第2話 魔法の授業

「では、今日の魔法の授業はまず入学してからどれだけ魔力マナ値が延びたか測定から始める」


 担任の人間ヒューマンのブライト先生がそう話し、台の上に大きな水晶を置いた。

 

 このザハーストラ英雄学園は、実践的な剣術、魔法やアイテム製作、戦闘方法を教えている。

 

(ここで成績優秀なものは国などに厚待遇で召し抱えられるらしいな。

 まあ、モンスターもいる世界だからそういうものなのか......

 戦闘技能も魔法もいらんけど、一応やるしかないな......)


「では順番にこのクリスタルに手をかざし魔力マナを注いでみろ」   

 

 生徒たちは次々にクリスタルに手をかざす。


「なんか色が変わってるけど」  


 オレが聞くと。 

 

「ああ、魔力の強さによって下から、白、青、緑、紫、黄、橙、赤に変わるんだ」


 ザインが答えた。


「ボク前は青だったから緑になってくれてればいいんだけど......」


 リビィが自信なさげに話す。


 ザインとリビィが呼ばれ二人とも青だった。

 リビィはがっかりしている。

 

「次はイザールか......ん? あいつだけ紫だ」


「ああ、あいつはこの国の宮廷魔法士の家系だからな。

 魔力は強いんだ」


「この世界じゃ魔力マナの強さが露骨に序列を作るからね」


 オレの疑問に二人はそう答えた。


(なるほど......だからあいつはあんなに尊大なんだな)


「次、ユーヤ」


 オレは呼ばれクリスタルに手を置いた。


「集中して、クリスタルに力を込めるんだ」


 そう先生からいわれ目をつぶってやってみた。

 すると少しして色が変わり始める。

 色が止まると皆がざわついた。


「なんだこれは!? 黒!!」


 先生も驚いている。


「あの聞いてる色じゃないんですけど......

 オレの魔力ってどのくらいなんですか?」


「い、いや、わからない......

 黒なんてはじめてだ......

 異世界からきたからなのか、それともクリスタルが壊れたのか......

 とりあえず、戻って......」


 先生は困惑しながらオレを戻らせた。


「なんだよ黒って聞いたことねーぞ」


「うん、はじめてだね」


 二人も驚いている。


「オレが聞きたいわ」 


「......みんな静かに授業を進めるぞ。

 これからあそこにある的に魔法を当ててもらう」


 先生がそう言って台の前にたち太い木にかけてある的を指差した。

 順番に生徒たちが的に氷や炎、風などの魔法を当てていく。


「おお! やっぱ魔法はすごいな!  

 何もないところからでてくる!」


「そうか、俺たちには普通だけどな」


「まあね、でもこの学園の生徒は貴族とか富裕層が多いから魔法も強力だよ」


「そうなのか」


「ああ、ほとんどの人間ヒューマンはな。

 俺たちのような亜人種デミヒューマンは特別に入学した特待生なのさ」 


「ほー」

 

「あっ! ボクの番だ!」


 リビィが呼ばれ弓矢のようなものを手のひらから出すと使い的を射ぬく。


「いまのなんだ!? リビィの手から弓が出てきたぞ!」


「ありゃ、リビィの固有魔法だ」


「固有魔法って?」


「みんなが魔力マナで使える魔法とちがって、それぞれ特殊な魔法を生まれながらに一人ひとつ持ってんだよ。

 あれは弓と矢を具現化する《射るもの》というらしいな」


「じゃあオレにもあるのか?」


「多分な...... 

 ただ黒い魔力マナなんて聞いたこともみたこともない。

 お前が異界人だからか、変わってるからかわからんが」


 ザインは首をかしげ言う。


「次、ユーヤ」


 先生に呼ばれてオレは台の前に立つが、どうすればいいのかわからずいると先生が話しかける。


「落ち着けユーヤ、まず集中するために手を台の上に置け、そして体に力をためる。

 それから起こしたい事象をイメージそして解き放つんだ」


(そう言われてもな......

 起こしたいこと......

 とりあえず爆発かな......

 それをイメージして集中して解き放つ!)


 何か感じた気がしたが、何も起きなかった。

 何かクスクスと生徒たちが笑い声がもれ聞こえる。


(くっ! はずい!)


「まあ、最初だからな。

 クリスタルも一応反応してるし、すぐ使えるようになるさ。

 きにするな」


 そう先生にフォローされオレは戻る。


「くくく、やはり魔法もろくに使えないのか蛮族」


 そう、すれ違いざまイザールが呟かれた。


(このやろう!)


 だが何とかこらえて戻る。


「まあ、気にすんな。

 いきなりなんでも最初からうまくはいかんさ」


「そうだよ。 

 ボクなんかこの世界にいるのにうまく使えないからね」


 二人に言葉を掛けられていくぶんか救われた気がした。


「よく見ておけ、これが魔法だ!」


 イザールはみんなに向かって大声で言うと、右手から巨大な炎の柱を作り出す。

 おおーとみんなが声をもらした。


(だが、なんか悔しいな......

 こう気持ちが足りないのか、集中してイザールをぶっ飛ばすイメージで......)


 オレがそうイメージをする。


 バーン!!!


 と、イザールの前の台が爆発し砂煙が巻き起こった。

 

(なんだ!?)


 砂煙が収まるとイザールは土に上半身が埋まって足だけ土の上に出ていた。


「大丈夫か! イザール!」 


 取り巻きと先生がイザールを土の中から引っ張り出している。


(これ......まさかオレがやったのか......)



 隣で爆笑してるザインとリビィを見ながらオレは思っていた。


 

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