわかりませんが、今日は警備がいつもより厳重です。

 女王は心配せずお休みください」


「ええ、ありがとう......

 キルフィナ......

 ですが、ルイエのあの手紙、手紙を信じてとはどういう意味でしょうか......」

 

「わかりませんが、のちにラハラール様が見ることを想定して何か伝ええられようとしたのかも」


 その時女王激しく咳き込み、キルフィナが背をなでると少し落ち着いた。

 

「お水を持ってきますね......」


 そういうとキルフィナは部屋をでていく。

 オレはそのすきに窓とカーテンをあけ中にはいる。


「......何者ですか......」



 女王はこちらを向くと、気丈にそういった。

 

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