第95話 忠政と梔子様の暗躍
牢獄にとらわれた後、イエロー・パンサーが助けに来たと言ったときも、忠政ははなから彼を信用していなかった。
牢獄でイエロー・パンサーが小次郎と忠政に端末を見せたとき、忠政は端末を奪い取ってこっそりなにか情報がないかを探った。
(イエロー・パンサーがわしを舐めくさっていたおかげで助かったわい)
彼は考えた。
イエロー・パンサーはキャラクターである忠政をあまり警戒していないようだった。そうでなければ、イエロー・パンサーの端末に触れることすらできなかっただろう。
忠政はYouCube画面の左上に、見慣れたアイコンを見つけた。それは
これは! と忠政はアイコンを確認しようとした。
しかし、それを確かめる前にイエロー・パンサーは忠政の手から端末を取り返した。
小次郎がイエロー・パンサーを信用するつもりだと言ったとき、忠政は最初は反対しようと考えた。しかし、小次郎の意志が固いのを見て、作戦を変えた。
小次郎を
忠政の手には、小次郎が置いて行ったアホロートルの頭巾があった。眷カノと「でかきしょ」のコラボが終了後、アホロートルの頭巾は急激に値上がりし、金融商品としても魅力的なアイテムになっていた。
忠政はアホロートルの頭巾を使って看守を3人買収することにした。
「おぬしたち、ちょっと」
鉄扉越しに忠政は看守に声をかけた。
「なんだぁ? 囚人の分際で」
「おっと、わしと話す気はないということか。せっかくこの頭巾をおぬしらにやろうとしたのに、残念じゃのう」
忠政がアホロートルの頭巾を見せびらかすと、看守たちの目の色が変わった。
「なっ、それは」
「俺によこせ」
「いや、俺にだ、このクソ野郎め」
ののしりあいを始めた看守たちに、忠政は交換条件を提示する。
「喧嘩するでない、ちゃんとおぬしら3人にこれをやろう。その代わりといっては何じゃが、ラックローの街の『オテンバ・プレミアム・アウトレット』の通販でお買い物がしたいのじゃ。メッセージが送れるものを貸してはくれぬかの」
「なんだそんなことか。お安い御用だぜ」
忠政がコンタクトを取る相手として
さらには、
忠政は看守の端末を使ってこっそり
自分はヴォイドの眷属彼女の市川忠政で、囚われの身であること
この場所はマイマイザカの街あるいはライアーの街の
短い文字数で送ることができたのは、以上の情報で精いっぱいだった。
しかし、
「それで、
屋形船の船内で小次郎が尋ねた。
「それでは、私からもお話ししましょう」
梔子様が話し始める。
「実は、私はあの事件の後、個人的にイエロー・パンサーを調査していたのですよ」
暴露事件で最も利益を得た人物は誰かと考えたとき、運営でもイエロー・パンサーでもなく、「
「また別件で、私はアウトレットモールの物価をもとに戻すため、ばらまかれたかんざしを集める活動も行っていました。これはヴォイドさんも同じ運動をしていたようですが。そのときに気づいたのです。かんざしには、もとの持ち主の個人情報が残っている場合があると」
「忠政さん、私です」
「おお、待っておったぞ」
牢の中であぐらをかいていた忠政は、立ち上がって鉄格子ごしに
「まさかヴォイドさんの眷属彼女から連絡が来るなんて思いもしませんでしたよ。助けに来ました、さあ、こちらへ」
「それが、そう簡単な話ではないのじゃ」
忠政は、双子の弟である小次郎がイエロー・パンサーに連れていかれたこと、ヴォイドとはまだ連絡が取れないことを説明した。
「イエロー・パンサーですか……まずいですね」
「そうじゃ、まだ今はわしを助ける時ではない。イエロー・パンサーにバレて、小次郎をどこかに隠されては困るからの」
「とりあえず、ケンさんと連絡を取ってみます。ヴォイドさんにもダメもとでメッセージを送ってみますよ。それまでここで待っていていただけますか?」
「ああ、わしを誰じゃと思っておる」
忠政は元気よく答えた。
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