第3話 覚醒

「にしても最高だったなイザールのやつ」 


「ほんとほんと、久しぶりに笑えたね」

 

 教室でザインとリビィが楽しそうに話すのを聞きながら考え事をしていた。

 

(あれは......オレがやったのかな......

 よし確認してみよう)


「じゃあオレちょっと用事あるから」


「んーそうか、俺たちは先寮帰ってるわ」


「ユーヤ、バイバーイ」  


 授業終わりオレはザインとリビィと別れて校舎裏の森にはいると、できるだけ人が来ない奥まで歩いた。


(ここまでくれば人もいないな......

 たしかあの時は......) 


 オレはちょうどいい岩の前に立つと授業のときのように集中して岩に手をおきイメージしてみた。


(ここで解き放つ!)


 なにも起こらない。


「やっぱたまたまイザールが魔法を暴発させただけか......

 ......いやまてよ......

 あの時はオレは、一度使ってそれからまた......」


 同じように思い出しながらやってみると。


 バン!!


 目の前にあった岩が爆発しちいさな穴が空いた。


「うお!! ビックリした!

 でも......できたことはできた!」


 オレはそれから色々試してみた。


(どうやら、一度設定して二度めに発動するのか......

 時限爆弾みたいだな......)


 ガサガサガサガサ


 と草むらから大きな音がする。


(なんだ?)


 そちらをみると、突然人より巨大なカエルが跳び目の前に現れた。


「なっ!?」


 何をするまもなく伸びてきた舌で叩かれオレは吹き飛ばされ地面に転がった。


(いった!

 こ、このカエル......モンスターか!

 何とかしないと......

 そうだ魔法......)


 オレは魔法を使おうとするが、体を舌で巻き取られ地面に叩きつけられる。


「ぐっ!!」


(や、やばい! 殺される......)


「ファイアバースト!」


 その声と共にカエルが突然炎に包まれた。  

 見るといい匂いのカエルの丸焦げができている。


「ふあ、た、助かった......

 いまのは魔法......」


 森の中から一人の女の子が近づいてくる。


「あなたバカなの! 

 そんな使えもしない魔法だけで、武器もなしにこんな森の奥にくるなんて!」


 そう耳の長い金髪の少女が言う。


(この耳......まさか《エルフ》か!)


「あ、ありがとう。

 まさかこんな学園の森でモンスターがいるなんて思わなかった」


「......まあ異世界からきたから仕方ないけど、気を付けなさいよね」


 そう言うと少女は振り返り去っていこうとしたので、オレはその後をついていく。


「あの、君ってエルフなの」


「そうよ。 悪い」


 エルフの少女はそっけなく答えた。


「いや、別に本当にいるんだなって。

 オレの世界ではおとぎ話の存在だったから」


(なんかあれか、またイザールみたいなタイプか......

 ただ、離れるとまたモンスターに襲われかねん。

 ついていかねば......)


「あなたの世界とこの世界は関係があるらしいから」


 エルフやの少女はこっちもみずにそういった。


「どういうことだ?」


「元々どっちかに住んでたってことよ......」


「そうか......

 オレの世界の伝承や神話の種族が存在しているなんておかしいと思ってたけど......

 となると魔法か関係してるのか......」


「でしょうね」


 そんな話をしながら歩いていると森からでた。


「ありがとう。

 じゃあ」


 オレが礼をいって去ろうとする。


「......あの......」


「んっ? なんだ?」


「いえ、いいわ......」


 そう言うとエルフの少女は去っていった。


(なんだ? なにか言いたそうだったけど......)


 オレは気になりながらも寮に帰った。

 寮に帰ると同室のザインとリビィに今日の森であったことを話した。


「おいおい、危ないぞ。

 勝手に森に入るなんてちゃんと言っとけよ」


「そうだよ。

 モンスターはけっこうどこにでもいるからね。

 街内なら魔法結界で安全だけど......

 てっきり学園に用があるんだと思ってたよ」


 二段ベッドの上から顔を出してリビィがそういった。


「すまん。

 とりあえず魔法の確認しとかないと思ってさ」


「あのイザールをやったのはお前か......

 でも一度指定して二度めで発動なんて聞いたことがないな。

 異世界からきたからなのか固有魔法なのかもわからんが......

 まあおもしろったからよしとするか」


 ザインが思い出し笑いをしながら椅子に座ってそういった。


「まあそれはいいよ。

 どうせ使いようもないしな

 それよりエルフの話だけど、学生なのかな」

 

 オレがいうとザインは首をふる。


「違うな。

 この学園にエルフなんていない。

 元々エルフは他の種族とあまり関係をもたず、自分たちの国からほとんど出てこない。

 貿易商ぐらいしか接触もない。

 俺ですらみたのはガキの頃遠くから一度だけだ」


「そうなのか?」


「うん。

 エルフは誇り高い種族で、他の種族と一部貿易以外関係を持とうとしないからね。

 僕なんて一度も見たことすらないよ」


(やっぱりそんな感じか)


「だけどオレのことを異世界からきた人間だと知っていたぞ」


 オレが二人にそう伝えると。


「そんなはずは......

 この世界でも異世界と繋がったことは知られているが、異世界人だとわかるはずがないんだけどな」


「うん、どうやって知ったんだろ」


 二人は首をかしげていった。


「......まあいいか、わからないことを考えても仕方ない。 

 それよりユーヤ頼みがあるんだ」 


「頼み? なんだよザイン」


「明日休みだろ。

 俺とリビィに付き合ってくれないか」


「まあ、寝るだけだし......

 かまわないがどこに行くんだ?」


「街!!」



 そう二人は声を揃えていった。

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